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熱傷の治療

定価6000円
ISBN4-7719-0033-7

【書籍名】熱傷の治療
【品番コード】00033
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序文

わが国の熱傷治療水準は,欧米に比較して半世紀の遅れがある,というのが著者のかねてからの持論であるが,これは,わが国の現状にたいする評価というよりも,1日も早く熱傷の治療水準を欧米並みにレベルアップさせたい,という著者の願望の表現でもある。
幸いにして,近年,熱傷についての関心が高まり,医学講習会や医学雑誌の特集などに熱傷がしばしば取り上げられるようになったことは大変に結構なことであるが,これらの内容のほとんどが局所治療と全身治療に大別され,それぞれがまったく別個に独立して述べられる傾向があり,熱傷専門医にとっては有益であっても,初心者にとっては,熱傷という特異な外傷の治療を理解するうえで,必ずしも役立っていない嫌いがある。

いうまでもなく熱傷のあらゆる病態は,局所の熱傷創によって発症するもので,熱傷の治療にあたっては,局所の治癒なくして全身状態の改善はなく,全身状態を無視した局所治療はありえないこと,すなわち,全身治療と局所治療は不離一体のものであることを,まず認識してかからなければならない。

以上の観点から,熱傷患者に接したとき,これを扱う上での手順や全身治療と局所治療とのかねあい,熱傷治療に必要な基本的手技と知識など,熱傷治療の入門書として企画したのがこの小冊子であるが,本書は著者が過去20年間に発表してきた熱傷に関する大小50篇の論文を,上述した内容に沿ってまとめたものに1,2の新しい項目を追加したものである。

第I章の「熱傷の診断」では熱傷治療における基本的な事項について述べ,次の第II章では実際に患者に接したとき,熱傷をどのように分類し,それぞれの症例をもつ病態に応じて,いかにして適切な治療方針を決定すべきかについて述べた。

すなわち,本書を実際的な熱傷治療の手引として利用する場合は,第I章と第II章が基盤となり,第III章以下の各項目は,第II章で決定された治療方針に沿って,必要に応じて採用すべき手技や知識についてふれたものである。

また,本書では文中の各所(参照箇所)を挿入したが,これは記述の重複を避けて省略したためで,けっして重要度の軽重によって省略したものではない。したがって,参照項目は是非必読して頂きたい。

日進月歩の熱傷学の進歩に即応して,今後,本書の内容も追加や改定を行ない,学会の進歩に遅れない書物として育てて行きたいと考えている。

なお,巻末の参考文献に著者論文が多いのは,本書が主として著者論文の再編集によって成っているためである。
昭和57年7月
難波 雄哉

目次

I.熱傷の診断

1.チェックポイント

1)熱傷面積の測定
2)熱傷深度の判定
3)受傷部位
4)発生機転
5)合併症の有無
6)患者の年齢
7)患者の既往症と現疾患

2.検査事項

1)体重の測定
2)血液による諸検査
3)尿量測定と尿所見
4)血圧,脈拍,呼吸数
5)胸部,腹部の観察とレ線像
6)鼻孔,咽頭の検査
7)四肢末端の知覚,血行状態の観察

3.熱傷の重症度

1)受傷面積からみた重症度
2)Burn index
3)患者の条件を考慮した重症度
4)受傷部位からみた重症度
5)Artzによる重症度の分類

II.救急時における処置と治療方針の決定

1.20%体表面積(小児,高齢者では10%)以上の広範囲熱傷(II度またはIII度)の場合

1)輸液
2)輸液路の確保
3)気道の確保
4)留置カテーテル
5)患者の精神的安定を図る
6)局所処置
7)感染症対策

2.20%体表面積以下の熱傷の場合

1)冷却
2)洗浄(cleansing)
3)病態に応じた局所処置

3.特殊領域の熱傷と気道損傷

III.熱傷ショックと輸液

1.ショックの病態と輸液

2.ショック期における輸液

1)Evansの公式
2)Brookの公式
3)Baxterの公式
4)H.L.S.輸液

3.ショック離脱期の輸液

4.輸液の指標となる所見

1)尿量と尿所見
2)Ht,Hb
3)血清,尿におけるNa値
4)血清蛋白量
5)中心静脈圧(C.V.P)
6)血圧,脈拍
7)熱傷の深度
8)小児17
9)循環障害に関連した症状

IV.熱傷と内臓器障害

1.内臓器障害の成立

2.内臓器障害と対策

1)呼吸器障害
2)腎臓障害
3)消化器系の障害
4)その他の臓器障害

V.気道損傷(気道熱傷)

1.気道損傷の診断

2.治療

VI.局所治療における基本的な処置と手技

1.熱傷の広さに応じた対応

2.熱傷の深度別にみた基本的局所処置

1)I度熱傷の局所処置
2)II度熱傷の基本的局所処置
3)III度熱傷の基本的局所処置

3.開放療法

1)適用対象
2)開放療法の処置
3)開放療法の利点と問題点

4.閉鎖包帯法の手技

1)適用対象
2)閉鎖包帯法の手技
3)圧迫包帯の臨床効果
4)Dressing材料と軟膏ガーゼの作り方

VII.焼痂切除術

1.Tangential excision

1)定義
2)熱傷における皮膚変化とtangential excisionの理想的根拠
3)手術時期
4)適用対象
5)手術手技

2.Early excision

1)定義
2)手術時期
3)対象部位
4)Early excisionと植皮

3.Debridement(デブリードマン)

1)定義
2)手技

4.下肢切断

1)切断術の適応
2)切断部位

VIII.熱傷の植皮

1.熱傷創にたいする植皮の適応

2.植皮の時期

3.熱傷創における植皮の条件

4.Patch graftの手技と適応

1)植皮母床の整備
2)移植皮膚の採皮とdonor
3)移植の手技
4)植皮片の固定
5)植皮後の管理
6)Patch graftの利点と欠点

5.植皮後の管理

IX.Biological dressing

1.Biological dressingの歴史と定義

2.Biological dressingの種類

1)L.P.S(lyophilized porcine skin)
2)L.D.P.S(lyophilized dermal porcine skin)

3.Biological dressingの適用

4.Biological dressingの臨床効果

1)不感蒸泄の抑制,体液漏出の防止
2)鎮痛効果
3)抗菌作用
4)表皮形成の促進効果
5)炎症反応の抑制
6)Debridementの効果
7)熱傷深度の進行防止効果
8)肉芽形成にたいする効果
9)創の一時的閉鎖としての利用
10)管理上の便宜

5.副作用

6.Biological dressingの作用機転

X.同種植皮

1.Allograftの採皮と植皮

2.Allograftの免疫

3.Allograftの臨床効果

1)広範囲熱傷にたいする全身状態の改善効果
2)鎮痛効果
3)感染の予防と治療
4)一時的な創閉鎖としての利用
5)表皮形成の促進効果について

4.Allograftの利点と欠点(biological dressingとの相違点)

XI.熱傷と感染症

1.熱傷における感染症の特異性

2.感染経路

1)創面よりの感染
2)尿路よりの感染
3)輸液路よりの感染
4)気道よりの感染

3.感染菌

4.感染対策

1)感染対策の立案
2)新鮮時の感染対策
3)外用抗菌薬

XII.Skeletal suspensionの手技と適応

1.Skeletal suspensionの手技

1)鋼線の刺入部位
2)鋼線の刺入
3)Suspensionの期間
4)Suspensionによる肢位
5)年齢
6)患者の管理

2.Skeletal suspensionの利点

1)開放療法の適用範囲の拡大
2)皮膚移植における利点
3)管理上の利点
4)浮腫やうっ血の防止
5)関節硬直や瘢痕収縮の予防

3.合併症

1)鋼線刺入部の感染
2)鋼線刺入部の骨変化
3)末梢神経損傷
4)脳浮腫,肺浮腫
5)循環障害
6)高齢者の管理
7)熱消失
8)褥瘡

XIII.特殊領域の熱傷

1.顔面熱傷

1)顔面熱傷の特異点
2)救急時の処置
3)局所処置

2.手の熱傷

1)手の熱傷の特異点
2)救急処置
3)局所処置

3.会陰部熱傷

1)肛門周囲の熱傷
2)外性器の熱傷

4.関節部の熱傷

XIV.小児熱傷の特異点

1.小児の精神的・肉体的特徴と熱傷

1)生理学的特質
2)解剖学的特質
3)能力的特質
4)精神的・心理的特質

2.治療面からみた特異点

1)輸液
2)局所処置

XV.特異な機転による接触熱傷

1.接触熱傷

2.湯たんぽによる接触熱傷

3.圧迫や圧挫創を伴う熱傷(圧迫熱傷,圧挫熱傷)

XVI.化学熱傷(化学損傷)

1.化学熱傷の特徴

2.化学物質と症状

1)酸類による化学熱傷
2)アルカリ類による化学熱傷
3)重金属塩によるもの

3.治療

XVII.電撃傷

1.電撃傷の発生と病態

1)電撃傷の定義
2)電撃傷の発生
3)電撃傷の重症度に関与する因子

2.電撃傷の症状

1)全身症状
2)局所症状
3)末梢神経の症状

3.電撃傷の治療

1)救急時の処置
2)全身的治療
3)局所的治療

4.合併症

5.予防

XVIII.熱傷と栄養

1.熱傷と栄養障害

2.経口的栄養補給

3.経静脈栄養

XIX.熱傷後遺症とその対策

1.瘢痕(肥厚性瘢痕,ケロイド)の予防

1)瘢痕(肥厚性瘢痕,ケロイド)の発生
2)瘢痕の予防

2.瘢痕拘縮の予防と対策

1)瘢痕拘縮の発生
2)瘢痕拘縮の予防

3.関節硬直の予防

1)関節の機能肢位
2)関節の運動
3)植皮

参考文献

索引

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