新鮮外傷の処理
総論
I.創傷治療のメカニズム 森口隆彦 3
A.再生と修復 3
B.一次治癒と二次治癒 3
C.正常皮膚の結合組織成分 4
D.創傷治癒過程の概略 4
1.第一期 5
2.第二期 5
3.第三期 7
E.創傷治癒に影響を及ぼす因子 15
1.体質的因子 15
2.全身的因子 15
3.局所的因子 16
II.新鮮外傷の救命処置 森口隆彦 18
A.気道確保 18
1.気管切開術 19
2.気管切開後の治療 20
B.血管確保 20
C.ショックの診断と治療 20
D.止血 21 E.導尿 21
F.鎮痛 22
G.感染予防 22
III.新鮮外傷の診断 浜中孝臣 23
A.外傷の種類 23
1.損傷とその種類 23
2.創傷とその種類 23
3.深部器官の損傷 28
B.診断手順
1.止血 33
2.全身状態の把握 33
3.問診 33
4.X線撮影 33
5.局所検査 33
6.その他 33
IV.新鮮外傷の麻酔 最所裕司 35
A.術前準備 35
1.外傷の程度の診断 35
2.問診 35
3.術前検査 35
B.麻酔法の選択 36
1.麻酔の種類 36
2.説明と承諾 36
C.局所麻酔について 36
1.局所麻酔剤の種類と特徴 36
2.緊急手術の局所麻酔の注意点 37
3.局所麻酔の実際 37
V.新鮮外傷の局所処置 森口隆彦,光嶋 勲 41
A.初期創傷処置 41
1.麻酔 41
2.創の浄化 41
3.止血 42
4.デブリードマン 42
5.創の閉鎖 43
6.真皮縫合および皮膚縫合 43
B.外傷の種類による治療方針 46
1.切創 46
2.擦過創 46
3.挫創傷 48
4.裂創 48
5.刺創 49
C.組織の欠損が見られる場合 49
D.外傷とマイクロサージャリー 49
VI.汚染創,感染創の処置 井上普文 52
A.創感染の成立とゴールデンアワー 52
B.症状 52
C.創感染に関する因子 52
D.創感染の起因菌 52
E.創処置 52
1.清浄化 53
2.抗生物質,化学療法剤の使用 53
3.嫌気性菌の感染 53
F.咬創 55
1.ヒト咬創 55
2.動物による咬創 55
3.治療 55
4.毒蛇咬創 56
VII.術後処置 岡 博昭 57
A.ドレッシング,固定 57
1.縫合創に対するドレッシング,固定 57
2.非縫合創に対するドレッシング,固定 58
3.抜糸後の処置について 59
B.肥厚性瘢痕とその予防 61
1.本態と分類 61
2.創傷の性状と肥厚性瘢痕62
3.肥厚性瘢痕の予防 64
C.瘢痕拘縮とその予防 65
1.創収縮に関与する因子 65
2.拘縮の予防 67
VIII.外傷後瘢痕の修正 岡 博昭 69
A.修正時期の目安 69
B.代表的な外傷後瘢痕の修正方法 69
1.削皮術 69
2.単純縫縮術と分割切除術 70
3.Z形成術 71
4.W形成術 74
5.皮弁を用いた修復法 75
6.遊離植皮術 77
各論
I.顔面,頭部軟部組織の外傷 81
A.顔面外傷一般 最所裕司 81
1.原因 81
2.年齢 81
3.診断の手順 82
4.処置 88
B.頭皮 長所裕司 94
1.解剖 94
2.診断 97
3.処置 99
4.脱毛瘢痕 100
C.眼瞼部 森口隆彦 101
1.外傷処置時の注意点 101
2.解剖 101
3.涙道の機能 103
4.眼球の損傷 103
5.眼瞼の損傷 104
6.涙小管断裂 107
D.耳介部 河村 進 110
1.解剖 110
2.診断 112
3.処置 112
E.鼻部 河村 進 119
1.解剖 119
2.診断 120
3.処置 120
F.頬部 河村 進 124
1.解剖 124
2.診断 126
3.処置 126
G.口唇,口腔,下顎部 最所裕司 130
1.解剖 131
2.診断 131
II.頸部,躯幹の外傷 井上普文 141
A.頸部 141
1.診断 142
2.治療 142
B.躯幹 144
1.胸部損傷 144
2.腹部損傷 146
III.四肢の外傷 浜中孝臣 148
A.四肢の解剖 148
1.上腕の解剖 148
2.前腕の解剖 149
3.大腿の解剖 150
4.下腿の解剖 151
B.四肢外傷の診断と前処置 152
1.四肢損傷初期治療の手順 152
2.開放性深部器官損傷の診断 154
C.四肢外傷の治療 156
1.上肢のブロック手技 156
2.軟部組織単独損傷に対する治療 165
3.開放性深部器官損傷に対する治療 167
4.剥脱創,挫滅創の治療 175
5.切断例に対する再接着術 176
索引 179
近年増加してきた交通事故により,外傷を負う機会が多くなってきた。新鮮外傷は全身に生ずるものであるが,とくに露出部位である顔面を受傷する頻度が高い。顔面は日常生活を営む上においても重要な役割を果たしており,この部の外観上の醜形や機能障害は,患者にとり大きなハンディキャップとなり,社会生活を営む上で精神的苦痛を伴うものと思われる。
創傷処置にあたり重要なことは,初期治療の適否によりその予後が決定されるということである。とくに顔面においては,深部の組織(耳下腺,顔面神経,顔面骨,眼球など)の機能障害に対しても注意を払う必要があるし,また組織量が限られているため,当初の不適切な処置で後の治療が困難になるという症例もよく見られる。
それゆえ,新鮮外傷に対しては,顔面や体幹の解剖や機能を熟知するとともに,組織の取り扱いや基本手技などの形成外科の原則をよく理解した上で対処することが望まれる。
本書では,創傷の治癒過程や顔面の局所解剖といういわば総論的な部分と,新鮮外傷の実際の取り扱いという各論部分をもっており,医学生から第一線の医師に至るまで,多くの方々の参考になればと願っている。
おわりに,克誠堂出版株式会社・今井彰社長をはじめ,社員の皆様方に感謝するとともに,この本を故谷太三郎教授のご霊前に捧げる。
1991年8月20日
森口隆彦