鼻の修復と再建
序
I.鼻の修復と再建に必要な臨床解剖…伊沢宏和…1
1.外鼻の支持組織と軟部組織…1
A.外鼻の体表解剖/1
B.外鼻の大きさ/3
C.外鼻の支持組織/3
D.外鼻の軟部組織/5
E.外鼻の血管/6
F.外鼻の神経/6
G.外鼻のリンパ管/8
2.鼻腔および鼻中隔…9
A.鼻腔および鼻中隔の構成/9
B.鼻腔および鼻中隔の血管/9
C.鼻腔および鼻中隔の神経/10
II.外鼻の創傷処理およびcutaneous scarとその処置…鈴木 出,荻野洋一…12
A.創傷処理における注意/13
B.瘢痕に対する処理/14
III.外鼻へのskin grafting…岡崎正,森口隆彦…20
A.遊離植皮の適応/20
B.植皮片の採取部位/22
C.植皮の範囲/22
D.植皮片の固定/23
E.植皮術後の処置/23
IV.Composite graftの移植…黒住 望…24
A.Composite graftingについて/24
B.外鼻の組織欠損に対する複合組織移植/25
C.Composite free flap/26
D.症例/36
V.Skin flapによる鼻の修復と再建…29
A.外鼻の部分的欠損の修復と再建…29
1.鼻背および鼻尖…29
a.Bilobed flap…楠見 彰…29
A.手術手技/30
B.症例/32
C.作図にあたって考慮すべき点/33
b.Banner flap…稲川喜一,森口隆彦…35
A.歴史的背景/35
B.手術手技/36
c.Limberg flap…黒住 望…39
A.原理とデザイン/39
B.症例/42
d.Glabellar flapと外鼻皮弁との併用…黒住望,熊谷憲夫…43
A.外鼻と眉間の血行/43
B.皮弁の種類/44
e.Webster 30 degree transposition flap…伊沢宏和…50
A.手術手技/50
2.鼻翼…55
a.Z形成術とこれを応用した手術法…荻野洋一,楠見彰…55
A.Denonvillier法(1854)/55
B.鼻翼基部部分欠損例に対するZ形成術を応用した鼻翼の再建(荻野法)/60
b.Subcutaneous pedicle flap…日域 洋子,森口隆彦…63
A.歴史と適応/63
B.分類/64
C.手術手技/64
c.鼻唇溝部皮弁(nasolabial transposition flap)…酒井成身…68
A.歴史と適応/69
B.手術手技/69
d.鼻唇溝頬部皮弁(nasolabial cheek flap)…酒井成身…73
3.鼻柱…荻野洋一,二木 裕…76
A.歴史と適応/76
B.手術手技と症例/80
B.外鼻の広範な欠損・変形の修復と再建…91
1.Forehead flap…91
a.前額正中皮弁…荻野洋一,楠見彰…91
A.適応/91
B.手術手技/92
C.術後治療/98
D.症例/99
E.鼻腔の露出した症例における前額正中皮弁のliningの問題について/106
b.Forehead flap with tissue expander…酒井成身…108
A.Tissue expanderの構造/108
B.Tissue expander利用の適応と利点欠点/109
C.Tissue expanderを用いる手術の時期と再建方法/110
2.Scalping flap…熊谷憲夫・荻野洋一…116
A.外鼻の広さ/116
B.血行分布/117
C.特徴/117
D.手術手技/118
E.術後治療/124
F.症例/125
3.Retroauricular-tempora1 flap(Washio’s Hap)…黒住 望,酒井成身…139
A.適応/139
B.解剖/139
C.デザイン/139
D.手術手技/141
E.症例/142
4.筒状皮弁…奈良 卓…145
A.外鼻の発育成長と整容単位/145
B.全造鼻再建/145
C.作製上の注意/145
D.縫合と母床縫縮上の注意/146
E.固定と延長/147
F.血行試験/148
G.血行増強法/148
H.移行/148
I.全造鼻再建の症例/150
5.いくつかのflapの併用…津田邦義,森口隆彦…153
A.頬を含めた外鼻軟部組織欠損の再建/153
B.鼻腔が露出した外鼻組織欠損の再建/155
C.遠隔皮弁の併用/157
VI.鞍鼻…158
1.骨軟骨,その他の材料の移植…酒井成身…158
A.部位による症状/158
B.鼻背部への移植材料の歴史的背景/160
C.現在用いられている挿入物の採取・彫形/161
D.挿入物の移植法/168
2.Nasomaxillary skin graft inlay法…荻野洋一,相原正記…171
A.適応/171
B.手術手技/171
C.術後治療/173
D.術後の問題点/174
VIl.斜鼻…酒井成身…177
A.分類/177
B.鼻部骨切り術/178
C.種々の修正法/183
VIII.唇顎口蓋裂における外鼻,鼻腔の再建…荻野洋一,楠見彰…190
A.唇裂鼻における外鼻,鼻腔内の変形/190
B.手術時期/194
C.顎裂に対する自家海綿骨移植の問題/194
D.唇裂鼻の手術手技/195
E.症例/217
IX.外傷後外鼻孔狭窄…楠見彰…226
A.鼻前庭再建法/226
B.症例/227
C.術後管理/231
索引…233
外鼻は顔面の中央に位置しているため,各個人の顔貌を特長づける種々の要素の中でももっとも重要な役割を持っているものの1つである。
このことは種々の原因によって外鼻軟部組織あるいは支持組織が損傷を受け,外鼻に変形が生じた場合に,顔貌がまったく別人のように変わってしまうことがあるという事実をみても明らかである。
また,外鼻軟部組織にわずかな瘢痕があった場合でも,それを持つ人の精神的苦痛は決して少なくない。したがって形成外科医は,患者の訴えをよく理解する努力を借しんではならず,わずかな瘢痕ほど手術の際のデザインや手技に慎重でなければならない。
さらに,鼻の修復再建手術を行なう場合には,外鼻と顔貌全体との関係が,術前に比し調和のとれた状態にならなければ手術の目的を達したとはいえない。
すなわち「とってつけたような鼻」と表現される外鼻ができたのでは,患者にとって手術を受けたことが新たな精神的,肉体的苦痛を残すことになりかねない。
一方,鼻の修復再建外科では,形態的な変形の修復という点にのみ主眼をおくだけでなく,鼻腔および副鼻腔の形態と機能も留意した治療を行なうことが必要である。
術者は,手術に先立って瘢痕の状態,組織欠損の程度,これと周囲組織との関係をよく観察し,症状を忠実に記録するとともに,種々の角度から各症例のカラー 写真をとり,X線写真(単純写真,断層写真,CT写真など)とも比較検討し,手術計画を立てることが重要であると思う。
この書は,鼻の修復再建を初めて行なう方にも手術手技の基本を理解して頂けるよう配慮し,症例について用いた手術内容をできるだけ詳しく記述した心算である。
執筆項目は,移植する組織による違いの点からと疾患や症状の特有な問題のある場合とに分けた形をとった。取り上げるべき項目がなおまだあるが,症例数の非常に少ないまれな疾患は除いた。
なお,編集者や著者の気づかざる誤ちや不備な点があると思われるので,読者諸賢のご指摘を賜われば幸いである。