呼吸器疾患の運動療法と運動負荷テスト 改訂第2版

呼吸器疾患の運動療法と運動負荷テスト 改訂第2版

著者 谷本普一
ISBN 978-4-7719-0327-2
発行年 2007年
判型 B5
ページ数 270ページ
本体価格 6,000円(税抜き)
電子版 なし


本書の特徴は,
第一に運動療法と運動負荷試験との関連を明確にしていること。
第二に運動負荷試験の実際と適応,その生理学的意義を明らかにしていること。
第三は運動療法の処方,方法,進め方,適応基準などをすぐ役立つよう具体的に示していること。
第四は疾患別運動処方を症例を中心に分かりやすく示していることなどである。

改訂第2版序文より

呼吸器疾患の運動療法は労作時息切れをもつ患者に運動を行わせるという矛盾した要因を前提とるするので,健康な人の運動に準拠できない多くの問題が存在する。このような困難な命題を掲げて,1993 年に本書が出版された。精細な呼吸生理学と運動生理学を駆使し,実践の中で患者の苦痛を伴う肉体的条件を克服してまとめられた本書初版書は,以後14 年間呼吸器疾患の運動療法の発展に多くの寄与をなした。
本書の特徴は,初版の序に記した4 つの項目に,第五として運動療法における模範の評価の明確化を加えた。執筆者は初版時の多くの方々であり,初版以後の研究,実践が蓄積されており,また運動療法の新進気鋭の方々にも加わって頂いた。呼吸器疾患の運動療法の手引書として,本書が医療関係の方々に広く読まれ,それが呼吸器疾患に悩む患者の回復力を高め,良き人生を送るのに役立つことを心から希望する。

2007年7月
谷本普一

I.運動負荷試験
1.呼吸器疾患における運動負荷試験の意義/坪井永保

1)運動負荷試験の種類
2)自覚症状の尺度
3)運動負荷試験の適応
4)低酸素血症の診断
5)呼吸リハビリテーションにおける運動負荷試験
6)治療効果判定のための運動負荷試験

2.運動に対する呼吸および循環系の反応/飛田渉

1)運動時の呼吸応答
2)運動時の循環応答

3.運動負荷試験実施前のメディカルチェック/谷合哲・千田守

1)メディカルチェックの目的
2)メディカルチェックの実態
3)運動負荷試験の禁忌

4.運動負荷試験のためのガイドライン/山田規央・大平徹郎

1)運動負荷試験を実施する前に
2)運動負荷試験の実施
3)運動負荷試験が終了して
4)その他

5.運動制限を来たす呼吸器疾患の病態生理/谷本普一

1)呼吸不全とは
2)呼吸不全からみた運動制限を来たす疾患分類
3)運動制限を来たす主要な疾患の病態生理

6.運動負荷試験の方法/千住秀明・有薗信一

1)分類
2)身体資源の評価
3)作業成績からの方法
4)運動負荷試験の絶対禁忌と相対禁忌,運動中止基準

7.閉塞性肺疾患の運動負荷試験/平賀通・栗原直嗣

1)COPD における運動負荷試験の意義
2)運動負荷のend-point について
3)COPD の運動耐容能
4)運動中の換気反応の特徴
5)運動中のガス交換の特徴
6)運動中の心循環系の反応の特徴
7)COPD 患者の嫌気性代謝閾値

8.拘束性肺疾患の運動負荷検査/藤本繁夫・吉川貴仁

1)拘束性肺疾患とは
2)運動負荷試験の目的
3)運動負荷方法
4)運動時のチェックポイント
5)運動時の生理学的特徴
6)拘束性肺疾患の運動制限のメカニズム
7)拘束性肺疾患の運動対策

9.運動負荷試験のリスクファクターとその対応/黒澤一

1)運動負荷試験のリスク
2)適応と禁忌,ハイリスク患者
3)検査前のチェック事項および整備条項
4)運動中のチェック事項および中止基準
5)運動に関係した合併症の安全管理
6)歩行試験の安全管理

II.運動療法
1.運動処方の原則/赤柴恒人

1)一般的な運動処方の原則
2)肺疾患患者の運動処方
3)運動処方の実際

2.運動負荷試験の運動療法への応用/平賀通・栗原直嗣

1)運動療法における運動負荷試験による評価
2)最大運動能力の測定と運動療法
3)運動中の換気反応と運動療法
4)運動負荷試験による血中乳酸の動きと運動療法
5)運動負荷試験による酸素吸入効果の評価

3.呼吸器疾患における運動療法の適応基準/蝶名林直彦

1)適応病態
2)適応疾患
3)適応判定のための方法
4)運動療法の種類による適応

4.運動療法における酸素吸入の意義/宮本顕二

1)運動耐容能の改善とその機序
2)酸素吸入の急性効果
3)酸素吸入の慢性効果

5.運動療法の実施と効果判定/坪井永保

1)運動療法の効果判定
2)CDPD 患者に対する運動療法を含む総合的呼吸リハビリテーション
3)急性増悪頻度に関する効果
4)下肢の運動療法
5)上肢運動療法
6)運動療法に関する最新の知見

6.運動療法の方法論と筋力トレーニング
A .運動療法の準備と筋力トレーニング/千住秀明
1)運動療法の準備
2)筋力トレーニング
B .歩行/関川清一・千住秀明
1)運動強度の決め方
2)運動時間,頻度,期間,形態
3)運動の留意事項
4)在宅での歩行プログラム
C .腹式呼吸体操/谷本普一
1)腹式呼吸体操の意図および目的
2)基本方針
3)体操の内容
4)体操の評価
D .水泳/光延文裕・谷崎勝朗
1)水中運動の目的
2)水中運動による呼吸器系への影響
3)水中運動の適応症
4)水中運動の効果
5)水中運動の実際
E .トレッドミル検査/赤柴恒人
1)トレッドミルの臨床応用
2)症候限界性(symptom limit)多段階漸増法
3)呼吸器疾患患者のトレッドミル検査
4)トレッドミルによる運動療法
F .自転車エルゴメーター/吉川貴仁・藤本繁夫
1)自転車エルゴメーターの特徴
2)運動負荷試験の実際
3)運動負荷検査の実例
4)自転車エルゴメーターによる運動療法の実際
5)最近のエルゴメーター(ストレングスエルゴメーター)
G .呼吸筋訓練/蝶名林直彦
1)慢性呼吸不全の呼吸筋の特徴
2)呼吸筋力低下と疲労の臨床的指標
3)呼吸筋トレーニングの理論と原則
4)呼吸筋トレーニングの実施法
5)呼吸筋トレーニングの禁忌
7 .疾患別運動処方―症例を中心に―
A .肺気腫症/坪井永保
1)肺気腫症患者に対する運動療法を含む呼吸リハビリテーションの効果
2)肺気腫症における運動療法のエビデンス
3)運動療法の継続と急性増悪
B .気管支喘息/荒木速雄・西間三馨
1)EIA について
2)トレーニング療法
C .肺結核後遺症における運動負荷と運動療法/町田和子・川辺芳子
1)肺結核後遺症の病態生理
2)肺結核後遺症における運動負荷
3)肺結核後遺症における運動療法
D .肺線維症患者の運動処方/一和多俊男・長尾光修
1)運動療法の目的,適応と問題点
2)呼吸機能と呼吸筋トレーニング
3)運動時の呼吸循環系反応・動脈血液ガスの変動
4)運動処方に対する基本的考え方
5)運動処方
6)在宅で運動療法を施行した自験例
E .肺性心/立石善隆・平田一人
1)運動に伴う呼吸および循環動態の変化
2)症例提示
3)肺性心患者に対する運動処方の考え方
F .肺切除後の運動療法/岡田克典・近藤丘・藤村重文
1)肺切除後の運動療法・理学療法プロトコール
2)症例提示
G .睡眠呼吸障害を持つ肥満患者/陳和夫
1)肥満者運動の病態生理
2)肥満者の運動と減量
3)肥満とOSA
4)肥満と脂肪分布
5)症例