皮膚表面外科

皮膚表面外科

編集 北海道大学教授 大浦武彦
ISBN 4-7719-0088-4
発行年 1990年
判型 B5
ページ数 ページ
本体価格 12,000円(税抜き)
電子版 なし


I.皮膚構造とwound healing 大浦武彦 1
A.皮膚の構造 1

1.表皮 1 
2.真皮 1 
3.皮膚付属器 1

B.皮膚の厚さ 2
C.皮膚を水平に剥離すれば? 3
D.単純性潰瘍とwound healing 3

1.新生表皮の伸び方 4 
2.表皮の新生速度 4 
3.開放(乾燥)潰瘍面の表皮形成 5 
4.閉鎖(湿潤)潰瘍面の表皮形成 5 
5.表皮新生に影響を及ぼす各種薬剤 6 
6.外用剤の影響 6

E.深い潰瘍のwound healing 7

1.潰瘍面の収縮 7 
2.収縮と表皮形成の臨床的意義 8 
3.感染とwound healing 11

II.表在性血管腫,母斑の分類と治療方針 大浦武彦 13
A.表在性血管腫 13

1.頻度の多い血管腫 13 
2.母斑症およびその他の奇形を合併する血管腫 19 
3.増大あるいは増悪する血管腫および血管腫様腫瘍 20

B.母斑 21

1.母斑細胞母斑 21 
2.巨大色素性母斑の合併症と悪性変化 22 
3.太田母斑 22 
4.類器官母斑,脂腺母斑 23 
5.青色母斑 23 
6.扁平母斑 24

III.削皮術 塚田貞夫 27
A.適応疾患 27
B.削皮手技とその注意 27
C.削皮創の術後経過とその処置 28
D.合併症 29

1.稗粒腫様皮疹 29 
2.瘢痕形成 29 
3.色素脱失 29 
4.色素沈着 29

E.治療効果 30

1.外傷類 30 
2.母斑類 32 
3.皮膚疾患 32

IV.電気凝固術 小林敏男 33
A.電気凝固術の基礎知識 33
B.絶縁針電気凝固術 35

1.絶縁針について 35 
2.毛細血管拡張症の治療 36 
3.腋臭症の治療 38

V.レーザー療法 41
1.レーザー療法概論 松本敏明 41
はじめに 41
A.母斑・血管腫に対するレーザー治療法の原理 42

1.レーザー光の波長と皮膚透過性 42 
2.レーザー光の発振形式と照射時間 43 
3.レーザー光の組織内深達性について 45

B.各種疾患に対するレーザーの適応 45

1.皮膚の血管性病変 45 
2.メラノソーム増加性病変 46 
3.隆起性皮膚病変の治療 47 
4.切開に用いるレーザー 47

2.アルゴンレーザー治療 松本敏明 48
はじめに 48
A.アルゴンレーザー療法の原理および装置 48
B.アルゴンレーザー治療法の実際 49

1.レーザー出力の調整 49 
2.照射野の準備および麻酔 49 
3.アルゴンレーザー光の照射方法 50 
4.レーザー照射後の後療法および評価法 53

C.各疾患におけるアルゴンレーザー療法 53

1.単純性血管腫(ポートワイン血管腫) 53 
2.毛細血管拡張性疾患 55 
3.苺状血管腫 55 
4.扁平母斑 57 
5.母斑細胞母斑 57 
6.その他の適応となる疾患 59

3.炭酸ガスレーザー治療 森田泰鎮 61
はじめに 61
A.炭酸ガスレーザーの生物学的特性 61
B.炭酸ガスレーザーメスの原理 62
C.炭酸ガスレーザー装置 62
D.炭酸ガスレーザー適応病変 64
E.炭酸ガスレーザー治療 64

1.黒子の炭酸ガスレーザー治療 65 
2.脂漏性角皮症 67 
3.尋常性疣贅 69

F.術後処置 69
G.炭酸ガスレーザー治療の臨床評価 69

4.ルビーレーザー治療 宮坂宗男 70
はじめに 70
A.ルビーレーザー装置 71
B.扁平母斑と母斑細胞母斑に対するルビーレーザー治療 71

1.ルビーレーザーによる組織学的変化 72 
2.照射方法 72 
3.後療法 73 
4.治療効果 75

C.ルビーレーザーを用いた扁平母斑,母斑細胞母斑以外の治療 76
D.ルビーレーザーの臨床評価 77

5.色素レーザー治療 若松信吾 78
A.波長による選択的凝固反応と,照射時間による選択的凝固反応 79
B.レーザーの発振波長に基づく臨床的応用とその問題点 80
C.計算されたthermal relaxation timeに関する考察 82
D.色素レーザーによるポートワイン血管腫の治療 84

1.適応 84 
2.結果 85

E.しみ,そばかす,扁平母斑への色素レーザー照射治療の応用 86
F.症例 86
G.これからの課題 92

VI.冷凍外科療法 大塚 壽 93
A.皮膚および軟部組織の凍結破壊と治癒過程 93
B.雪状炭酸療法 93
C.液体窒素療法 95

1.適応疾患 96 
2.凍結手技 102 
3.凍結壊死創に対する処置 102

VII.コラーゲン注射療法 大浦武彦・本間賢一 105
A.コラーゲンとは 105
B.コラーゲン注入剤 106

1.Zyderm(R),ザイダーム 106 
2.コーケン・アテロコラーゲン・インプラント 107 
3.Zyplast(R),ザイプラスト 107

C.コラーゲン注入剤の適応 108
D.コラーゲン注入剤の注入方法 108

1.皮内反応検査 108 
2.注入手技 110 
3.効果の持続期間 111

E.コラーゲン注入剤の副作用 111
F.代表症例 112
G.組織学的所見 115
H.コラーゲン注射療法の臨床評価 116

VIII.植毛術 119
1.主として遊離皮弁法による植毛術 大森喜太郎 119
A.植毛術を施行するさいの一般的な留意点 119

1.毛流の重要性 119 
2.毛流と切開線 119

B.皮弁による植毛術 121

1.有茎頭皮皮弁法 121 
2.遊離法 123

C.遊離皮弁法による植毛術の臨床評価 127

2.円柱植毛手術 江崎哲雄 128
A.植毛手術の条件 128
B.手術法 129

1.植毛部のパンチ 130 
2.恵毛部 131

C.発毛を阻害する因子 135
D.円柱植毛手術の変法 136
E.臨床例 137

3.短冊状植毛術 有賀昭俊 138
手技 138

IX.抜毛術 小林敏男 143
A.抜毛用絶縁針の分類 143
B.絶縁針抜毛の要点 145
C.部位別抜毛術 146

1.小耳症の耳の抜毛 146 
2.顔面(とくにヒゲ)の抜毛 147 
3.うなじ部の毛の抜毛 147 
4.腋毛の抜毛 147 
5.腕の毛の抜毛 148 
6.乳輪部の抜毛 148 
7.陰毛の抜毛 149 
8.大腿部・下腿部の毛の抜毛 149 
9.遅発性扁平母斑(ベッカー母斑)の抜毛 149

X.Tissue expansion手術 皆川英彦・大浦武彦 151
はじめに 151
A.エクスパンダーの歴史 152
B.エクスパンダーの種類 152

1.エクスパンダーの用量 152 
2.エクスパンダーの形状 153 
3.Reservoirの位置による分類 153

C.エクスパンダーを用いた手術手技 153

1.エクスパンダー埋入手術 154 
2.生理的食塩水の注入 154 
3.エクスパンダーの除去および組織の再建 155 
4.Intra-operative sustained limited tissue expansion 155

D.エクスパンダー手術の合併症 155
E.エクスパンダーの利点と欠点 156

XI.腋臭症の手術 新冨芳尚 163
はじめに 163

1.Skoog法について 163 
2.稲葉法について 164 
3.反転剪除法について 165

A.反転剪除法 165

1.方法 165 
2.合併症 170

B.反転剪除法の臨床評価 171

XII.黒子除去術 難波雄哉 173
まえがき 173
A.治療方法 173

1.切除と縫合による方法 173 
2.皮下茎皮弁による方法 175 
3.各種の局所皮弁 176 
4.開放治療(くり抜き法) 176 
5.レーザーによる治療 178 
6.その他の治療方法 178

B.治療適応の選択 178

XIII.太田母斑,扁平母斑の治療 冨士森良輔 181
A.太田母斑 181
B.扁平母斑 181
C.治療方法 181
D.冷凍外科療法 183

1.材料 184 
2.作用機序 185 
3.ドライアイス圧抵療法 186

XIV.イボ,魚の目の治療 井上邦雄 189
A.イボの治療 189

1.イボの概念 189 
2.イボの治療 191

B.魚の目の治療

1.胼胝腫(たこ) 193 
2.鶏眼(魚の眼) 194

XV.母斑の外科的治療 大浦武彦・杉原平樹 197
はじめに 197
手術方法 197

1.母斑切除縫縮に当たっての一般的考え方 197 
2.Serial excision(分割切除) 197 
3.皮下茎皮弁 200 
4.局所皮弁 202 
5.遊離植皮術 205

XVI.白斑,脱色素斑の治療 添田周吾 207
A.白斑の種類 207

1.先天性の白斑 207 
2.後天性白斑 207

B.白斑の手術治療 209

1.切除縫合法 209 
2.植皮術 210 
3.削皮術 215

XVII.爪の形成外科 児島忠雄・後藤昌子 217
A.爪の解剖と生理 217

1.解剖 217 
2.爪の産生と成長 217

B.爪の形成手術が適応となる爪変形 218

1.先天性 218 
2.後天性 218

C.爪の形成手術 219

1.先天奇形による爪変形 219 
2.後天性の爪変形 220

XVIII.小腫瘍摘出術 福田修 227
A.皮膚表面にある小腫瘍の切除術 227
B.皮膚浅層にある小腫瘍の摘出 230

索引 233

皮膚表面外科は小手術,皮膚外科手術などと呼ばれており,形成外科手術の中でも基本的な分野であるが,日常診療の中では手術件数がもっとも多く,形成外科手術の重要位置を占めている。

それだけに,現在これらの手術がどのような考えで計画され,施行され,どのような結果となっているかを知ることは大切なところであり,また,注意を払わなければならない。一般にこの皮膚表面外科手術の結果,どれほど良くなるかが多くの患者の関心事であり,その手術者や施設の評価となりがちである。すなわち,その結果が良ければ評判を高めることとなる。しかしながら,この皮膚表面外科について,手術や治療を行なう立場から系統的に,また詳細に書かれた教科書は少なく,また,あっても満足できるものではなかった。

このため,本書では,皮膚表面外科の中でも基本的な手術主義,たとえば削皮術,クライオサージャリー,黒子除去術や小腫瘍の切除などは,経験豊富な方々にその詳細と“こつ”を執筆して頂いた。新しい手術方法や新しい器機の使い方については,それぞれの手術主義の開発者や,実際に手術を行なっている方々に依頼し,内容の充実を図った。

したがって,本書は,これから形成外科あるいは皮膚外科を志す方々の指針となるばかりではなく,形成外科の専門医にも益する本であると考えられる。

この本の出版に際し,本書を企画された故大森清一先生ならびに福田修教授に敬意を表し,合わせて快よくご協力下さった執筆者の方々および編集実務にご尽力下さった克誠堂の林さんに感謝の意を表したい。

1990年3月10日
大浦武彦