最新ラリンジアルマスク
1 ラリンジアルマスクの種類と適応 安本和正/1
1.LMAの概要 |
1 |
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2.各種LMAの特徴 |
3 |
(1)標準およびフレキシブルTM型LMA/4 (2)挿管用LMA/5 (3)人工呼吸用LMA/6 (4)ディスポーザブルLMA/8 |
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3.LMAのサイズ |
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4.まとめ |
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2 ラリンジアルマスクの使用に必要な解剖および生理学的知識 浅井 隆/11
1.マスクの構造と解剖学的位置 |
11 |
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(1)解剖/11 (2)LMAの基本構造/11 (3)LMAの正常位置/13 (4)マスクサイズ/15 (5)麻酔の上気道に及ぼす影響/16 (6)LMA挿入時の解剖学的影響/16 (7)LMAの他処置への解剖学的影響/18 (8)マスクの位置異常/19 (9)マスクの挿入,換気困難の原因/20 |
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2.生理 |
22 |
(1)LMAの使用による生理反応/22 (2)消化管/22 (3)呼吸器系に及ぼす影響/26 (4)循環系に及ぼす影響/27 (5)眼圧に及ぼす影響/28 (6)頸椎に及ぼす影響/28 |
3 ラリンジアルマスクの問題点 岩崎 寛/31
1.LMAの術中合併症 |
32 |
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(1)鼻腔・口腔からの液体流入による誤嚥/32 (2)LMAカフ周囲からの気体漏れ,胃内流入/32 (3)食道からの逆流による誤嚥/33 (4)挿入時の咳嗽・咽頭反射,喉頭痙攣/34 (5)LMAカフ圧/34 |
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2.LMAの術後合併症 |
35 |
(1)嘔吐・嘔気/35 (2)術後咽頭痛,嚥下時違和感/36 (3)発声障害,声帯麻痺,披裂軟骨脱臼/36 (4)耳下腺,顎下腺/36 (5)脳神経麻痺/37 (6)動脈血-呼気終末二酸化炭素ガス分圧較差(Pa-etCO2)/37 |
4 ラリンジアルマスクの挿入法 桑迫勇登,安本和正/39
1.標準型LMA(LMA ClassicTM)の挿入法 |
39 |
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2.フレキシブルTMLMAの挿入法 |
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3.ファーストラックTMLMAの挿入法 |
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4.プロシールTMLMAの挿入法 |
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(1)プロシールTM-イントロデューサを使用した挿入法/44 (2)第2指による挿入/45 (3)第1指を用いた挿入法/45 |
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5.ディスポーザブルLMAの挿入法 |
46 |
6.その他の挿入法 |
47 |
7.まとめ |
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5 麻酔時の使用 青柳光生/51
1.はじめに |
51 |
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2.腹部手術の麻酔 |
51 |
(1)特徴/51 (2)麻酔法/52 (3)腹腔鏡下の手術/53 (4)腹部小手術/54 |
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3.胸部手術の麻酔 |
54 |
(1)気管支鏡の麻酔/54 (2)胸部交感神経遮断術の麻酔/54 (3)気管上部の観察/54 (4)気管狭窄症例の麻酔/55 |
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4.眼科および頭頸部手術の麻酔 |
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(1)眼科の麻酔/56 (2)扁桃腺摘出術(口腔内の手術)/56 (3)耳,鼻の手術の麻酔/56 (4)頸部の手術の麻酔/56 |
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5.脳神経外科の麻酔 |
56 |
6.小児外科の麻酔 |
57 |
7.手術室以外での麻酔 |
57 |
(1)特徴/57 (2)対象/57 (3)電気痙攣療法の麻酔/57 |
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8.安全な腹臥位手術へのLMAの応用 |
58 |
9.気管切開とLMA |
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10.老齢者の麻酔 |
59 |
11.不安定頸椎の麻酔 |
60 |
12.おわりに |
60 |
6 救急医療での使用 中川 隆/63
1.はじめに |
63 |
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2.プレホスピタルケアにおける気道確保デバイス |
63 |
(1)LMA以外の各種デバイス/63 (2)LMA/64 |
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3.院内でのLMAの応用 |
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(1)心肺蘇生/65 (2)重症外傷による頸椎損傷症例/66 (3)気管支ファイバによる吸痰および検査/66 (4)乳幼児,新生児に対する応用/66 |
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4.特殊LMAの応用 |
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(1)ファーストラックTM/70 (2)プロシールTM/71 |
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5.LMAと誤嚥 |
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6.おわりに |
71 |
7 挿管困難症に対するラリンジアルマスクの使用 安本和正/73
1.LMAと気管支ファイバスコープ併用法 |
73 |
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(1)実施法/73 (2)利点/74 (3)問題点/76 |
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2.挿管用LMAによる気管挿管 |
77 |
(1)ファーストラックTMの概要/77 (2)ファーストラックTMの使用法/79 |
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3.まとめ |
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8 ラリンジアルマスク類似器具 高杉嘉弘,古賀義久/83
1.食道閉鎖式エアウェイ |
83 |
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(1)食道閉鎖エアウェイ,食道胃管エアウェイ/84 (2)コンビチューブ,PTL/85 (3)スミウェイ(R)WB/87 (4)ラリンジアルチューブ/87 (5)Cuffed Oropharyngeal Airway/88 |
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2.気道確保デバイスの適応と選択 |
89 |
索引 |
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市販開始時ラリンジアルマスク(LMA)は,今日では標準型と称する1種類しかなく,サイズも4つだけであったが,その 後改良と工夫が重ねられ,タイプは4種類に,サイズも7つへとそれぞれ増加した。この事実は,使用経験が増えるにつれてLMAの有用性が広く認識された事 を示している。種類とサイズが増えたため患者の状況に適したLMAが選択でき,安全性もより一層向上し,現在では手術室だけでなく救急の場でもLMAは広 く普及している。我が国では1992年より救急救命士法に基づき,心肺停止患者に対して救急救命士がLMAを用いて気道確保を行っている。一方,LMAが 最初に使用された英国では1988年からLMAの市販が開始され,年間に531万例が全身麻酔を受けた2000年には,驚くことに半数から2/3の症例に LMAが用いられたという。この報告からも明らかなように,現在の麻酔ではLMAは気道確保法として不可欠である。使用開始当初は,LMAを用いるのは体 表部手術で麻酔時間が短く,その上自発呼吸を維持する症例に限ると考えていた。あるいは簡単に気道が確保されるため,気管挿管が難しい症例に向いていると された。しかし,約20年にわたるLMAの使用経験の蓄積により,LMAの使用法はかなり変わってきた。考案者のBrainは上腹部手術例におけるLMA の使用などとんでもないと言っていたが,気密性が向上したタイプが開発されたためか,現在では腹腔鏡下胆嚢摘出術においてもLMAはよく用いられている。
著者は,幸いにも1991年と1994年の2回英国においてDr. BrainからLMAの使用法を直接伝授される機会を得たため,本邦において市販が開始された当初より抵抗感なくLMAを使用することができた。一方,食 わず嫌いという言葉があるように,LMAの特性を体験することなく闇雲にLMAを遠ざけている麻酔科医もかなり存在しているようである。これは本当に残念 な事実である。著者の施設では挿管困難症に対しては特に重宝しており,LMAの存在は我々麻酔科医の精神状態まで安定させてくれる。したがって,LMAは 非侵襲的で患者に優しいと言われているが,麻酔科医にも同様のことが言えよう。上記のようにLMAの使用症例数は年々増加し,種類も増え,それに連れて使 用法も変わってきたが,この方面に関する新しい解説書がないため本書の出版を企画した。LMAについての造詣が深い麻酔科医に,解りやすく記述して頂くよ うにお願いし,LMAに慣れていない方々にも理解しやすいようにと留意したつもりである。著者は,患者の安全のためにも全ての麻酔科医はLMAの使用法に 習熟すべきと考えており,本書はその手助けになると期待している。もちろん,救急の第一線で活躍する救急救命士の諸兄にも役立つように配慮した。
本書を紐解かれた読者がLMAを正しく使用され,一人でも多くの患者が安全な麻酔を受け,あるいは救命されたならば,編者として望外の幸せである。
2005年春 昭和大学病院にて
安本和正