在宅酸素療法 改訂第2版
改訂第2版序 |
初版序 |
I.在宅酸素療法の対象疾患の病態と酸素療法の意義…1
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1.在宅酸素療法の対象となる疾患/谷本普一…2 |
はじめに/2 1)慢性呼吸不全とは/2 2)呼吸不全の分類とその疾患/2 (1)低酸素血症/3 (2)高二酸化炭素血症を伴う低酸素血症/4 3)わが国における在宅酸素療法実施疾患/5 |
2.長期酸素療法の生理学的意義/宮本顕二…8 |
はじめに/8 1)酸素療法の生理学的意義-特に酸素吸入療法開始時期について/8 2)長期酸素療法の効果/9 (1)脳/9 (2)肺(呼吸機能)/10 (3)心臓/12 (4)腎臓/12 (5)肝臓/14 (6)胃/15 (7)造血器/15 (8)筋肉/16 (9)その他/16 まとめ/16 |
3.在宅酸素療法における睡眠呼吸障害/成井浩司…18 |
はじめに/18 1)睡眠時呼吸障害の検出法/19 (1)臨床症状および検査所見からの疑診/19 (2)基礎疾患の診断/19 (3)スクリーニング検査/19 (4)睡眠時呼吸障害の簡易検査装置/19 (5)ポリソムノグラフィ/20 2)睡眠時呼吸障害と睡眠時SaO2低下の概念/26 おわりに/26 |
4.在宅酸素療法における肺循環動態/角坂育英…28 |
はじめに/28 1)呼吸不全と肺循環障害/29 2)呼吸不全と組織低酸素症/31 3)慢性呼吸器疾患と肺高血圧症/32 4)換気障害に基づく肺循環障障害と酸素療法/33 5)肺血管型肺高血圧症と酸素療法/34 まとめ/35 |
II.在宅酸素療法の準備と実施…39
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1.適応基準と禁忌/蝶名林直彦…40 |
はじめに/40 1)在宅酸素療法の適応基準/40 (1)適応患者の選択(適応疾患も含めて)/40 (2)血液ガスからみた適用基準/41 (3)睡眠時・運動時の低酸素血症と適応基準/42 (4)在宅酸素療法と非侵襲的陽圧換気療法との併用に関する適応/44 (5)境界域の低酸素血症/44 2)在宅酸素療法が禁忌となる場合/45 (1)患者自身に起因する場合/45 (2)社会的禁忌/45 おわりに/46 |
2.酸素供給装置/川畑雅照,吉村邦彦…47 |
1)酸素濃縮器/48 2)高圧酸素ボンベ/50 3)液体酸素/52 4)酸素吸入器具/53 (1)鼻カニューレ/54 (2)リザーバー付き鼻カニューレ/55 (3)眼鏡フレーム型鼻カニューレ/56 (4)フェイスマスク/56 (5)加湿器/57 おわりに/58 |
3.酸素投与方法/町田和子…59 |
はじめに/59 1)酸素投与の方法/59 2)酸素吸入器具/61 (1)酸素ボンベ/61 (2)液化酸素/62 (3)酸素濃縮器/63 3)実際に酸素吸入を行うにあたってのいくつかの注意/63 (1)酸素吸入を行う場所の環境と換気/63 (2)日常点検/63 (3)ガス漏れ,装置の異常などの場合の緊急措置/64 (4)外出または旅行のため,ボンベや液化酸素を携帯して鉄道,自動車に乗る場合/64 4)携帯酸素/64 5)酸素節約の工夫/65 |
4.在宅酸緊療法実施の手順と実際/蝶名林直彦…68 |
はじめに/68 1)医師の行うべき手順/68 (1)酸素吸入方法についての検討/68 2)看護師の行う業務/75 (1)患者教育/75 (2)訪問看護/75 3)HOT実施の手順と実際/75 4)液体酸素使用の際の注意点と届け出業務/80 |
5.非侵襲的陽圧換気による在宅人工呼吸療法について/成井浩司…81 |
はじめに/81 1)NPPV療法におけるインターフェイスと治療器/81 (1)Bi PAP装置の構造と特性/81 (2)酸素の併用/83 (3)加湿について/83 (4)インターフェイス(鼻マスクとフルフェイスマスク)/83 2)導入方法と患者教育/85 (1)導入時期の判断/85 (2)導入の手順と患者への説明/85 (3)導入時の条件設定/86 3)適応疾患/87 (1)COPDの病態とNPPV治療のメカニズム/87 (2)夜間NPPV療法の有効性に関する検討/88 (3)症状安定期COPDに対するNPPV導入基準/88 おわりに/89 |
6.外来における管理と急性増悪への対応/宮城征四郎,松本 強…92 |
はじめに/92 1)在宅酸素療法(HOT)適応患者の外来管理/92 (1)外来通院の方法と注意点/92 (2)一般外来か,特殊外来か/93 (3)外来受診時の観察および検査項目/93 2)急性増悪させないための外来ケア/94 (1)患者の評価/94 (2)包括的呼吸リハビリテーション/94 (3)急性増悪の一般的予防法/96 3)急性増悪時の対応/97 (1)急性増悪の症状と徴候およびABGの悪化/97 (2)急性増悪時の受診方法/97 (3)入院の適応と収容棟/97 (4)急性増悪時の全身管理および薬物療法/99 (5)急性増悪時の呼吸管理/99 おわりに/102 |
7.リハビリテーションと運動療法/千住秀明…104 |
1)在宅酸素療法とリハビリテーション/104 2)呼吸リハビリテーション/104 3)呼吸リハビリテーションのための評価/105 (1)時間内歩行テスト/106 (2)下肢筋力の評価/108 (3)上肢筋力の評価/108 4)運動療法/108 (1)運動療法の役割/108 (2)運動療法の原則/109 (3)運動療法の種類/109 (4)運動療法における留意事項/112 (5)ADLトレーニング/112 おわりに/113 |
8.治療効果と評価/坪井永保…114 |
はじめに/114 1)在宅酸素療法の医学的効果/114 (1)呼吸困難の軽減/114 (2)低酸素血症,肺高血圧の改善,右心不全の予防/117 (3)入院期間,回数の減少/123 (4)生存期間の延長/123 (5)QOLの改善/124 まとめ/125 |
9.予後と社会復帰/北村 諭…127 |
はじめに/127 1)在宅酸素療法施行呼吸不全例の予後/127 (1)長期酸素療法の予後/127 (2)肺動脈圧と予後/127 (3)基礎疾患と予後/128 2)在宅酸素療法施行呼吸不全症例の社会復帰/129 (1)社会復帰とは/129 (2)HOTのQOL向上効果/130 (3)職場復帰の問題点と現状/130 (4)社会復帰のこれから/131 |
10.副作用/岸川禮子…134 |
はじめに/134 1)酸素療法の副作用/134 (1)酸素中毒と吸収性無気肺/134 (2)高二酸化炭素血症/135 2)在宅医療としての酸素療法の副作用/137 (1)HOTの変遷/137 (2)高圧酸素ボンベ・液体酸素システム/138 (3)酸素濃縮器/138 (4)酸素供給源と火気/139 (5)その他/140 おわりに/140 |
11.在宅酸素療法における呼吸ケアに携わる関連職種の役割/石川 朗…142 |
1)呼吸ケアに携わる関連職種/142 2)在宅酸素療法における呼吸ケア/142 (1)患者指導/142 (2)呼吸理学療法/144 3)在宅酸素療法における住環境整備/145 (1)住環境整備の目的/145 (2)酸素供給機器とADL/145 (3)住環境整備/146 (4)HOT施行者の年齢/146 4)3学会合同呼吸療法認定士とは/146 |
12.訪問看護・介護/長濱あかし…147 |
はじめに/147 1)訪問看護の制度について/147 2)訪問看護の提供回数/148 3)訪問看護の目標/148 4)訪問時の看護内容/148 (1)病状の観察/148 (2)服薬状況の確認/149 (3)酸素機器の管理/149 (4)日常生活について/150 5)環境の整備/153 6)家族(介護者)への指導/153 7)急性増悪の対応と医師との連携/153 8)介護者の状況(健康チェック・介護内容の確認)/155 (1)介護者の健康状況や介護状況の観察/155 9)身体障害者手帳の確認/155 おわりに/155 |
13.栄養/米田尚弘…156 |
はじめに/156 1)COPD・慢性呼吸不全の栄養障害頻度/156 2)包括的栄養評価と体成分/156 3)栄養障害と呼吸機能/157 4)筋肉量と運動能/157 5)予後と栄養/158 6)急性増悪と栄養/158 7)栄養障害の原因と病態生理/158 8)エネルギー代謝障害/158 9)COPDに対する栄養治療/159 おわりに/161 |
III.各疾患における在宅酸素療法の実際…163
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1.肺結核後遺症/坪井永保…164 |
はじめに/164 1)肺結核後遺症の特徴/164 2)酸素流量の設定/166 (1)安静時の酸素吸入流量/166 (2)運動時の酸素吸入流量/167 3)睡眠時低酸素・高二酸化炭素血症/167 4)非侵襲的陽圧換気(NPPV)/168 5)症例呈示/169 まとめ/171 |
2.COPD/村田 朗,工藤翔二…172 |
はじめに/172 1)COPDにおける在宅酸素療法の現状173 2)酸素療法の目的と意義/174 3)低酸素血症の病態生理と酸素療法の効果/174 (1)肺胞低換気/175 (2)換気血流比不均等分布/176 4)適応基準/176 5)在宅酸素療法導入の実際/178 まとめ/180 |
3.びまん性汎細気管支炎(DPB)/蝶名林直彦…182 |
はじめに/182 1)在宅酸素療法の対象例となるびまん性汎細気管支炎例/182 2)症例呈示/182 3)びまん性汎細気管支炎に対する在宅酸素療法施行時の問題点/186 (1)HOT導入の適応について/186 (2)他の治療との併用/186 (3)換気不全とNPPVについて/187 |
4.肺線維症/本間 栄,坪井永保…189 |
はじめに/189 1)肺線維症患者の低酸素血症の特徴/189 2)酸素流量の設定/190 (1)安静時の酸素吸入流量/191 (2)運動時の酸素吸入流量/191 (3)症例表示/191 (4)睡眠中の酸素吸入流量/193 3)酸素供給源・吸入器具/194 (1)吸着型酸素濃縮器/194 (2)液体酸素/194 4)外来管理の注意点/197 まとめ/197 |
5.神経筋疾患/石原傳幸…198 |
1)神経筋疾患とその呼吸不全の病態/198 (1)神経筋疾患と呼吸不全/198 (2)神経筋疾患からみた呼吸不全診断/198 (3)呼吸筋の疲労/199 (4)呼吸筋のセントラルコアの発現時期/200 (5)筋ジストロフィにおけるhemodynamic study/201 2)筋ジストロフィ/202 (1)人工呼吸療法の必要性と適応/202 (2)人工呼吸療法の実際の流れ/203 (3)ケア上の留意点/204 (4)ミニトラックによる陽圧式人工呼吸/204 3)筋萎縮性側索硬化症(ALS)/204 (1)ALSの呼吸機能評価法/205 (2)ALS患者の呼吸補助を導入するときの対応と手順/205 |
6.心・循環器疾患/緒方 洋,長坂行雄…207 |
はじめに/207 1)慢性心不全と睡眠時呼吸異常/207 2)チェーン・ストークス呼吸の発生機序と影響/208 3)夜間酸素療法の効果/209 4)CPAP療法と夜間酸素療法/211 おわりに/211 |
7.肺悪性腫瘍/鈴木 勉,福地義之助…214 |
はじめに/214 1)肺悪性腫瘍に対する在宅酸素療法の適応と実際/214 (1)適応/214 (2)HOT実施患者における肺悪性腫瘍の割合/214 (3)肺癌HOT導入症例の概要/215 (4)HOT施行末期肺癌患者の在宅日数と死亡場所/216 (5)HOT施行末期肺癌患者の死亡状況/216 (6)在宅医療が継続不能となった理由/216 2)症例提示/217 3)まとめ/219 おわりに/220 |
IV.在宅酸素療法の現状と展望…221
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1.わが国の現状/宮本顕二…222 |
はじめに/222 1)歴史/222 2)現状/223 (1)実施施設/223 (2)患者数/223 (3)患者の男女比,平均年齢/223 (4)酸素供給装置/223 (5)基礎疾患/224 (6)HOT開始時のPaO2/224 (7)予後/225 (8)就業状況/225 3)公的補助制度/226 (1)電気代の補助/226 (2)身体障害者手帳の交付/226 4)最近の機器の進歩/226 (1)携帯用酸素濃縮器の試作/226 (2)酸素濃縮器の小型化/227 (3)携帯用酸素ボンベの軽量化/227 5)その他/227 (1)介助犬の試み/227 まとめ/227 |
2.将来の展望/中田紘一郎…229 |
はじめに/229 1)在宅酸素療法患者数/229 2)適応疾患/230 3)適応基準/230 4)ハードウエアの改善/231 5)テレメディシン/231 |
付表…233 |
索引…237 |
改訂第2版序
本書が初めて出版されたのは,15年を遡る1991年,在宅酸素療法がなお黎明期にあった時代である。研究書がまだ少なかったその時期に,本書が果した役割は少ないものではなかった。
その後,厚生省特定疾患研究班や呼吸管理学会の活動,多くの臨床家の努力により,在宅酸素療法は現在重症呼吸器疾患治療の中軸をなすものとなっている。患者12万人を超える現在,酸素濃縮機器の進歩をはじめ,各領域の医療担当者の協力による治療内容の充実など在宅酸素療法の発展は目覚ましいものがある。
この時期,最適の執筆者を得て,在宅酸素療法のこれまでの歩みを俯瞰し,今後の進歩を期する本書の刊行は意義深いことである。本書の構成と内容は基本的には初版を引き継いでいるが,それぞれ内容の深化と進歩が適確に記述され,各執筆者の在宅酸素療法への情熱と意欲が充ち溢れている。本書が呼吸不全に悩む方々に,十分な医療と良き人生を拓くことに役立つことを希むものである。
本書発行に際して,真摯で温かい御協力を頂いた克誠堂編集部の栖原イズミさん,堀内志保さんに,心から謝意を表します。
2006年9月
谷本普一
初版序
わが国ですでに13, 000名をこえる人々に施行されている在宅酸素療法は,治療学の最近の進歩の中でも,際立ってユニークで有用な治療法である。慢性の呼吸不全の人々が病院でなく在宅で家族に囲まれて生活しながらの酸素療法は,その人間的な生活とQuality of Lifeを保証するものであり,その意義は高く評価される。
在宅酸素療法の実施には,医師,看護婦,呼吸療法士,医療事務担当者,医療機器メーカーなど多くの部門の人々の緊密な連係が必要であり,それぞれ患者さんとその家族に対し,適切な指導と助言を与える役割を分担する。その役割が順調に果たされ,在宅酸素療法が適確に行われるためには,その手順やマニュアルなど手引きになる書物が必要であるが,まだ歴史の浅いこの領域では,これら指針となるべき書物が少ないのが現状である。このような状況の中で本書が企画された。
本書の特徴は,第一に酸素療法の意義や呼吸不全に関する病態生理が詳述されていること,第二に酸素機器のメカニズムや取扱い方をわかりやすく解説してあること,第三に各部門の役割分担を明確化し,在宅酸素療法の進め方や手順を具体的に示してあること,第四に症例を中心に在宅酸素療法の対象となる疾患の特徴と問題を提示したことなどである。
幸いこの分野の最良の執筆者を得て,在宅酸素療法のすべてを盛り込んだわかりやすくまた水準の高い実践書ができ上がった。本書が在宅酸素療法に携わる人々のみならず一般の医療関係の方々にも読まれ,それが呼吸不全に悩む患者さんの苦痛を柔らげ,少しでも良き人生を送ることに役立つよう心から希望する。
本書刊行に際して,企画の段階から出版まで多大の御協力をいただいた克誠堂編集部の栖原イズミさんに謝意を表するものである。
1990年11月
谷本普一