麻酔のHow to 診断編

麻酔のHow to 診断編

編集 日本医科大学教授 小川 龍
ISBN 4-7719-0238-0
発行年 2001年
判型 B5
ページ数 244ページ
本体価格 6,000円(税抜き)
電子版 なし


1 麻酔前/1
全身状態の評価 医育…岩瀬 良範ほか/2
診療…岩間  裕/6
呼吸機能の評価 医育…謝  慶一ほか/10
診療…紅露 伸司ほか/14
循環機能の評価 医育…中井川 泰/16
診療…西野 京子ほか/20
代謝機能の評価 医育…古賀 和徳/22
診療…荒井 賢一/26
中枢神経の評価 医育…安宅 豊史ほか/28
診療…中山 英人/30
肝機能の評価 医育…内田 一郎/34
診療…阿部 洋士/36
腎機能の評価 医育…平林 由広/38
診療…小倉  信/40
末・神経・筋の評価 医育…中村  卓/44
診療…遠藤 正宏/46
気道確保困難度の評価 医育…関  一平/48
診療…赤澤  訓/50
2 麻酔中/55
循環系
心停止 医育…森本 裕二ほか/56
診療…柴  禄郎/58
不整脈 医育…金谷 憲明/60
診療…大西 佳彦/62
心機能低下 医育…稲垣 喜三ほか/64
診療…内田  整/68
循環血液量減少症 医育…飯島 毅彦/70
診療…阿部伊知郎/72
貧血 医育…金井 昭文/74
診療…瀬尾 勝弘/76
低血圧・高血圧 医育…諸岡 浩明/80
診療…北条美能留/82
心筋虚血 医育…高倉  康/84
診療…中川 雅史ほか/88
呼吸系
挿管困難症 医育…天笠 澄夫ほか/90
診療…野本 幸子/92
気管内挿管の失敗 医育…瀧浪 將典/94
診療…笠井 裕子/96
片肺換気 医育…奥富 俊之/98
診療…内山  睦/100
喉頭痙攣,気管支痙攣 医育…福山 東雄ほか/102
診療…長谷川和彦ほか/104
気胸 医育…西山 圭子ほか/108
診療…角谷 仁司/110
低酸素血症 医育…塩川 泰啓/112
診療…松井 一幸/116
高炭酸ガス血症 医育…内橋 慶隆/118
診療…蒲生 正裕/120
肺水腫 医育…山田 圭輔ほか/122
診療…高橋 麗子/124
チアノーゼ 医育…緑川由紀夫/126
診療…長島 義人/128
肺血栓塞栓症 医育…中村 信一ほか/130
診療…小林百合子/134
その他の臓器
血尿 医育…小口 健史/136
診療…内海  潤/138
乏尿・無尿 医育…笹尾 潤一/140
診療…坪田 信三/142
痙攣 医育…渋谷 伸子/144
診療…三島 誠悟/146
筋弛緩の程度 医育…伊藤 博徳ほか/148
診療…中野  忍/152
体温異常
(悪性高熱症) 医育…杉山 和英/154
診療…讃岐美智義/156
高血糖値 医育…加藤 孝澄/160
診療…中村 達弥/162
血液電解質・
酸塩基平衡異常 医育…上山 博史/164
診療…海老根美子/168
過敏性反応 医育…郡山 一明/170
診療…我妻 通明/172
3 回復室/175
覚醒遅延 医育…渡辺 和彦/176
診療…浅野 克則/178
遷延性呼吸抑制 医育…加藤  忠/180
診療…瀧  康則/182
低体温 医育…溝部 俊樹/184
診療…丸山  登/186
循環不全 医育…松本 早苗ほか/188
診療…嶋田  均/192
肺血栓・塞栓 医育…森 美也子/194
診療…猿木 信裕/196
4 術後病棟/199
呼吸合併症 医育…大島 正行/200
診療…原 真理子/202
循環不全(ショック) 医育…中西 一浩/206
診療…高須 昭彦/210
体液代謝異常・腎不全 医育…山田 達也/212
診療…長尾 博文/214
感染症 医育…坂井 哲博/216
診療…大森  惠/218
意識障害 医育…横山 正尚/220
診療…田口 雅一/222
術後痛 医育…高雄由美子/224
診療…内藤 嘉之/226
索引/228

麻酔の臨床は理論のみでは解決しない部分がある。今から30年前小生が麻酔科医となり数年が経った頃,某国立病院で一人 で麻酔していた。患者の既往・現症・検査成績などを聞くと,その患者を麻酔したときの「麻酔経過」が頭の中に“映し出される”ようにイメージされた。麻酔 を行うのに自信満々であった。

その頃50歳代後半の女性が子宮筋腫の手術を受ける事となった。手術前日患者を訪問したら,患者が今度手術を受けたら死ぬ予感がすると話した。小生は 「そんな筈はありません」と答えた。そして麻酔は硬膜外麻酔と全身麻酔の併用で行おうと麻酔計画を立てた。

翌日麻酔を実行したところ,手術開始36分後に心停止に陥り,蘇生に反応しなかった。市中病院の事でもあり,解剖は行わず心停止の原因も掴めなかった。

それ以降,いわゆる系統的な麻酔前診察の他に,「人相を見る」ことを始めた。現在でも麻酔をする患者は必ず顔を見ることに努めている。顔を見ると患者の 全身状態が把握でき,麻酔の危険度が掴める気がしている。「人相の見方」は学問的ではないので,How toは公開しないことにしている。

閑話休題。本書は麻酔のHow to第2部“麻酔科診断のHow to”である。第1部の序文に書いたように,麻酔科サービスの均質化のためには,個々の麻酔科医がもつ技術を公表していただくのが大きな目的である。一項 目について2名の方にHow toを披露願ったのは,何事についても個性があるから,2名のやり方を比較対照すると大変読者の参考になるからである。また執筆者は若い現場にいる方々と した。MEDLINE,医学中央雑誌などを閲覧して,適切な著者を選択させていただいた。突然のことで驚かれた方も多いと思われる。改めてお詫びする次第 である。

今後は第3部として,「麻酔科領域の処置・治療のHow to」を企画したいと考えている。今回も大変短い期間での執筆であったが,趣旨にご理解いただき短期間で原稿が頂戴できた。一編一編大変意力が感じられる原稿であった。

読者におかれましても,本書の内容に意見(さらに異見)があればどしどし指摘願いたい。執筆者と読者の論争は編集者が積極的に仲介したい。ディベートこそ編集者が最も望むところである。

筆を置くにあたり,執筆者全員に心からの謝意を表したい。

2001年秋
東京にて 小川 龍