在宅医療・介護における 感染管理ハンドブック
【I. 総論】
感染管理の基礎知識
1.標準予防策
2.感染経路別予防策
3.病原体の基礎知識と感染管理
4.環境整備から考える感染管理・衛生管理
5.在宅・介護の現場における消毒薬の取扱い
【II. 各論】
在宅医療・介護の留意点
1.感染管理技術
2.在宅・訪問時の留意点
3.感染拡大防止の対応
現在、在宅での療養を希望し、保健医療福祉サービスと連携しながら看護ケアを
提供する仕組みができて利用者も年々増加している。この取り組みは地域医療での
ホームドクターの普及や情報通信技術(ICT)システムを活用して在宅生活を継続
しながら高度な医療サービスを提供しようとする試みに支えられており、利用者に
とっても大きな効果をもたらす。このように日本の医療体制もかかりつけ医師の重
要性や在宅医療、訪問介護医療の推進・強化へと変化している。
診療報酬上では2012 年に感染対策加算や感染対策地域連携加算が整備され、施
設基準を満たした施設においては、その効果は見える形になっている。また感染対
策に関する認定制度も定着し、インフェクションコントロールドクター(ICD)、感
染管理認定看護師、感染制御認定臨床微生物検査技師、感染制御専門薬剤師を合わ
せると1 万人以上の認定資格保持者が日本の医療機関で働いている。しかし、入院
施設を持つ医療機関だけで約1 万施設、クリニックも含めるとその数倍もある日本
の医療機関数から見れば、決して十分な数とはいえない。しかも、これらの認定資
格保持者は比較的大規模な医療機関に偏っている傾向にある。
今後の更なる高齢化社会を考えれば、在宅医療はやむを得ない状況であり、専門
的な技術や知識を必要とする医療や看護が病院から在宅の現場に進出してきている
のも事実である。在宅医療の体制には、退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、
看取りの4 要素がある。在宅医療を受けている患者の医療依存度や要介護度は幅広
く疾病も多様であるため、感染管理は必要不可欠である。しかしながら在宅医療に
関わる医療機関においては、認定資格を有する人が1 人もいないというところが珍
しくないであろう。
そこで、在宅医療に関わる医療機関の医療・福祉関係者だけでなく、家庭での介護・
看護においても家族が知っておくべき感染管理を理解し実践することで、在宅での
利用者やその家族、訪問スタッフを感染から守るために本書は企画された。本書は
2 章の構成になっており、I.総論では感染管理の基礎知識について実践テクニック
を写真やイラスト付きで、II.各論では感染管理技術、在宅・訪問時の留意点、感染
拡大防止の対応に項立てし、関係者別によく遭遇する場面ごとに内容をまとめ、分
かりやすく解説していただいた。
感染管理の質が向上することによって在宅医療、訪問介護医療での感染が少しで
も減少することを期待してやまない。
2018 年4 月
国際医療福祉大学 〆谷 直人