癌性疼痛
癌の痛みを理解する知識を全て網羅!
癌性疼痛の発症機序、使用する薬物、オピオイドの使用法と副作用、鎮痛補助薬、在宅医療などの各項目を専門家が解説。
緩和ケア専門医から研修医に至るまで、誰でも理解しやすい内容です。
I.癌性疼痛の発症機序(表 圭一)
はじめに
体性侵害受容性疼痛
内臓痛
神経障害性疼痛
骨癌性疼痛
1 骨癌性疼痛の機序/2 脊椎への転移性癌性疼痛
おわりに
II.癌性疼痛に使用される薬物
1.NSAIDs(細川豊史)
はじめに
癌性疼痛管理におけるNSAIDsの位置づけ
NSAIDsの鎮痛作用機序
PGのさまざまな作用
PG合成酵素COX-1とCOX-2
選択的COX-2阻害薬
NSAIDsの主な副作用
1 消化管障害/2 腎障害/3 心血管系障害
NSAIDsの種類
癌性疼痛治療におけるNSAIDs使用の実際
その他の話題
1 NSAIDsの中枢作用/2 NSAIDsの腫瘍増殖抑制作用
おわりに
2.アセトアミノフェン(佐伯 茂)
はじめに
構造式と薬物動態(図)
作用機序
わが国で癌性疼痛に使用が可能な製剤
アセトアミノフェンの使用量
副作用
1 胃腸障害/2 喘息患者への使用/3 血小板に対する作用/
4 肝毒性/ 5 その他
アセトアミノフェン中毒の治療
アセトアミノフェンとオピオイドの合剤
おわりに
3.コルチコステロイド(田邉 豊)
はじめに
コルチコステロイドの作用機序と薬理作用
1 作用機序/2 薬理作用
コルチコステロイドの種類
コルチコステロイドが適用となる病態
コルチコステロイドの投与法
1 使用される薬物/2 投与方法
副作用と対策
1 副作用/2 対策
おわりに
4.オピオイド
A.弱いオピオイド(高橋秀則)
はじめに
コデイン(リン酸コデイン)
ジヒドロコデイン(リン酸ジヒドロコデイン)
B.拮抗性鎮痛薬(井手康雄)
はじめに
拮抗性鎮痛薬とは
ペンタゾシン
1 薬物動態/2 代謝と排泄/3 投与量/4 副作用
ブプレノルフィン
1 薬物動態/2 代謝と排泄/3 投与量/4 副作用
ブトルファノール
1 薬物動態/2 代謝と排泄/3 投与量/4 副作用
エプタゾシン
1 薬物動態/2 代謝と排泄/3 投与量/4 副作用
C.強オピオイド
i)モルヒネ製剤(有田英子)
はじめに
モルヒネの作用と特徴
1 モルヒネの作用と作用部位/
2 鎮痛作用を得るためのモルヒネ血中濃度/
3 モルヒネの代謝産物
モルヒネ製剤の種類
1 内服薬/2 坐剤/3 注射剤
おわりに
ii)オキシコドン(松田陽一)
はじめに
薬理学的特徴
鎮痛効果について
副作用
各剤形の特徴と投与法
1 徐放性経口剤(オキシコンチン(R)錠)/
2 速放性経口剤(オキノーム(R)散0.5%)/
3 注射剤および複方注射剤(パビナール(R)注)
iii)フェンタニル(林 章敏)
フェンタニルの歴史
フェンタニルのpharmacodynamics(薬力学)
フェンタニルのpharmacokinetics(薬物動態学)
フェンタニルの特徴(他のオピオイドとの比較)
1 脂溶性が高い/2 分子量が小さい/3 高い鎮痛作用/
4 副作用が少ない/5 活性代謝物がない/6 半減期が短い
フェンタニルの臨床
1 フェンタニルの剤形・投与経路/2 フェンタニル投与の実際/
3 オピオイドローテーション
(フェンタニルからの変更,フェンタニルへの変更に焦点を当てて)
フェンタニル貼付剤を使用する際のケアの留意点
フェンタニルの耐性について
5.ノイロトロピン(R)(村川和重,森山萬秀,柳本富士雄,中野 範,福永智栄)
はじめに
ノイロトロピン(R)の概要
ノイロトロピン(R)の鎮痛作用機序
ノイロトロピン(R)の各種疼痛疾患に対する臨床応用
1 筋骨格系の痛みに対する効果/2 神経障害性疼痛に対する効果
癌性疼痛に対するノイロトロピン(R)の使用
ノイロトロピン(R)の安全性について
おわりに
6.μオピオイド受容体遺伝子とオピオイド感受性
─癌性疼痛オピオイド治療の将来へ向けて(林田眞和,池田和隆)
はじめに
μオピオイド受容体遺伝子とオピオイド感受性
1 動物実験の結果/
2 ヒトμオピオイド受容体遺伝子の分子生物学的研究の結果/
3 ヒト急性術後痛での研究結果/4 ヒト癌性疼痛での研究結果
その他の遺伝子多型の影響
おわりに
III.オピオイドの使い方(小川節郎)
はじめに
持続痛に対する使い方
1 開始の時期/2 オピオイドの選択/3 開始量の決め方
4 タイトレーション/5 服薬量の調節
突出痛に対する使い方
オピオイドローテーション
1 オピオイドローテーションとは/
2 オピオイドローテーションの理論的裏づけ/
3 オピオイドローテーションの適応/
4 オピオイドローテーションを考慮したときに必要な患者アセスメント/
5 オピオイドローテーションの実際
IV.WHO方式癌性疼痛治療法(下山恵美,下山直人)
はじめに
WHO方式癌性疼痛治療法の歴史的・社会的背景
1 癌の痛みの頻度と特徴/2 癌の痛みの成因/3 癌の痛み治療とWHOの対応
WHO癌性疼痛治療指針
1 経口的に/2 時刻を決めて規則正しく/3 除痛ラダーにそって効力の順に/
4 患者ごとの個別な量で/5 そのうえで細かい配慮を
WHO方式と実際の適応
1 癌の痛みが段階的に増加する場合/
2 癌による強い痛みをもつ患者を初めて診察した場合
小児癌性疼痛治療指針
まとめ
V.オピオイドの副作用とその対処(山口敬介,井関雅子)
はじめに
オピオイドの副作用一般について
投与開始時からコントロールすべき副作用
1 便秘/2 嘔気・嘔吐
投与量にかかわらず出現する副作用
1 排尿障害/2 そう痒感/3 口渇
増量や過量投与によって出現する副作用
1眠気/2 呼吸抑制/3 錯乱,幻覚/4 譫妄/
5 ミオクローヌス,知覚過敏
その他の副作用
1 発汗/2 気分高揚,うつ状態/3 paradoxical pain
VI.オピオイドが効きにくい痛みとその治療法
1.神経障害性疼痛(河西 稔,川瀬守智,湯澤則子)
はじめに
オピオイドが効きにくい痛み
動物モデルを用いた研究
神経障害性疼痛患者に対する薬物による除痛治療
1 薬物治療/2 神経ブロック
まとめ
2.骨転移痛(河西 稔,川瀬守智,湯澤則子)
はじめに
薬物療法
1 NSAIDs/2 ステロイド薬/3 ビスホスホネート/4 オピオイド
固定療法
1 外固定/2 内固定
放射線療法
手術療法
椎体形成術
ゾレドロネートとストロンチウム(89Sr)療法
臓器特異的全身療法
リハビリテーション
まとめ
VII.鎮痛補助薬
1.抗うつ薬(加藤 実)
はじめに
癌患者における神経障害性疼痛の原因
1 癌自体の直接的影響/2 癌治療に伴う影響
神経障害性疼痛の関与を疑うポイント
1 ポイント1:疑う姿勢/2 ポイント2:治療に抵抗する痛み/
3 ポイント3:痛みの性質
抗うつ薬の鎮痛機序
抗うつ薬の種類と投与法
1 アミトリプチリン(トリプタノール(R))/
2 ノルトリプチリン(ノリトレン(R))/
3 ミルナシプラン(トレドミン(R))/
4 デュロキセチン〔duloxetine(日本未発売)〕/
5 ヴェンラファキシン〔venlafaxine(日本未発売)〕
抗うつ薬の有効性と副作用
1 有効性/2 処方時の注意点,副作用の種類,発現頻度
化学療法に伴う痛みに対する抗うつ薬の効果
鎮痛補助薬の中における抗うつ薬の位置づけ:推奨されている投与順位
おわりに
2.抗不安薬(後閑 大,加藤 実)
はじめに
癌性疼痛と痛みの閾値
癌性疼痛緩和の鎮痛補助薬
抗不安薬の薬理作用
実際の使用方針
抗不安薬の副作用
おわりに
3.抗痙攣薬(具志堅 隆)
はじめに
主な抗痙攣薬
1 ガバペンチン〔gabapentin(ガバペン(R))〕/
2 カルバマゼピン〔carbamazepine(テグレトール(R))〕/
3 クロナゼパム〔clonazepam(リボトリール(R),ランドセン(R))〕/
4 ゾニサミド〔zonisamide(エクセグラン(R),エクセミド(R))〕/
5 バルプロ酸ナトリウム〔valproate sodium(デパケン(R),セレニカ(R))〕/
6 フェニトイン〔phenytoin(アレビアチン(R),ヒダントール(R))〕/
7 わが国では未発売の抗痙攣薬
抗痙攣薬の選択
おわりに
4.抗不整脈薬(川股知之)
はじめに
癌性疼痛治療に用いられる抗不整脈薬
作用機序
代謝と薬物相互作用
リドカイン
1 癌性疼痛治療に対するエビデンス/2 投与法/3 副作用
メキシレチン,フレカイニド
1 癌性疼痛治療に対するエビデンス/2 投与法/3 副作用
5.NMDA受容体拮抗薬(植松弘進,眞下 節)
はじめに
NMDA受容体とは
NMDA受容体拮抗薬の治療効果
1 ケタミン(ケタラール(R))/2 デキストロメトルファン(メジコン(R))/
3 イフェンプロジル(セロクラール(R))
6.α2アゴニスト(奥田健太郎,野口隆之)
はじめに
クロニジン
1 硬膜外投与/2 くも膜下投与
デクスメデトミジン
7.局所麻酔薬,その他(田中 聡,川真田樹人)
はじめに
局麻薬
1 構造と分類/2 局麻薬の作用機序/
3 麻酔作用に影響を与える特性/
4 癌性疼痛に対する局麻薬の使用法/
5 分離神経遮断(differential nerve block)/6 代謝/7 副作用/
8 局麻薬の効果が不十分になる場合
その他
1 カンナビノイド/2 ガバペンチン/3 N型Ca2+チャネル拮抗薬/
4 プロスタグランジンE1(PGE1)/5 カプサイシン/
6 バクロフェン/7 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬
おわりに
VIII.癌性疼痛に対する各種療法
1.神経ブロック療法
A.交感神経ブロック(柴田政彦,松田陽一,眞下 節)
はじめに
内臓神経の解剖
交感神経ブロックの種類
1 腹腔神経叢ブロック/2 下腸間膜神経叢ブロック/
3 上下腹神経叢ブロック/4 不対神経ブロック
B.知覚神経ブロック(山口重樹,北島敏光)
はじめに
顔面・頭部の癌性疼痛
1 三叉神経ブロック/2 後頭神経ブロック
体幹・四肢の癌性疼痛
1 くも膜下フェノールブロック/2 硬膜外ブロック/
3 浅頸神経叢ブロック/4 深頸神経叢ブロック/
5 腕神経叢ブロック/6 肩甲上神経ブロック/
7 肋間神経ブロック/8 脊髄神経後枝内側枝ブロック(高周波熱凝固法)/
9 トリガーポイント注射
C.脊髄鎮痛法:硬膜外鎮痛法,くも膜下鎮痛法(服部政治)
はじめに
脊髄鎮痛法の歴史とメカニズム
薬物の選択
脊髄鎮痛法の適応と禁忌
硬膜外腔鎮痛法
1 硬膜外腔の解剖/2 インフォームドコンセント/3 留置位置/
4 臨床使用/5 合併症
脊髄くも膜下腔鎮痛法
1 脊髄くも膜下腔の解剖/2 インフォームドコンセント/
3 留置位置/4 臨床使用/5 合併症
脊髄鎮痛法後の既存薬物の減量
脊髄鎮痛法の工夫と対策
おわりに
2.持続皮下注射法(廣田一紀,比嘉和夫)
はじめに
利点と欠点
適応
準備薬物と器具
投与の実際
まとめ
3.持続静脈内注射法(廣田一紀,比嘉和夫)
はじめに
利点と欠点
適応
準備薬物と器具
投与の実際
まとめ
4.放射線治療(中川恵一)
はじめに
疼痛緩和目的の放射線治療
脊椎転移による脊髄圧迫に伴う神経症状を予防または改善する目的での放射線治療
病的骨折予防目的の放射線治療
まとめ
5.脳神経外科的インターベンション(平 孝臣)
はじめに
侵害刺激上行路の遮断
定位的帯状回凝固術
脳下垂体へのガンマナイフ照射
髄腔内薬物治療
まとめ
6.緩和ケアにおけるリハビリテーション(理学療法)(吉澤明孝,行田泰明)
はじめに
緩和ケアにおけるリハビリテーションの目的
リハビリテーションの内容
疼痛管理目的のリハビリテーション
緩和医療における実際の使用例
1 筋筋膜性疼痛/2 神経障害性疼痛/3 リンパ浮腫/
4 放射線性粘膜炎,化学療法副作用/5 褥瘡/6 皮膚潰瘍
まとめ
7.心理療法(佐藤 智,三浦浅子)
はじめに
癌患者の心理
1 告知後の心理過程/2 悲哀の仕事(mourning work)
面接技法
1 傾聴/2 SHEARE
評価と診断
1 つらさと支障の寒暖計/2 村田理論
おわり
8.癌の痛みに対する漢方治療(世良田和幸)
はじめに
癌性疼痛の病因
癌性疼痛の漢方治療
癌性疼痛治療の実際
1モルヒネなど鎮痛薬の補助療法として/2 癌性疼痛に対する漢方薬治療
担癌状態に対する漢方治療
9.鍼灸治療と補完代替医療(森本昌宏,楳田高士)
はじめに
鍼灸治療
1 鍼灸治療に関する一般的事項/2 鍼灸治療の適応/
3 癌患者での鍼灸治療/4 鍼灸治療施行にあたっての注意点
その他の補完代替医療
1 補完代替医療に関する一般的事項/
2 癌患者での補完代替医療/3 補完代替医療の問題点と今後
おわりに
IX.在宅医療における癌性疼痛への対処(行田泰明)
はじめに
在宅緩和ケアの特徴と在宅訪問診療システム
1 在宅緩和ケアとは/2 全人的疼痛(total pain)/
3 家族(介護者)ケア/4 医療連携/
5 在宅訪問診療システム
在宅医療における癌性疼痛対策
1 麻薬の導入…誤解を解くところから始まる/
2 確実な鎮痛と副作用対策/3 レスキュードーズの準備/
4 簡単な投与経路,確実な投与経路/5 携帯型ポンプ/
6 内服困難や内服不可の症例/7 持続静注法,持続皮下注法/
8 鎮静/9 鎮痛補助薬/10 処置による疼痛緩和/
11 精神的疼痛,社会的疼痛,霊的疼痛対策
おわりに
X.痛みを理解するうえで必要な知識(関山裕詩)
はじめに
トータルペイン(全人的苦痛)
1 身体的苦痛(physical pain)/2 精神的苦痛(mental pain)/
3 社会的苦痛(social pain)/4 スピリチュアルペイン(spiritual pain)/
痛みの評価
痛みの評価の実際
1事前診療情報の収集/2 患者への問診でのアセスメントの項目
おわりに