心肺蘇生

心肺蘇生

編集 槇田浩史
ISBN 978-4-7719-0389-0
発行年 2012年
判型 B5
ページ数 308ページ
本体価格 8,400円(税抜き)
電子版 なし


『“危機管理”を達成する』
経験のない事態に遭遇しても、すばやく的確に診断し、適切な治療を迅速に行わなければならない。また、患者を評価するときにそのような事態を想定し準備をしておくことも重要である。 そのための知識を濃縮した1冊!

高度な知識や技術を必要とする病態を経験することは非常にまれである。しかし、そのような症例に遭遇したときには、迅速で的確な治療が求められる。麻酔科専門医には、常に安全で快適な麻酔管理を提供する能力が求められる。また麻酔中に発生する突発的で重篤な事態に適切に対処できる能力が必要であり、その場において適切な治療ができたときにこそ、一緒に働く外科医やコメディカルの信頼が大きくなるのである。  (序文より)

I.心肺蘇生法の歴史とガイドライン2010(多田恵一、石川 雅巳)
はじめに
心肺蘇生法の黎明期
初の世界標準としてのガイドライン2000 作成への軌跡
ガイドライン2000 について
ガイドライン2005 について
2000 年と2005 年のガイドラインの主な変更点
CoSTR 2010 について
日本麻酔科学会専門医認定試験受験に伴う“AHA-ACLS 修了”必須化について

II.成人のBLS とACLS(武光美香子、境田康二)
心肺停止の概要
成人へのBLS 手順
1 意識と呼吸の確認/2 救急システムへの通報/3 脈の確認/
4 早期CPR、胸骨圧迫/5 気道確保/6 人工呼吸/7 除細動/8 回復体位
特殊な蘇生状況
1 異物による気道閉塞/2 溺水
胸骨圧迫のみのCPR
成人のACLS(二次救命処置、advanced cardiopulmonary life support)
1 VF/pulseless VT /
2 心静止(asystole)、無脈性電気活動(pulseless electorical activity:PEA)/
3 心リズムの変化、脈拍チェック/4 CRP 中の監視
徐脈、頻脈
1 徐脈の管理/2 頻脈の管理

III.小児のBLSとACLS(遠山悟史)
はじめに
一次救命処置(basic life support : BLS)
1 反応の確認/2 気道の確保/3 呼吸と脈拍の確認/
4 自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)
二次救命処置(pediatric advanced life support : PALS)
患者の評価
蘇生後管理
最後に

IV.緊急事態に対する電気的治療(原口 剛、磯部光章)
はじめに
AED(自動体外式除細動器、automated external defibrillator)
除細動器
上室性頻拍への除細動
経皮的ペーシング
経静脈的ペーシング
ICD(植え込み型除細動器、implantable cardioverter defibrillator)
CRT(心臓再同期療法、cardiac resynchronization therapy)

V.新生児蘇生法(今井一徳、遠山悟史)
新生児蘇生法の対象
1 新生児蘇生法の対象/2 どのような新生児が蘇生を必要とするか
新生児蘇生に必要な基礎知識
1 新生児の分類/2 呼吸・循環の変化/
3 正常な移行が中断されたときの児の反応/4 危険因子の把握
新生児蘇生法
1 アルゴリズム/2 初期評価/3 ルーチンケア/4 初期処置/
5 初期処置後の評価と次の処置/6 人工呼吸の評価と次の処置/
7 薬剤投与/8 気管挿管/9 薬剤投与後の対応
まとめ

VI.麻酔中の特殊な状況での蘇生
1.局所麻酔薬中毒の治療(藤本一弘)
局所麻酔薬の薬理
1 電位依存性Na+チャネルの抑制/2 局所麻酔薬と心筋の活動周期
心肺蘇生と局所麻酔薬中毒
1 局所麻酔薬の心毒性/2 局所麻酔薬の神経毒性/
3 局所麻酔薬の種類と毒性/4 局所麻酔薬中毒に影響を与える因子
局所麻酔薬中毒による心肺停止の治療
1 局所麻酔薬中毒の予防/2 局所麻酔薬中毒の治療

2.アナフィラキシーショック(野村岳志)
はじめに
アナフィラキシーの定義
発生頻度
病態
1 アナフィラキシー反応/2 アナフィラキシー様反応/3 化学伝達物質
原因物質
1 筋弛緩薬/2 ラテックス
症状
治療法
1 抗原への曝露を最小限、最短時間にする/2 酸素投与と気道確保/
3 急速輸液/4 薬物投与/5 体位/6 その他
鑑別診断
アナフィラキシーが疑われる場合の検査
予後
おわりに

3.肺塞栓症(中島芳樹)
はじめに
肺塞栓症の原因
1 遺伝系の存在/2 麻酔科学会2008 年度報告書から見るVTE の疫学
症状および発生時期
診断
1 理学的所見/2 低酸素血症/3 呼気終末二酸化炭素濃度/
4 循環動態/5 一般検査/6 鑑別診断
治療
1 呼吸・循環管理/2 輸液、循環作動薬/3 体外(補助)循環/
4 抗凝固療法/5 ワルファリン/6 血栓溶解療法/7 下大静脈フィルタ
予防
1 理学療法/2 薬物療法
抗凝固薬の今後の展望
1 注射薬/2 経口薬
周術期VTE 予防としての抗凝固療法と時期
硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔と抗凝固薬
1 頻度/2 硬膜外カテーテルの取り扱い
おわりに

4.致死的な電解質異常(武居哲洋)
高カリウム血症
1 カリウムの体内動態/2 スキサメトニウム/3 保存血輸血/
4 診断/5 治療
低マグネシウム血症
1 マグネシウムの体内動態/2 診断/3 治療
その他の電解質異常

5.脊髄くも膜下麻酔による心停止(武田吉正)
脊髄くも膜下麻酔の安全性
脊髄くも膜下麻酔が呼吸・循環系に及ぼす影響
高比重局所麻酔薬と等比重局所麻酔薬の相違
過去の報告
1 Caplan らの報告/2 メイヨーにおける心停止―1/
3 メイヨーにおける心停止―2 /4 フランスにおける心停止―1/
5 フランスにおける心停止―2/6 日本における心停止
股関節手術
まとめ

6.高度徐脈(徐脈性不整脈)(田勢長一郎、池上之浩、大野雄康)
はじめに
徐脈とは
徐脈性不整脈の種類
1 洞不全症候群(sick sinus syndrome:SSS)/
2 房室ブロック(atrioventricular block:AV block)/
3 接合部性調律〔junctional rhythm、
房室接合部調律(atrioventricular junctionalrhythm)、
房室結節調律(AV nodal rhythm)〕
麻酔中に発生する徐脈
1 発生頻度/2 発生時期および徐脈の種類/3 発生誘因
麻酔に関連する徐脈に対する準備・処置
1 麻酔導入前の準備/2 徐脈が発生したときの初期対応
小児麻酔中の徐脈

7.頻 拍(岡本浩嗣)
はじめに
頻拍治療のアルゴリズムによる初期対応
不安定な頻拍
安定した頻拍
狭いQRS 幅の頻拍
1 洞性頻脈/2 心房細動/3 心房粗動
発作性上室性頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia : PSVT)
多源性心房頻拍(multifocal atrial tachycardia : MAT)
広いQRS 幅の頻拍
単形性心室頻拍(VT)
多形性心室頻拍(VT)0
変行伝導を伴う上室頻拍、心房細動あるいはWPW 症候群を合併した心房細動
頻拍治療のアルゴリズムによる頻拍の鑑別
おわりに

VII.心肺停止蘇生後に対する脳低体温療法の適応と施行法
(押富 隆、長谷敦子)
はじめに
脳低体温療法の目的および効果
歴史と問題点
低体温療法の理論的背景
脳循環代謝の恒常性維持と脳障害時の病態生理
脳低体温療法の実際
1 脳低体温療法の適応/2 脳低体温療法の導入/3 脳低体温療法中の全身管理
おわりに

VIII.外科的気道確保の適応と実施法(森 正和)
心肺蘇生と外科的気道確保の適応
1 緊急気道確保を目的とする場合/2 呼吸管理を目的とする場合
外科的気道確保法の種類
1 アクセス経路/2 施行方法/カニューレ(チューブ)
外科的気道確保法の選択
1 一般的な選択/2 例外的な選択
輪状甲状膜穿刺・切開
1 各方法と特徴/2 そのほかのキットと特徴/
3 キットの使用例(Mini-Trach II(R) Seldinger kit)
経皮的気管切開
1 キットの種類/2 キットの使用例(ネオパーク(R))

IX.周術期の虚血性脳卒中の予防、診断、治療(石川晴士)
はじめに
疫学
1 周術期の虚血性脳卒中/2 一般手術における頻度/
3 リスクの高い手術における頻度/4 発生時期
周術期脳虚血の発生機序
1 低灌流と血栓・塞栓/2 術後の過凝固状態(hypercoagulability)/
3 心臓大血管手術における虚血性脳卒中/4 CEAにおける虚血性脳卒中/
5 奇異性塞栓症(paradoxical embolism)
リスク因子
1 高齢/2 腎疾患/3 弁疾患/4 心房細動/
5 心臓手術におけるリスク因子
予防
1 内頸動脈内膜/離術(CEA)/
2 冠動脈バイパス術~人工心肺を避けることの是非~/
3 リスク因子の制御
モニター機器
1 脳波/2 経頭蓋ドプラー/3 脳酸素飽和度モニタリング/
4 体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:SEP)/
5 頸動脈断端圧(stump pressure)
診断
治療
虚血性脳卒中の病態生理
1 コアとペナンブラ/2 拡散強調画像とADCマップ/
3 不可逆的な傷害を避けるための工夫
今後の展望

X.周術期の急性冠症候群(瀬尾勝弘)
はじめに
ACS とは
冠攣縮性狭心症
ACS の診断
1 心電図/2 生化学マーカー
ACS に対する治療
1 再灌流療法/2 抗血小板療法/3 初期薬物療法/
4 心不全治療、機械的補助、不整脈治療
術前の冠血行再建
PCI の施行時期と抗血小板療法
非心臓手術の周術期心血管評価と管理
おわりに

XI.非心臓手術における術中の補助循環(中根正樹、川前金幸)
大動脈内バルーンパンピング(IABP)
はじめに/1 理論的背景/2 適応となる状態と適応外/3 挿入と駆動/
4 IABPの合併症/5 離脱/おわりに
経皮的心肺補助装置(PCPS)
はじめに/1 PCPSの仕組み/2 PCPSの適応/3 送脱血管の挿入/
4 PCPS 開始方法/5 PCPS からの離脱/おわりに