周術期の輸液
麻酔科専門医のために。
自分の行なっている輸液療法が正しいかどうかを考える拠り所となるように、各分野の第一線の麻酔科医がその考え方を呈示しています。
【基礎編】
1.輸液と循環血液量(飯島 毅彦)
“水・電解質の動き”の理論
1 生命活動と水/2 水の分布を決定するもの/
3 電解質の濃度による計算法(細胞内外の分布)/
4 浸透圧による輸液分布の考え方(スターリングの法則)/5 間質コンプライアンス/
6 実測による輸液の行方の追求/7 水の動きのシミュレーション/
8 内分泌による循環血液量の変動/9 変動する循環血液量
“水・電解質の動き”の実際
1 炎症と循環血液量/2 出血と輸液/3 liberalかrestrictiveか
2.周術期の水動態―シミュレーションによる分析―(多田羅恒雄)
体液動態シミュレーションで何が分かるか?
シミュレーションの実際
1 モデルの作成/2 輸液時の血漿量の経時変化―正常時―/3 出血時の輸液/
4 手術時の体液動態/5 手術後の体液動態
3.ブドウ糖初期分布容量(石原 弘規)
ブドウ糖初期分布容量(IDVG)とは
IDVGの基本的事項
1 分布容量の概念とIDVG/2 IDVGと糖代謝,細胞外液量との関係/
3 IDVG算出時の心拍出量の影響/4 IDVGの正常値/5 IDVGの再現性
IDVG測定法
1 1分画モデルを用いたIDVG測定/2 IDVGの簡易算出法/
3 血糖値によるIDVGの簡易算出法/4 IDVG算出時の注意点
IDVGを用いた体液管理
1 体液管理におけるIDVGの意義/2 IDVG測定結果に基づいた治療方針/
3 循環血液量過大評価の把握
実際のIDVG測定例
1 症例1/2 症例2/3 症例3
4.酸塩基平衡の考え方(森松 博史)
Stewart approach
3つのindependent variables
1 strong ion difference(SID)/2 total weak acid(ATOT)
重炭酸イオンの限界
アニオンギャップの限界
治療に与える影響
simplified Stewart approach
Stewart approachによる輸液の分類
5.アミノ酸輸液(溝部 俊樹)
アミノ酸の基礎知識
1 アミノ酸輸液の歴史/2 アミノ酸の種類/3 アミノ酸の代謝/4 分枝鎖アミノ酸(BCAA)
アミノ酸輸液
1 アミノ酸の配合比率による分類/2 濃度による分類/3 添加糖による分類/
4 特殊病態用製剤/5 アミノ酸輸液製剤の臨床的注意点
おわりに:体温とアミノ酸輸液
6.人工膠質液(大井 良之)
膠質の一般的性質
1 膠質液とは/2 人工膠質液に用いる膠質の性質/3 膠質液の性質
臨床的に用いられる人工膠質液
1 総論/2 各論
膠質に求められる医学的効果
1 血漿増量効果/2 血液流体力学的効果/3 血管内皮に与える効果/
4 抗凝固作用/5 抗炎症作用
人工膠質液の副作用
1 アレルギー/2 腎機能/3 掻痒感
人工膠質液と微小循環
1 少量出血の場合/2 大量出血の場合
7.カルシウムとマグネシウム(萬 知子)
Caについて
1 Caの体内分布と生理的代謝/2 モニタリング/3 病態生理/
4 周術期のCa2+異常/5 Caの補充
Mgについて
1 Mgの生理的作用/2 モニタリング/3 病態生理/4 周術期のMg異常/
5 Mgの補充/6 Ca2+とMg2+の相互作用
Column 1 熱傷と循環血液量(井上 健)
Column 2 炎症と循環血液量(石川 正志)
【臨床編】
1.敗血症と輸液療法(森崎 浩,鈴木 武志)
敗血症の定義の変遷と病態
敗血症に適切な輸液時期は存在する?
敗血症に適切な輸液製剤は何か?
天然膠質液ヒトアルブミンは敗血症の輸液に必要か?
敗血症に適切な輸液量と循環管理は?
2.小児の輸液(鈴木 康之)
小児体液組成の特徴
小児の必要水分量に基づく輸液療法
ナトリウムの代謝
術中輸液の目的
低ナトリウム血症と輸液療法との関連
なぜ等張輸液を使用すべきか
低ナトリウム血症の治療方法
未熟児および成熟新生児の周術期の輸液
輸液中の糖濃度について
頭蓋内圧亢進患者での輸液
3.熱傷と輸液(玉田 尚,山口 芳裕)
熱傷の病態生理
1 受傷後24~48時間以内の病態/2 受傷後48~72時間前後の病態/
3 急性期以降の病態
受傷後24~48時間以内の輸液療法
1 輸液療法の目的/2 熱傷急性期の輸液公式/
3 急性期におけるコロイド液の位置づけ/4 輸液療法の実際
血液製剤
1 赤血球濃厚液(red cell concentrates-leukocytes reduced:RCC-LR)/
2 新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)/
3 血小板製剤(platelet concentrate:PC)/4 アルブミン製剤
過剰輸液の弊害を回避するための工夫
1 高張Na輸液(hypertonic saline:HTS)/2 抗酸化療法/3 血液浄化法
受傷後48~72時間前後の輸液療法
1 水分出納の評価/2 輸液の実際
4.拡大手術と輸液(小竹 良文)
輸液療法のcontroversy
1 輸液量に関するcontroversy/2 輸液剤の種類に関するcontroversy
周術期輸液のガイド
1 古典的な周術期輸液のガイド/2 新しい周術期輸液のガイド
5.産科麻酔と輸液(上山 博史)
妊娠に伴う体液の生理学的変化と出血
妊婦での輸液負荷の注意点
帝王切開での輸液
1 区域麻酔での血圧低下防止/2 全身麻酔での輸液
特殊な病態での輸液管理
1 糖尿病/2 早産患者
妊娠高血圧症での輸液管理
1 妊娠高血圧症の血行動態と血液量/2 管理の目安と管理法
6.脳神経外科手術と輸液(武田 吉正)
なぜブドウ糖液を大量輸液してはいけないか?
総論
1 手術中の脳浮腫について/2 低ナトリウム血症/3 高ナトリウム血症
各論
1 頭部外傷/2 くも膜下出血/3 脳梗塞
7.心臓血管外科手術と輸液(平松 大典,大西 佳彦)
低心機能(心不全)症例の輸液管理について
1 心臓前負荷の最適化/2 浮腫の予防/3 電解質異常の補正
大量出血,大量輸液について
1 心臓血管外科手術でよく使用される膠質液製剤について/
2 輸液製剤が止血機能に及ぼす影響について/3 腎機能に及ぼす影響
体外循環の影響
1 人工心肺症例での輸液管理/2 体外循環による血液希釈と凝固能への影響/
3 経済的な問題
心臓血管外科手術での術後輸液療法
1 心臓血管外科手術後の輸液管理/2 周術期高血糖の調節
8.腎移植と輸液(小山 薫)
レシピエントの評価
1 腎不全の原因/2 心機能の評価/3 呼吸機能の評価/4 その他
術前透析
麻酔管理
1 モニター/2 麻酔方法
併用薬剤など
1 ドパミン/2 フロセミド,マンニトール/
3 ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide:ANP)/
4 プロスタグランジンE1(PGE1)/5 輸血/6 免疫抑制薬
輸液管理
1 生体腎移植ドナー/2 生体腎移植レシピエント/3 献腎移植レシピエント
高カリウム血症への対処
9.呼吸管理と輸液(小谷 透)
ARDSとは?
Surviving Sepsis Campaign guidelinesとFACTT study
低酸素血症の原因は何か?
虚脱肺への人工呼吸戦略と最近の進歩
Column 3 組織間液圧(高折 益彦)
Column 4 アルブミンの血管外輸送と血液粘度(宮尾 秀樹)