コンパス顔面骨骨折の治療 ベーシック編
| 著者 | 坂本好昭 編著 |
|---|---|
| ISBN | 978-4-7719-0558-0 |
| 発行年 | 2022年 |
| 判型 | A4 |
| ページ数 | 280ページ |
| 本体価格 | 19,000円（税抜き） |
| 電子版 | あり |
M2Plus＜電子版＞
全編が美しいイラスト（写真なし）による手術アトラスです。
顔面骨骨折の治療を、準備や目標など初歩的なところから段階を追って詳しく解説されました。
とくに各手技では、コマ送りで手順・ポイント・ピットフォールを説明していきます。見えないところがよく見える、イラストレーションの良さが最大に生かされました！
また全編がロールプレイングゲームの攻略本のようなスタイルとなっているせいか飽きることなく楽しく学びが進められるのも魅力です。
教科書どおりにはいかない実情を著者同士がCHATで語ったり、体験談なども散りばめられていたりでヒント満載、隅から隅まで油断も隙もない１冊に仕上げられています。
研修医必携、顔面骨骨折の治療を行うなら、まずこの１冊から！
続編も刊行予定です。
CONTENTS 〈ベーシック編〉
準備
01 検査の意義 山田 稔・山田祥岳・陣崎雅弘 2
顔面打撲の診断 ー今昔ー／CT技術の発展
02 治療までの流れ 坂本好昭 5
顔面骨骨折の手術適応／タイムリミット／タイムスケジュール
03 インフォームドコンセント 坂本好昭 8
メスを入れる意味／説明に求められるもの／
インフォームドコンセントは免罪符ではない／説明の手順／合併症
04 手術器具 坂本好昭 12
手術器具って？／揃えておきたい器具
05 骨固定 坂本好昭 17
骨固定の歴史／ドリルの使い方／ワイヤリング／
ベンディングとプレーティング／プレートシステム
06 手術室にて 坂本好昭 22
チームファースト／環境整備／手術は協奏曲のように／
タクトの振り方 ーリズムー／タクトの振り方 ー指示出しー／ 1 人反省会
07 顔面骨骨折を治療するということ 坂本好昭 26
顔面骨骨折は, 骨折片が「偏位した」状態だ／「アライメント」と「バットレス」の示す意味／
「整復」と「固定」の違い／治療目的は, 機能面と整容面の回復だ
レベル1 鼻骨骨折 29
01 総論 彦坂 信 30
治療ダイジェスト／外鼻の構造／症状と手術適応／手術適応の判断／小児例の注意点
02 鼻骨骨折整復 彦坂 信 35
本手技の適応／手技
Chat Time 1 骨折整復のタイムリミットは？ 彦坂 信×玉田一敬×坂本好昭42
レベル2 涙道ブジー 47
涙道チューブ留置 太田 優 48
本手技の適応／手技
レベル3 頬骨骨折 53
01 総論 緒方寿夫 54
治療ダイジェスト／頬骨の構造／頬骨の偏位／Knight and Northの呪縛／
症状と手術適応／治療法の選択
02 頬骨弓骨折 ーGilliesのアプローチ 今西宣晶 63
本手技の適応／手技
03 頬骨骨折 ークローズリダクション＋ピンニング 坂本好昭 68
本手技の適応／手技
04 頬骨骨折 ーオープンリダクション 大原博敏 75
本手技の適応／本手技の限界／手技
Chat Time 2 眼窩下神経の麻痺，いつ治るの？ 緒方寿夫×大原博敏×坂本好昭89
レベル4 腸骨採取 95
本手技の適応／本手技の限界／手技 玉田一敬 96
レベル5 肋骨・肋軟骨採取 105
本手技の適応／本手技の限界／手技 今井啓道 106
レベル6 眼窩骨折 坂本好昭 115
01 総論 元村尚嗣 116
治療ダイジェスト／眼窩の構造／眼窩骨折の機序／症状と手術適応／
治療法の選択／移植材料について
02 Hess chart／Hertel 眼球突出計 太田 優 123
Hess chart／Hertel 眼球突出計
03 眼窩底骨折 (下直筋嵌頓) 玉田一敬 125
本手技の適応／手技
04 眼窩底骨折 玉田一敬 132
本手技の適応／手技
Chat Time 3 経上顎洞アプローチによる眼窩底整復 元村尚嗣×宮本純平×坂本好昭 140
05 眼窩内側壁骨折ー経皮アプローチ 宮本純平 144
本手技の適応／手技
06 眼窩内下壁合併骨折 元村尚嗣 152
本手技の適応／手技
Chat Time 4 吸収性プレートによる眼窩再建 太田 優×元村尚嗣×坂本好昭 158
レベル7 冠状切開 163
本手技の適応／手技 164
Chat Time 5 見学ノススメ 加持秀明×宮本純平×坂本好昭 176
レベル8 鼻篩骨骨折 181
01 総論 本多孝行 182
治療ダイジェスト／鼻篩骨の構造／症状と手術適応／治療法の選択
02 鼻篩骨骨折 本多孝之 188
本手技の適応／手技
切開・展開範囲 早見表 坂本好昭 196
レベル9 上顎骨骨折 199
01 総論 山下昌信 200
治療ダイジェスト／上顎骨の構造／上顎骨骨折の機序／症状と手術適応／
治療法の選択／それって上顎骨骨折？
02 咬合 石井武展・坂本輝雄 207
咬合とは／不正咬合／Angle分類／正常な咬合／咬合の復元
03 顎間固定 石井武展 213
アーチバー／ワイヤー固定／IMFスクリュー
04 上顎骨骨折 山下昌信 218
本手技の適応／手技
Chat Time 6 アライメント重視？ 整容面重視？ 井上義一×山下昌信×坂本好昭 226
レベル10 下顎骨骨折 231
01 総論 加持秀明 232
治療ダイジェスト／下顎の構造／下顎骨骨折に必要な理論／
症状と手術適応／治療法の選択
02 オトガイ部骨折本手技の適応／手技 井上義一 241
本手技の適応／手技
03 体部骨折 加持秀明 252
治療方針／手技
04 角部骨折 加持秀明 258
治療方針／手技
05 関節突起骨折 成田真人 265
本手技の適応／手技
Chat Time 7 術後の咬合異常 成田真人×石井武展×坂本好昭 272
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検査の限界を補完する 山田 稔 4
二刀流であれ ―宮本武蔵のごとくー 坂本好昭 16
プレーティング, ヒヤリハット 坂本好昭 21
助手の心構え 坂本好昭 25
よき指導医 坂本好昭 28
鼻骨骨折の治療 あるある 彦坂 信 41
最後は患者背景を加味して 緒方寿夫 62
MRIは撮れるの？ 大原博敏 88
骨, 落としちゃいました…。 玉田一敬 104
どのくらい積極的に手術を勧めますか？ 宮本純平 151
矯正歯科医の存在 石井武展 217
骨移植は大事だよ 山下昌信 225
Craniofacial surgeryとの出会い 加持秀明 240
正直者の患者 井上義一 251
BUOY
偏位？ 転位？ 変位？ 緒方寿夫 58
U字鉤 坂本好昭 74
３Dモデルを使おう 大原博敏 87
小切開から採取するコツ 今井啓道 114
球後出血への対応 玉田一敬 138
鼻骨骨折, 眼窩骨折との違いは？ 本多孝之 184
評者：清水 雄介（琉球大学大学院医学研究科形成外科学講座） 形成外科65巻9号
「各術者がオリジナルの「顔面骨骨折治療」を構築してゆくために― 最適な最初の一歩 ―」
2022年4月，刮目すべき本を見つけた。『コンパス 顔面骨骨折の治療 ベーシック編』。本書の特長は，①最新のトレンドの丁寧な説明，②骨だけでなく軟部組織まで精緻に描かれた美しい解剖イラスト，③論理的なだけではなく「感覚的」に手術をシミュレーションできる構成，④ドナー手術（腸骨・肋軟骨採取）についての親切な説明，⑤現場で役に立つコツやありがちなピットフォールの豊富な記載，⑥骨折だけでなく顔面のさまざまな手術に応用可能な汎用性，などである。
顔面骨骨折の治療に際し大きな落とし穴に嵌まって苦い思いをした術者は多いだろう。本書は顔面骨骨折治療を最新のトレンドに沿って論理的かつ感覚的に詳述しており，極めて理解しやすい構成となっている。解剖イラストが精密で美しく，手術の流れが頭にスッと入ってくる。手技についての細かな配慮だけでなくコメディカルを含めたチームワークへの配慮にも言及されており，今後ますます外科医が注意を払うべき内容がちりばめられている。
本書の編著者は慶應義塾大学形成外科の坂本好昭先生。日本を代表するCraniomaxillofacial surgeonで，国際舞台で活躍し，英文論文を多く執筆されている。しかし本書は初心者が理解しやすいよう編集されており，その大部分を占めるイラストは坂本先生の自筆による。熱い思いが伝わってくる。分担執筆陣にも豪華な一流の医師達を揃えている。専攻医，専門医，指導医問わず顔面を扱う医師には，本書を手元に置くことを強く勧めたい。
ただ気を付けるべきことが1つ。この本があまりに理解しすいため，顔面骨骨折治療の唯一のバイブルとなってしまい，ほかの教科書や論文が参照されなくなってしまうことだ。本書は典型的な方法を軸に展開しているが，実際の現場では骨折状態や解剖の違いによって最適解は異なってくる。当然本書記載の方法が必ずしもベストにならないケースも多々あるだろう。術者は本書に頼りすぎず，臨機応変に異なるアプローチができるよう研鑽を積むべきだ。最終的には各術者の頭の中でイラスト化されたオリジナルの「顔面骨骨折」教科書を構築できることが理想である。本書はその契機を与えてくれる貴重な1冊だ。