痛みの診療
要旨
本書は,痛みを多面的にとらえ,総合的な診療を行うことを目指したものである。今後の痛みの診療を発展させるため,疼痛理論について最新の知識を網羅した。また痛みについては包括的な議論はできないが,今回便宜上,急性痛と慢性痛とに分類して論じやすくした。
A.痛みの基礎
1.痛みの診療にあたっての心構え・柴田政彦/3
2.痛みの定義・ 柴田政彦/4
1.急性疼痛/4
2.慢性疼痛/4
3.痛みの基礎知識
a.はじめに・柴田政彦/6
b.痛みの発生機序
1)侵害刺激の受容機構・福岡哲男/7
1.侵害刺激の変換(transduction)/7
2.発痛物質/9
参考:カプサイシン(capsaicin) 内田一郎/11
2)痛覚伝導路・西村光弘,柴田政彦/12
1.一次ニューロン/12
2.脊髄後角ニューロン/12
3.脊髄上行路と視床/13
4.痛覚伝達を担う神経伝達物質/14
5.深部組織からの疼痛/15
6.関連痛/15
3)痛覚伝達の調節機構・福岡哲男/16
1.痛覚伝達の調節にかかわる脳の領域/16
2.痛みの調節にかかわる伝達物質/17
3.脳幹から脊髄への痛覚調節作用 /19
4)痛みの認知機構・小山哲男/22
1.痛みの知覚的側面と情動的側面/22
2.痛みの認知と大脳皮質/22
3.第一次体性感覚野/22
4.第二次体性感覚野/22
5.島/23
6.前帯状回/23
7.その他の領域/23
8.lateral pain systemとmedial pain system/23
5)Pathological painのメカニズム・三木健司,柴田政彦/25
1.侵害刺激に対する病的疼痛/25
2.痛覚過敏/25
3.中枢神経の感作現象/27
4.神経因性疼痛における中枢神経系の可塑的変化/27
5.病的疼痛の発生機序/28
6.中枢神経の可塑的変化における細胞内伝達機構/29
参考:疼痛とサイトカイン・阪上 学/34 c.痛みの心理反応
1)痛みに対する心理的反応・中尾和久/38
1.反応の3領域/38
2.精神面での反応/38
3.身体面での反応/39
4.行動面での反応/39
5.痛みへの反応の参照枠/39
2)Placeboによる鎮痛・小山哲男/42
1.Placeboによる鎮痛の効力/42
2.Placeboによる鎮痛のメカニズム/42
3.Placeboの臨床応用/43
B.痛みの臨床
1.痛みの診断,評価法・柴田政彦/47
1.急性疼痛/47
2.癌性疼痛/47
3.非癌性慢性痛/48
4.痛みを有する患者の診察/48
2.急性痛
a.急性痛の原因疾患と鎮痛法・西内辰也/52
はじめに/52
1.頭痛/52
2.胸痛/53
3.腹痛/55
b.術後痛・竹田 清/58
1.術後痛とは/58
2.術後痛の影響/58
3.術後痛の修飾因子/58
4.術後鎮痛の要点/59
5.術後鎮痛の実際/60
6.硬膜外鎮痛法と副作用/62
7.術後鎮痛と早期離床/64
3.慢性疼痛
a.慢性疼痛の概念・真下 節,福井弥己郎,柴田政彦/66
1.慢性疼痛とは/66
b.慢性疼痛に関するトピックス・真下 節,福井弥己郎,柴田政彦/68
1.sympathetically maintained pain(SMP)/68
2.先行鎮痛(preemptive analgesia)/68
3.Loeserの痛みの多層性モデル/68
4.疼痛障害/69
c.慢性疼痛の精神的・社会的側面・真下 節,福井弥己郎/71
1.慢性疼痛の精神的・心理的側面/71
2.慢性疼痛の心理社会的発症機序/71
3.慢性疼痛と社会/71
d.慢性疼痛疾患・真下 節,福井弥己郎/73
1.神経因性疼痛/73
2.心因性疼痛(psychological pain)/73
3.慢性痛の対処法/74
4.慢性疼痛の診断と治療
a.筋骨格系疼痛
1)頚部痛:整形外科医の立場から・岩崎幹季/75
1.診察のポイント/76
2.診断のポイント/76
3.診断手順/77
4.画像診断のポイント/80
5.治療原則/82
6.椎間板ヘルニアの退縮(regression)について/83
2)頚部痛:ペインクリニックの立場から・内田貴久/85
1.診断の方針/85
2.ペインクリニック診察上最低限必要な診察/85
3.頚部痛の代表的原因疾患/88
4.他科に紹介する疾患または時期/91
3)腰下肢痛:整形外科医の立場から・岩崎幹季/92
1.診察のポイント/92
2.診断のポイント/92
3.診断手順/92
4.画像診断のポイント/95
5.治療原則/98
6.手術療法/99
7.椎間板ヘルニアの退縮(regression)について/101
4)腰下肢痛:ペインクリニックの立場から・内田貴久/102
1.診断・ブロック治療の方針/102
2.ペインクリニック診察上最低限必要な診察/102
3.ブロック/107
4.代表的疾患と治療(ペインクリニック的保存療法)/107
5.他科に紹介する疾患または時期/109
5)肩の痛み・菅本一臣,春名優樹/111
はじめに/111
1.肩の疼痛性疾患の分類と特徴/111
2.診断/112
3.代表的疾患のポイント/114
b.頭痛・顔面痛
1)頭痛・川口 哲/119
1.機能性頭痛/119
2.症候性頭痛/122
2)顔面痛・真下 節/124
1.三叉神経痛(trigeminal neuralgia)/124
2.舌咽神経痛(glossopharyngeal neuralgia)/127
3.迷走神経痛および上喉頭神経痛(vagal and superior laryngeal neuralgia)/128
4.非定型顔面痛(atypical facial neuralgia)/128
5.Tolosa-Hunt症候群/130
c.自律神経の関与した難治性疼痛(complex regional pain syndrome : CRPS)・柴田政彦/131
1.CRPS type I/131
2.CRPS type II(カウザルギー)/134
d.求心路遮断性疼痛
1)末梢神経損傷後疼痛・柴田政彦/136
1.共通の症状/136
2.痛みの特徴/136
3.他覚症状/136
4.心理的因子/137
5.活動状況/137
6.原因/137
7.機序/137
8.帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛/138
9.糖尿病性ニューロパシー/140
10.末梢神経損傷後疼痛の治療/140
2)幻肢痛・柴田政彦/143
1.定義/143
2.症状/143
3.経過/143
4.痛みに影響する因子/143
5.断端部痛(stump pain)/143
6.幻肢感覚/143
7.精神心理学的側面/144
8.発生機序/144
9.治療/145
10.予防/145
3)中枢神経系の障害による痛み(central pain)・柴田政彦/147
1.定義/147
2.視床痛/147
3.脊髄損傷後の疼痛/147
4.症状/147
5.障害部位/147 6.発生頻度/147
7.神経学的所見/148
8.検査所見/148
9.診断/148
10.病態/148
11.治療/149
e.血流障害による痛み : peripheral vascular disease(PVD)・福井弥己郎/150
1.症状と診断/150
2.ASO,TAOの治療/150
5.癌性疼痛・西嶌昌子,三嶋恭子,井上俊彦,出水 明,橋本典夫/153
a.緩和医療 153
はじめに/153
1.日本の緩和医療の現状/153
2.緩和医療の定義/153
3.緩和医療における痛みの治療/154
おわりに/155
b.薬物療法,WHO指針 156
1.鎮痛薬療法の原則/156
2.鎮痛薬の種類と投与の実際/156
c.神経ブロック療法 162
はじめに/162
1.癌性疼痛における神経ブロック療法の意義/162
2.神経ブロックを決定する際の留意点/162
3.神経ブロック療法の適応/163
おわりに/164
d.放射線療法 166
はじめに/166
1.骨転移の機序/166
2.転移性骨腫瘍の放射線治療/166
3.外部照射/166
4.半身照射/168
5.四肢骨転移の外科療法の術後照射/168
6.アイソトープ療法/168
おわりに/169
e.在宅医療 171
1.在宅医療の定義とその対象患者/171
2.癌患者の在宅医療/171
3.在宅での癌性疼痛管理/173
4.在宅ホスピスケアの現状と課題/174
6.心因性の疼痛・中尾和久/175
1.精神科疾患に伴う痛み/175
2.疼痛に伴う心因反応/180
7.痛みに対する薬物療法
a.総論・真下 節/182
1.急性痛と慢性痛に対する薬物療法/182
2.疼痛治療薬の投与法/182
3.これからの疼痛治療薬/183
b.非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs : NSAIDs)・竹山栄子/185
1.鎮痛作用機序/185
2.副作用/186
3.薬理動態/187
4.他剤との相互作用/187
c.麻薬性鎮痛薬・神保明依/188
はじめに/188
1.定義/188
2.オピオイドの分類/188
3.オピオイドの鎮痛機序/188
4.薬物動態/189
5.投与経路/190
6.副作用/191
7.オピオイドの効きにくい疼痛/193
8.麻薬性鎮痛薬の問題点:非癌性慢性疼痛患者への使用/193
d.抗痙攣薬,抗不整脈薬・橋本典夫/194
はじめに/194
1.鎮痛補助薬の選択/194
2.抗痙攣薬の種類と使用法/194
3.抗不整脈薬の種類と使用法/195
e.抗うつ薬・下荒神 武/198
1.抗うつ薬の種類と作用機序/198
2.抗うつ薬の鎮痛作用/199
3.抗うつ薬の副作用/200
4.抗うつ薬の選択と使い方/201
f.鎮静薬,トランキライザー・西村信哉/203
参考:ケタミン・西村光弘/206
参考:α2アゴニスト・谷口 洋,林 行雄/207
8.神経ブロック療法
a.総論・福井弥己郎,清水唯男,吉矢生人/208
はじめに/208
1.診断的神経ブロック(diagnostic block,prognostic block)/208
2.予防的神経ブロック(prophylactic block,preemptive analgesia)/209
3.治療的神経ブロック(therapeutic block)/209
4.神経ブロック療法に使用される薬剤と熱凝固法/210
5.神経ブロック療法の安全指針/211
b.硬膜外ブロック・後藤田弓子/215
1.解剖/215
2.適応/216
3.禁忌/216
4.手技/216
5.副作用/218
6.合併症/218
7.仙骨ブロック/219
c.硬膜外くも膜下オピオイド・後藤田弓子/221
1.オピオイドの作用機序/221
2.硬膜外投与,くも膜下投与の利点/221
3.くも膜下投与の欠点/221
4.オピオイドの選択と鎮痛効果/221
5.投与法/221
6.適応/222
7.副作用とその対策/223
d.交感神経ブロック・清水唯男,柴田政彦/224
1.解剖および機能/224
2.星状神経節ブロック(SGB:stellate ganglion block)/226
3.胸部交感神経節ブロック/228
4.胸腔鏡下交感神経遮断術/232
5.腹腔神経叢ブロック,内臓神経ブロック/233
6.下腸間膜動脈神経叢ブロック/235
7.上下腹神経叢ブロック/235
8.腰部交感神経節ブロック/238
9.腰部交感神経高周波熱凝固法/240
e.椎間関節ブロック・福井弥己郎/241
1.総論/241
2.頚椎椎間関節ブロック/241
3.胸椎椎間関節ブロック/244
4.腰椎椎間関節ブロック/244
f.選択的神経根ブロック・清水唯男/248
1.適応/248
2.頚部神経根ブロック/248
3.胸部神経根ブロック/249
4.腰部神経根ブロック/250
5.仙骨部神経根ブロック/250
g.椎間板ブロック・内田貴久/252
1.適応/252
2.使用薬剤および器具/252
3.頚部椎間板ブロック/252
4.腰部椎間板ブロック/253
5.胸部椎間板ブロック/255
h.三叉神経ブロック・川原玲子/256
1.三叉神経の解剖/256
2.三叉神経節ブロック/256
3.眼窩上神経ブロック/258
4.眼窩下神経ブロック/259
5.上顎神経ブロック/259
6.おとがい神経ブロック/260
7.下顎神経ブロック/260
i.末梢神経ブロック・川口正朋/262
1.腕神経叢ブロック/262
2.肋間神経ブロック/266
3.頚神経叢ブロック/267
j.くも膜下ブロック・内田貴久/269
1.解剖/269
2.適応/269
3.使用薬剤/269
4.体位(高比重液であるフェノールグリセリンを使用する場合)/270
5.刺入方法/271
6.合併症/271
k.局所静脈内ブロック・柴田政彦/273
1.適応となる痛み/273
2.適応部位/273
3.手技/273
4.副腎皮質ホルモン/273
5.局所麻酔薬/273
6.グアネチジン/273
7.レセルピン/273
8.ブレチリウム/274
9.虚血/274
10.非観血的関節受動術/274
参考:コルドトミー・真下 節/275
9.刺激による鎮痛法
a.刺激による鎮痛のメカニズム・小山哲男/277 b.経皮的末梢神経電気刺激(TENS : transcutaneous electrical nerve stimulation)・大城宜哲/278
1.背景/278
2.定義/278
3.作用機序/278
4.治療/279
c.脊髄硬膜外通電法(spinal cord stimulation)・大城宜哲,柴田政彦/280
はじめに/280
1.適応/280
2.手技/282
3.合併症/282
4.フォローアップ/282
5.効果判定の予測/283
6.効果に関する報告/283
7.基礎的研究/284
参考:大脳皮質運動野刺激法・齋藤洋一/286
10.手術療法
a.脳神経外科的除痛法・齋藤洋一/288
はじめに/288
1.三叉神経痛/288
2.舌咽神経痛/288
3.感覚上行路遮断術/288
4.視床下部後内側部破壊術/290
5.大脳破壊術/290
6.脊髄・脳刺激術/290
7.下垂体破壊術/291
8.オピオイド産生細胞の髄腔内移植/291
b.整形外科的除痛法・金澤敦則,米延策雄/292
1.脊椎疾患/292
2.対象となる疾患/292
3.手術療法/292
11.痛みと理学療法(リハビリテーション医療)・吉本陽二,柴田政彦/301
はじめに/301
1.痛みに対する理学療法/301
2.インフォームド・コンセント(informed consent)/301
3.評価/302
4.理学療法の実際/303
おわりに/309
12.心理学的療法
a.認知行動療法・松永美佳子/311
b.疼痛教室・松永美佳子/315
c.自律訓練法・松永美佳子/319
13.痛みの看護・藤田洋子,吉矢生人/324
はじめに/324
1.痛みのある患者の観察/324
2.痛みのある患者の看護/327
索引・331