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ラリンジアルマスク



B5判・218頁
定価2900円
ISBN4-7719-0140-6

【書籍名】ラリンジアルマスク
【品番コード】00140
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1988年の秋だったと思う。英国のJohn Nunn教授からだといってある業者の方がみえた。ラリンジアルマスク(LM)を僕に紹介し使ってみてもらうように依頼されたという。LMチューブと使用法を解説したビデオが一緒に添えてあった。Nunn教授は麻酔領域における呼吸生理学の世界的権威である。勤勉で常に向学心に燃え,学問に厳しいNunn教授はあまりこのような宣伝めいたことをする人ではない。その彼が,斬新なアイデアによる画期的な気道確保の手段と絶賛しているのである。早速,患者に使ってみた。はじめの数人にはうまくいかなかったが,その後は実に簡単に挿入できるようになった。確かに彼の言うように,容易でしかも侵襲の少ない方法で,僕もこのLMがすっかり気に入ってしまった。

数カ月後,LMの創始者Dr. Brainが来日された。僕の病院に来てもらい,LM作成の経過を聞き,また実際の使用法を見せてもらい,LMに対する僕の関心はますます強くなった。しかし教室員はあまり関心を示さなかった。気管内挿管に比べると,なんとなく頼りないと思ったのかもしれない。ただ東北労災病院の安田勇君は強い関心を示した。結局,彼と症例を集めそれを新しい気道確保の一法として雑誌『麻酔』に発表した。1989年のことである。

1990年12月,若手の指導医10人と共にロンドンを中心に,英国の臨床麻酔の実情とLMの使用状況を視察する研修旅行に出掛けた。本書の執筆者,岩崎寛(札幌医大),安田勇(東北労災),安本和正(昭和大),滝口守(東海大),川添太郎(埼玉医大),近藤陽一(国立小児),福留武朗(九州厚生年金)の諸氏はいずれもその時の仲間である。この研修旅行は大変に学ぶことの多い貴重な経験だった。とくに英国ではminimal invasive(できるだけ侵襲の少ない)麻酔に心がけているのを強く感じたが,LMが生まれてきた背景がよくわかるように思われる。

LMは今や本邦でも広く使用されるようになった。使用法の容易さ,侵襲の少なさ,挿入困難時の有用性などが普及の主な理由だろう。ただLMは,熱心な愛好者がいる反面,まったく見向きもしない人達がいることも確かである。考え方の違いで仕方がない。しかし臨床の現場では,麻酔科医の持っている武器はなるべく多いほうがよい。全身麻酔はすべて気管内挿管というより,症例に応じてはLMを使うほうが,より合理的な麻酔管理ができるはずである。ただLMは気管内挿菅という気道確保のgold standardに代わりうるものではない。したがって,その正しい使用法と適用を十分に理解してから用いるべきである。

本書の執筆者はいずれも知識,経験ともに十分なLMのエキスパートである。本書によってLMの正しい使用法と適応,さらにはその応用を一人でも多くの医師,医療従事者が学んで下さることを願っている。

1993年11月 東京お茶の水にて 天羽敬祐

目次

1.ラリンジアルマスク総論 天羽敬祐 1

はじめに 1
1.ラリンジアルマスクの構造 1
2.一般的な特徴 2

1)救急蘇生時の気道確保 
2)挿管困難症への応用 
3)気管支ファイバースコープへの応用 
4)気管内挿管をできるだけ避けたい場合

3.合併症 5

1)LMAによる気道閉塞 
2)誤嚥 
3)挿入時の循環系への影響 
4)咽喉頭部の損傷

4.今後の展望 7 おわりに 7

2.ラリンジアルマスクの挿入手技 福留武朗 10

はじめに 10
1.ラリンジアルマスクの挿入 10

1)ラリンジアルマスク挿入の準備 
2)挿入時の体位 
3)挿入方法

2.挿入時に生じる合併症 21

1)気道閉塞 
2)マスクのリーク 
3)その他

3.その他の挿入方法,挿入補助具 23
付)マスク基部を“押し付ける”ことについて 23

3.ラリンジアルマスクの全身麻酔への応用 26

A.開腹手術 宮尾秀樹ほか 26

はじめに 26
1.適応 26
2.方法 27
3.合併症 30

B.整形外科 岩崎 寛 32

1.整形外科の特徴 32
2.ラリンジアルマスクの臨床応用の実際 32

1)鎖骨,肩甲骨および上肢の手術 
2)股関節および下肢の手術 
3)脊椎および脊髄の手術 
4)多発外傷を合併する整形外科手術 
5)小児に対する各種検査

3.整形外科領域におけるラリンジアルマスクの有用性 41

C.頭頸部手術 滝口 守 42

1.総論 42

1)麻酔科医と術者の位置関係 
2)手術野の範囲 
3)患者の顔の向き 
4)術中の首の位置の変更 
5)自発呼吸か,調節呼吸か 
6)術後の呼吸管理の必要性 
7)術者の理解 
8)緊急手術

2.各論 44

1)脳外科 
2)眼科 
3)耳鼻咽喉科 
4)形成外科 
5)整形外科 
6)歯科,口腔外科 
7)検査の麻酔 
8)外科

おわりに 51

D.挿管困難症例への応用 安本 和正 52

1.LMと気管内挿管により得られる気道確保の違い 53

1)気道確保時 
2)気道確保状況

2.LMと気管内チューブによる気道確保 55
3.気管支ファイバースコープ単独による気管内挿管法 55
4.LMと気管支ファイバースコープ併用法 56

1)実施法 
2)LM併用法における問題点

E.気管支ファイバースコピーへの応用 安田 勇 62

1.ラリンジアルマスクを用いた気管支ファイバースコピーの実際 62

1)対象 
2)前投薬 
3)麻酔法

2.ラリンジアルマスクを用いた気管支ファイバースコピーの換気への影響 65

1)動脈血酸素飽和度(Sao2)の変化 
2)換気量の変化

3.ラリンジアルマスクと気管支ファイバースコープの太さとの関係 67
4.ICUにおける気管支ファイバースコピーへの応用 68
5.小児の気管支ファイバースコピーへの応用 68
おわりに 70

F.小児における使用 宮坂勝之ほか 71

はじめに 71
1.小児麻酔でのラリンジアルマスクの利点 71
2.ラリンジアルマスクの適応と禁忌 71
3.ラリンジアルマスクの選択のサイズ,挿入長 72
4.セボフルレン麻酔でのラリンジアルマスクの挿入法 73
5.ラリンジアルマスクの挿入位置が適正かどうかの判定 74
6.麻酔の維持 74
7.ラリンジアルマスク抜去のタイミング 75
8.トラブルシューティング 76

1)ラリンジアルマスク挿入時に咳き込む。 
2)何度も挿入に失敗する。 
3)挿入直後換気しても,あまり胸が上がらない。自発呼吸努力はあるが呼吸が入らない。 
4)胸は上がるがリーク音も強い。 
5)腹部が膨満した。 
6)順調だったが手術中に咳き込んだり息こらえをするようになった。 
7)抜去したラリンジアルマスクに血液が付着している。

9.気管内挿管とラリンジアルマスクの優劣 77
10.今後の展望(救急医療への応用) 77

4.ラリンジアルマスクの救急領域での適応と手技 杉山 貢ほか 79

1.プレホスピタルケアと救命率 79
2.救急救命士法 80

1)救急救命士の行う応急処置 
2)高度救命処置を行う条件 
3)心肺機能停止状態の判定基準 
4)医師の具体的な指示 
5)救急救命活動(救急救命士活動状況と気道確保)

3.緊急気道確保とラリンジアルマスクの適応と手技 82

1)適応症例について 
2)挿入前の注意点 
3)挿入法 
4)挿入時の注意点 
5)挿入の確認 
6)ラリンジアルマスクの固定 
7)心マサージと人工呼吸 
8)トラブル対策 
9)血液ガス分析からみた効果

4.救急救命士による使用経験と感想と工夫 88

1)救急指令 
2)現場観察

おわりに 90

5.ラリンジアルマスクによる新しい麻酔法の展開 岡崎久恒 92

はじめに 92
1.ラリンジアルマスクと英国式麻酔法 92
2.気管内挿管による気道損傷 93
3.ラリンジアルマスクと痰排泄 94
4.臨床例での比較 94
5.自発呼吸か人工呼吸か 95
6.自発呼吸の利点 96

1)生理的な呼吸法である。 
2)呼吸は重要なバイタルサインである。

7.自発呼吸とラリンジアルマスク 96
8.胃内容逆流について 97
おわりに 99
索引 101
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