褐色細胞腫の麻酔 改訂第2版
I.褐色細胞腫摘除術の歴史(松木明知)
II.褐色細胞腫の基礎(工藤 剛,工藤美穂子)
1.カテコラミンの生化学,生理学,薬理学
2.カテコラミン受容体
1)α遮断薬
(1)イミダゾリン誘導体
(2)キナゾリン誘導体
(3)インドール誘導体,その他
2)β遮断薬
(1)プロプラノロール
(2)ナドロール
(3)チモロール
(4)ピンドール
(5)ラベタロール
(6)メトプロロール
(7)アテノロール
(8)エスモロール
(9)アセブトロール
3.麻酔薬のカテコラミンに及ぼす影響
1)静脈麻酔薬とカテコラミン
(1)バルビタール
(2)ケタミン
(3)プロポフォール
(4)ミダゾラム
2)NLA麻酔とカテコラミン
3)オピオイドとカテコラミン
(1)モルヒネ
(2)フェンタニル
(3)スフェンタニル・アルフェンタニル
(4)ペンタゾシン
4)吸入麻酔薬とカテコラミン
(1)ハロタン
(2)エンフルラン
(3)イソフルラン
(4)セボフルラン
5)筋弛緩薬とカテコラミン
(1)サクシニルコリン
(2)パンクロニウム
(3)ベクロニウム
6)麻酔薬によるカテコラミンの感受性増強作用
III.褐色細胞腫の診断と治療(坪 敏仁,廣田和美)
1.臨床症状
2.一般検査
3.内分泌学的検査
1)尿中カテコラミンおよびその代謝産物
2)血漿カテコラミン濃度
4.画像による診断
1)正常副腎解剖
2)CT
3)MRI
4)超音波検査
5)シンチグラフィー
6)動脈造影
7)下大静脈カテーテル法
5.薬物負荷試験
1)誘発試験
(1)グルカゴン試験
(2)メトクロプラマイド試験
2)抑制試験
(1)レジチン試験
(2)クロニジン試験
6.鑑別診断
1)悪性の鑑別
2)偶発性副腎腫瘍
3)神経芽細胞腫
4)神経節細胞腫
5)多内分泌腺腫瘍症II型
6)von Hippel-Lindau病
7.褐色細胞腫と遺伝子異常
1)MEN II型
2)von Hippel-Lindau病
8.褐色細胞の治療
1)手術療法
2)非観血的治療法
(1)131I-MIBG内照射放射線療法
(2)CVD化学療法
(3)αMT
(4)外放射線療法
(5)血管塞栓術
IV.褐色細胞腫の麻酔前の管理(村川徳昭)
1.循環系の管理
1)α受容体遮断薬の投与
(1)α受容体遮断薬の意義
(2)α受容体遮断薬の投与法
(3)α受容体遮断薬の術中管理への影響
2)β受容体遮断薬の投与
3)その他の薬物の投与
(1)カルシウム拮抗薬
(2)カテコラミン合成阻害薬
(3)アンギオテンシン変換酵素阻害薬
(4)高血圧発作時に使用される薬物
4)術前輸血・輸液
2.術前合併症
1)糖代謝異常
2)腎機能異常
3)脂質代謝異常
4)カルシウム代謝
5)内分泌異常
6)カテコラミン心筋症
3.併用薬物
1)前投薬
(1)アトロピン
(2)スコポラミン
(3)ジアゼパム
(4)ハイドロキシジン
(5)バルビタール
(6)モルヒネ
V.褐色細胞腫の麻酔管理(若山茂春)
1.麻酔法
1)全身麻酔
(1)導入
(2)気管内挿管
(3)維持
2)硬膜外麻酔,脊椎麻酔
(1)硬膜外麻酔
(2)脊椎麻酔
3)その他の麻酔管理法
(1)低体温麻酔
(2)血液吸着法
(3)自己血輸血
(4)腹腔鏡下褐色細胞腫摘出術
2.麻酔薬
1)吸入麻酔薬
(1)エンフルラン
(2)イソフルラン
(3)セボフルラン
(4)デスフルラン
2)NLA麻酔
3)麻薬
(1)フェンタニル
(2)アルフェンタニル,スフェンタニル
(3)モルヒネ
4)静脈麻酔薬
(1)チオペンタール,チアミラール
(2)エトミデート
(3)ミダゾラム
(4)プロポフォール
3.筋弛緩薬
1)サクシニルコリン
2)ベクロニウム
3)パンクロニウム
4)アルクロニウム
5)アトラクリウム
4.併用薬
1)α遮断薬
(1)フェントラミン
(2)プラゾシン
(3)ラベタロール
(4)ウラピジル
2)降圧薬,血管拡張薬
(1)ニトロプルシッド
(2)ニトログリセリン
(3)イソソルビド
(4)プロスタグランジンE1
(5)Ca括抗薬
(6)ATP
(7)硫酸マグネシウム
(8)トリメタフアン
3)抗不整脈薬
(1)リドカイン
(2)β遮断薬
(3)アミオダロン
5.モニター
1)心電図,直接動脈圧
2)尿量
3)直腸温,食道温,深部体温計
4)パルスオキシメータ
5)呼気ガスモニター
6)検査
7)血糖
8)中心静脈圧
9)Swan-Ganzカテーテル検査
10)経食道心エコー
6.合併症
1)高血圧
2)不整脈
3)低血圧
4)血糖異常
VI.褐色細胞腫の麻酔後の管理(石原弘規)
1.呼吸管理と肺合併症
2.循環管理
1)循環系モニター
2)低血圧
3)高血圧
4)心筋症
3.疼痛管理
4.代謝管理
1)低血糖
2)糖尿病
3)ステロイドカバー
4)その他
5.その他の術後合併症
1)手術死亡率
2)多臓器不全
3)消化管出血
4)末梢組織の壊死
5)中枢神経障害
6)心筋梗塞,心筋虚血性変化
7)術後出血
8)腸管麻痺
9)創感染,創傷治癒遅延
10)その他
6.実際の管理
1)検査
2)モニター
3)呼吸管理
4)循環管理
5)輸液管理
6)疼痛管理
7)その他
VII.特殊状態の周術期管理(廣田和美)
1.小児の褐色細胞腫
2.妊娠の合併
3.気管支喘息の合併
4.慢性腎不全との合併
5.心臓褐色細胞腫
6.潜在性褐色細胞腫
7.悪性褐色細胞腫,切除不能例
8.無症候性褐色細胞腫
9.多内分泌腺腫瘍症II型
10.von Hippel-Lindau病
VIII.褐色細胞腫の麻酔の自験例(坂井哲博,廣田和美)
1.ハロタン麻酔
2.エンフルラン麻酔
3.イソフルラン麻酔
4.セボフルラン麻酔
5.大量フェンタニル麻酔
6.全脊椎麻酔
7.全静脈麻酔
IX.文献(廣田和美)
平成6年(1994)12月に初版を上梓してから4年経過した。編者としてその序の冒頭に「数多い麻酔科学の単行本の中にあえて本書を加えるのは文字通り屋上屋を架する感がある。しかし日本語で記述されているものの,単一疾患の麻酔管理法に関する単行本としては世界最初であろう」と記したが,以来4年経過した現在においてもこの状況はほとんど変わっていない。それだけ本書は特異的であるとも言えよう。
日常頻繁に遭遇する疾患患者の管理は,言うまでもなく多数例という観点において重要視されるのは当然であるが,多数という量だけを重視すべきではない。たまにしか遭遇しない難しい症例をも安全にかつ円滑に管理することが専門医としての麻酔科医に求められるからである。そのためにも本症に対する俯瞰的見解を持つ必要があり,それが患者に対する質の高いサービスであり,思いやりでもあろう。若い人の中には文献を調べるといっても,せいぜい過去数カ月の雑誌を検索し,せいぜい1頁足らずの短報一篇を見い出して満足している人が多く,インターネットを利用したとしても基本的コンセプトにおいて大同小異であろう。
この4年という短期間にも本症の管理の些細な点において多くの進歩が見られた。周術期に用いられる薬物についても進歩が見られ,その中で最も注目すべきは静脈麻酔薬プロポフォールの登場であり,プロポフォールを用いた全静脈麻酔の応用である。また内視鏡が褐色細胞腫の摘出時にも外科的に応用されており,それに対応する麻酔法も求められている。
今回の改訂に際しては可能な限り,最新の情報を内容の中に盛り込むよう努力し,このため新進気鋭の廣田和美君を編者に加えた。今回の改訂に際しては同君の努力に負うところが多い。
この小著が本症患者の安全な麻酔管理に少しでも貢献することができれば,そして結果的に日本の麻酔科学の多様多層化に些かでも貢献することができれば,望外の喜びである。
1999年1月15日
編者代表
松木明知
編者
弘前大学教授 松木明知
弘前大学助教授 石原弘規
弘前大学助手 廣田和美