はじめての末梢神経ブロック
第1章 なぜ末梢神経ブロック
1 周術期鎮痛としての末梢神経ブロック
A.オピオイドとの比較
B.硬膜外麻酔との比較
C.局所浸潤麻酔
2 超音波装置の進歩
A.超音波装置の進歩
B.教育体制の充実
3 区域麻酔の重要性
A.確実な鎮痛が得られる
B.患者の予後を改善
C.全身麻酔不可能な患者の手術が可能
4 知識と技術の広がり
A.解剖の知識
B.神経ブロック以外の超音波の使用
C.海外へ
第2章 知っておきたい基礎知識
1 超音波装置
A.装置の選択
B.装置の使用法
C.プローブ
2 針
A.神経ブロック針
B.エコーゲニック針
C.神経刺激装置
3 局所麻酔薬
A.使い分け
B.レボブピバカイン(ポプスカイン(R))
C.ロピバカイン(アナペイン(R))
D.メピバカイン(カルボカイン(R))
E.局所麻酔薬の混合
4 局所麻酔薬への添加薬
5 局所麻酔薬中毒
A.超急性
B.即時型
C.遅延型
D.局所麻酔薬中毒対応チェックリスト
6 神経障害
7 その他の合併症
第3章 実践の基本
1 プローブ操作の基本
A.Pressure
B.Alignment
C.Rotation
D.Tilt
2 穿刺の実際
A.体 位
B.プローブの固定
C.針の穿刺
D.針がみえない
E.針先が神経に近づいたら
F.アフタースキャン
3 日常のトレーニング
A.描 出
B.穿 刺
第4章 大腿神経ブロック
1 神経対象のブロックとコンパートメントブロック
2 適 応
3 大腿骨頸部付近の骨折手術
4 膝関節手術
5 ブロックの計画とインフォームドコンセント
6 大腿神経ブロックの実際
A.体位と超音波装置の配置
B.ブロックに必要な解剖と体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.局所麻酔薬投与後
G.外側大腿皮神経ブロック
7 腸骨筋膜下ブロック
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.腸骨筋膜下ブロックのバリエーション
8 ブロック後の注意点
9 記 録
第5章 腹直筋鞘ブロック
1 解 剖
2 適 応
3 ブロックの計画
4 腹直筋鞘ブロックの実際
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマークとプレスキャン
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.局所麻酔薬投与後
5 注意点
第6章 腕神経叢ブロック
1 腕神経叢の解剖とそれぞれのアプローチの適応
2 腋窩アプローチ
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.注意点
3 鎖骨上アプローチ
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.注意点
4 斜角筋間アプローチ
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.注意点
5 末梢でのブロック
第7章 下肢のブロック(坐骨・閉鎖)
1 下肢の神経支配
A.腰神経叢
B.仙骨神経叢
2 坐骨神経ブロック
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.注意点
3 閉鎖神経ブロック
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
F.注意点
第8章 腹横筋膜面ブロック(TAP ブロック)
1 適 応
2 ブロックの計画
3 TAPブロックの実際
A.体位と超音波装置の配置
B.体表面のランドマーク
C.プレスキャン:高周波リニアプローブ使用
D.ブロックの準備
E.ブロックの実際
4 注意点
第9章 まだ必要? 胸部硬膜外麻酔
1 適 応
2 硬膜外麻酔の実際
3 超音波によるプレスキャン法
4 硬膜外麻酔のポイント
5 硬膜外鎮痛の使い方
第10章 ブロックを使用した麻酔の実際:まとめ
1 ブロック実践の前に考えること
2 ブロックの限界を知る
A.アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
B.オピオイド
3 術式別麻酔管理の実際
A.大腿骨頸部骨折
B.腹腔鏡下胆嚢摘出術
C.人工膝関節置換術(TKA)
4 その他の神経ブロック
A.上肢ブロック
B.下肢ブロック
C.体幹ブロック
D.持続末梢神経ブロック
国内で超音波ガイド下神経ブロックが本格的に普及し始めてから10 年以上が経過した。当初は一部の麻酔科医のものだったブロックは今ではすべての麻酔科医にとって必須の技術となった。この間多くの日本語の教科書が出版されたがその多くは神経ブロックに興味のある麻酔科医向けのものであり、必ずしも初心者向けとはいえなかった。
そこで企画したのが本書「はじめての末梢神経ブロック」である。まず、掲載する神経ブロックの数を大幅に絞り、初心者が行うべき順に並べた。技術的に容易で施行回数の多いブロックからマスターしていくのが一番である。その意味で本書は大腿神経ブロックをまずマスターすべきブロックとした。一方で、近年報告されたがまだ評価の定まっていないブロックについては省略している。確実なブロック技術を身につければ、それ以外のブロックにも応用が可能となるからである。最後に神経ブロック時代でもまだまだ必要な胸部硬膜外麻酔についても収載した。
各ブロックについては筆者の約10 年間の臨床経験、指導経験から得られた知見やコツを可能なかぎり盛り込んだ。これから神経ブロックを始めたい。既存の教科書ではよく分からなかったという先生に読んでいただき、より本格的な教科書への橋渡しとして使っていただきたい。
神経ブロックは強力な周術期鎮痛法であるが、麻酔科医にとってはあくまで引き出しの一つでしかない。併用する鎮静や全身麻酔、さらに術後管理によって患者の満足度は大きく変わってくる。全身麻酔の他の要素については姉妹書の「はじめての麻酔科学」を参照していただき、患者にとってより安全で快適な麻酔管理を目指してもらいたい。
最後に、本書の発行にあたり多大なご協力を賜った克誠堂出版の関貴子氏に心から感謝します。
平成最後の月に(平成31 年4 月吉日)
宇部興産中央病院麻酔科
森本 康裕