薬剤による呼吸器障害
薬剤使用中はいつも呼吸器に注意を
薬剤使用中は呼吸器に注意を
一時、小柴胡湯による間質性肺炎で死亡例がでたと大きく報道され、漢方薬よ“お前もか”とマスコミで話題となったことは記憶に新しいことと思います。
呼吸器系の機能の一つはガス交換であり、ガス交換の効率を良くする為、毛細血管表面積は300m2にも達し血液量も血流も豊富です。また外界からの刺激 物が絶えず吸入されており組織傷害を来し易い環境にあります。その上、グルタチオン濃度の低下など肝臓と比較して毒性代謝物の非毒化相が低活性であるなど の局所環境から毒性物による組織傷害が起き易いとされています。更に肺には免疫機構が良く整備されており、過度の免疫反応による傷害のターゲットとなります。
以上の事を考えると肺は薬物有害反応を容易に来す臓器である事が理解できます。
薬物有害反応を考える時、まず目につき易い皮膚病変と一般検査でわかる肝機能障害は誰にでも診断がつき、容易に薬剤ではと考えつきますが、肺は咳嗽、労 作時呼吸困難、発熱などの症状がでない限り胸部X線は撮影しないと思います。また撮影したとしても写真の性状が悪いとか異常影が淡いスリガラス影だと見逃 されてしまいがちです。従って肺の薬物有害反応はある程度以上の重症度を持った症例だけを経験する事になります。
次々と新しい薬剤が開発され治療に貢献すると同時に新しい有害作用も増加してきております。最近話題となっているイレッサィやアラバィの急性肺障害・間質 性肺炎のように肺の薬物有害反応は致命的となることがあり、また重症低酸素血症の後遺症を残す可能性があるなど早くに気付く必要があります。
致命的である例は会社や厚労省の責任が問われることが一般的ですが、時に発見義務の責任が問われる例もあり早期に対処できるように最大の注意が必要であります。
いずれにしろ医療人として良かれと思ってした行為が、有害であることは残念ですが、その場合でも早期に見つけて対処して有害事象を最少限にして治癒させることが大事です。
薬剤使用中は、どの薬剤でも呼吸器への有害反応を起こしうると考えて、早く対応することが大切です。今まで、薬剤の呼吸器系の有害反応を総合的に記載し てレファランスとなる適当な本は本邦ではみられません。本書は実地に使い易いように、障害される部位別に記載されている部分、胸部画像から有害反応をきた した薬剤を記載した部分、頻用されている薬剤から病変を記載した部分と総合的レファランスとなるように工夫されております。
日常診療における座右の書となることを期待して本書を完成させました。
薬物有害反応の医原性事象がその後に苦しみを残さなくなることを願って本書を世に送り出します。
2005年3月
吉澤 靖之
1.薬剤によって引き起こされる呼吸器疾患 吉澤靖之
1.概念と分類 | 1 | |
2.病態生理 | 4 | |
3.病 理 | 6 |
2.薬剤誘起性呼吸器疾患の臨床
1 症状と本症を疑うポイント 大野彰二/杉幸比古 | 9 | |
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1.はじめに | 9 | |
2.薬剤誘起性呼吸器疾患のパターン | 10 | |
3.線維化性胞隔炎 | 11 | |
4.過敏性肺炎 | 11 | |
5.PIE症候群/好酸球性肺炎 | 12 | |
6.その他のパターン | 12 | |
7.診断のポイント | 13 | |
8.まとめ | 15 | |
2 診断:DLSTとチャレンジテストの意義 安井正英/藤村政樹 | 16 | |
1.DLSTの方法と技術的問題点 | 17 | |
2.DLSTとDPTの関連性 | 17 | |
3.DLST偽陽性による誤診の可能性 | 19 | |
4.DLSTの判定基準 | 19 | |
5.DPTの方法と判定基準 | 20 | |
(1)DPTの適応/20 (2)DPTの方法/20 (3)DPT判定における注意点/22 |
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6.おわりに | 22 | |
3 治 療 本間 栄 | 24 | |
1.はじめに | 24 | |
(1)治療,予後/24 (2)自験症例/25 |
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2.おわりに | 30 |
3.薬剤誘起性胸膜病変,気道病変,縦隔病変 吉村信行
1.はじめに | 31 | |
2.薬剤誘起性胸膜病変 | 31 | |
(1)薬剤誘発ループス/31 (2)間質性肺炎に伴うもの/32 (3)好酸球増多に伴うもの/33 (4)肺水腫/33 |
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3.気道病変 | 33 | |
(1)ACE阻害薬の副作用/33 (2)アスピリン喘息/33 (3)閉塞性気管支炎(constrictive bronchiolitis)/34 |
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4.縦隔病変 | 34 |
4.薬剤誘起性血管病変 石川博一/大塚盛男/関沢清久
1.はじめに | 37 | |
2.症 例 | 38 | |
3.薬剤誘起性ANCA関連血管炎 | 41 | |
(1)原因薬剤/41 (2)臨床所見/43 (3)診 断/43 (4)治療と予後/43 |
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4.薬剤誘起性肺水腫 | 44 | |
(1)血行動態性肺水腫/44 (2)透過性亢進性肺水腫/44 |
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5.薬剤誘起性肺高血圧症 | 46 | |
(1)原因薬剤/46 | ||
6.薬剤誘起性肺血栓塞栓症 | 48 | |
(1)原因薬剤/48 |
5.薬剤誘起性間質性肺炎:画像所見と主な薬剤
1 AIP/DADパターンを呈する薬剤誘起性間質性肺炎 水口正義/馬庭 厚/小橋陽一郎/田口善夫 |
51 | |
---|---|---|
1.はじめに | 51 | |
2.AIP/DADパターン | 51 | |
3.画像所見 | 51 | |
(1)胸部単純X線写真像/51 (2)胸部CT像/52 (3)鑑別診断/52 |
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4.AIP/DADパターンをとる薬剤 | 52 | |
(1)アミオダロン/52 (2)シクロホスファミド/53 (3)ゲフィチニブ/53 (4)ゲムシタビン/54 (5)メトトレキサート/56 |
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2 OPパターン, BOOPパターン 吉田耕一郎/松島敏春 | 59 | |
1.はじめに | 59 | |
2.発症機序 | 59 | |
3.発症頻度と原因薬剤 | 60 | |
4.画像所見 | 62 | |
5.症 例 | 62 | |
6.おわりに | 67 | |
3 NSIPを呈する薬剤誘起性肺炎 山口哲生/滝口恭男 | 68 | |
1.NSIP | 68 | |
2.薬剤誘起性肺炎 | 69 | |
(1)アミオダロン(アンカロンィ)/70 (2)メトトレキサート(メソトレキセートィ)/71 (3)D-ペニシラミン(メタルカプターゼィ)/72 (4)金製剤(シオゾールィ,リドーラィ)/72 (5)サラゾスルファピリジン(サラゾピリンィ)/72 |
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3.症 例 | 73 | |
(1)症例1/73 (2)症例2/74 (3)症例3/75 |
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4 UIPパターン 松島秀和/河端美則/金沢 実 | 78 | |
1.はじめに | 78 | |
2.UIPパターンを示した薬剤誘起性肺炎の組織所見―症例呈示― | 79 | |
3.UIPパターンを来す原因薬剤についての検討 | 79 | |
4.自験例における画像所見の検討 | 80 | |
5.UIPパターンの画像診断 | 80 | |
(1)ニトロフラントイン/81 (2)アミオダロン/81 |
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6.予 後 | 81 | |
7.まとめ | 81 | |
5 薬剤誘起性好酸球性肺炎 千田金吾 | 83 | |
1.はじめに | 83 | |
2.好酸球性肺炎の分類 | 83 | |
3.臨床所見 | 84 | |
4.画像所見と組織所見 | 86 | |
5.薬剤性過敏症症候群とHHV-6 | 88 | |
6.治 療 | 88 | |
7.おわりに | 88 |
6.使用頻度の高い薬剤による間質性肺炎
1 抗菌薬 臼井 裕 | 91 | |
---|---|---|
1.はじめに | 91 | |
2.薬剤誘起性肺疾患の分類,抗菌薬による免疫反応の分子病態 | 91 | |
3.X線画像所見とKL-6 | 93 | |
4.各薬剤における肺傷害 | 93 | |
(1)ペニシリン系/93 (2)セファロスポリン系/94 (3)テトラサイクリン系/94 (4)ニューマクロライド系/94 (5)ニューキノロン系/96 (6)本邦報告例/96 |
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5.症例提示 | 98 | |
(1)症例1/98 (2)症例2/99 (3)症例3/100 |
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6.おわりに | 101 | |
2 降圧薬と抗不整脈薬 鈴木栄一/斎藤泰晴 | 102 | |
1.循環器系薬剤による呼吸器障害の特徴 | 102 | |
2.循環器系薬剤による呼吸器障害と病態 | 102 | |
3.薬剤各論 | 104 | |
(1)レニン・アンジオテンシン系薬剤/104 (2)交感神経作動薬・遮断薬/106 (3)抗不整脈薬/107 (4)その他の薬剤/109 |
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4.おわりに | 110 | |
3 高脂血症 望月吉郎 | 112 | |
4 抗癌薬 稲瀬直彦/山下カンナ/吉沢靖之 | 116 | |
1.はじめに | 116 | |
2.間質性肺炎の原因となる抗癌薬 | 116 | |
3.各種抗癌薬による間質性肺炎 | 117 | |
(1)ゲムシタビン/117 (2)イリノテカン/117 (3)パクリタキセル/117 (4)ゲフィチニブ/118 (5)その他/118 |
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4.当科における経験 | 118 | |
(1)間質性肺炎の発症/118 (2)間質性肺炎の増悪/118 |
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5.症例呈示 | 121 | |
6.おわりに | 122 | |
5 解熱鎮痛薬 榎本達治/吾妻安良太 | 124 | |
1.はじめに | 124 | |
2.薬剤誘起性肺炎の被疑薬としての解熱鎮痛薬 | 125 | |
3.解熱鎮痛薬による薬剤誘起性肺炎の臨床像 | 126 | |
4.解熱鎮痛薬による薬剤誘起性肺炎の病理組織像 | 126 | |
5.薬剤誘起性肺炎の予後 | 127 | |
6.各解熱鎮痛薬について | 127 | |
(1)アセトアミノフェン/127 (2)スリンダク(クリノリルィ)/127 (3)ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニンィ)/127 (4)ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンィ)/127 |
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7.症例呈示 | 128 | |
(1)症例1/128 (2)症例2/130 |
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8.症例から学ぶこと | 132 | |
9.まとめ | 132 | |
6 糖尿病用薬 浜田直樹/桑野和善/中西洋一 | 133 | |
1.はじめに | 133 | |
2.頻 度 | 133 | |
3.機 序 | 134 | |
4.スルフォニル尿素薬 | 135 | |
5.ビグアナイド薬 | 136 | |
6.α-グルコシダーゼ阻害薬 | 136 | |
7.症 例 | 137 | |
8.おわりに | 138 | |
7 漢方薬による薬剤誘起性肺炎・肺障害 坂本 理/菅 守隆 | 140 | |
1.はじめに | 140 | |
2.原因薬剤となる漢方薬 | 140 | |
3.漢方薬による薬剤誘起性肺炎・肺障害の病態 | 140 | |
4.漢方薬による薬剤誘起性肺炎・肺障害の臨床像 | 142 | |
5.小柴胡湯による薬剤誘起性肺炎の臨床的特徴 | 143 | |
6.漢方薬による薬剤誘起性肺炎・肺障害の発症機序 | 143 | |
7.漢方薬による薬剤誘起性肺炎・肺障害の診断,治療,予防 | 146 | |
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