静脈麻酔
現代の麻酔管理において、必須の麻酔技術の一つとなっている静脈麻酔法。
その発展し続ける静脈麻酔法の基礎と応用を理解し、静脈麻酔法を臨床の現場で活用することができるように企画された1冊です!
麻酔の初心者や麻酔経験の浅い先生方には静脈麻酔法とはどのような麻酔法であるのかを知る入門書として、麻酔科専門医の先生方にはこれまでの知識の整理のための書籍としてご活用いただけます。
I.静脈麻酔の歴史と意義(廣田和美)
静脈麻酔法の歴史
血液循環の発見/注射筒と針の発明/静脈麻酔薬の歴史
静脈麻酔法の意義
麻酔機序から見た理想的麻酔薬/地球環境から見た理想的麻酔薬/
手術患者から見た理想的な麻酔薬
II.静脈麻酔薬の薬理:総論
1.薬物動態の基礎(長田 理)
薬物動態の基礎
分布容積/クリアランス/
血中濃度曲線下面積(area under the curve:AUC)/
コンパートメントモデル/効果部位濃度/
context-sensitive half-time(CSHT)
静脈麻酔薬の薬物動態
麻酔科領域の特殊性/静脈麻酔薬の薬物動態パラメータ
薬物動態シミュレーション
表計算ソフトの利用/薬物動態シミュレータの利用/
target-controlled infusion(TCI)
薬物動態パラメータの選択
適用条件の検討/先行研究との整合性/open TCI の利用/
薬物動態シミュレーションの限界/
薬物が組織に到達するまでの時間
2.薬力学の基礎(長田 理)
薬力学とは
S状曲線の当てはめ
ロジスティック関数/Hill関数/累積正規確率密度関数/
ロジスティック関数と累積正規確率密度関数の比較
薬物動態学と薬力学の融合
ke0の求め方
薬力学に影響を及ぼす要因
個体間変動に関与する要因/個体内変動を生じさせる要因/
薬物相互作用
薬力学を考慮した薬物投与理論
母集団の必要濃度を上回るように薬物を投与する/
個体ごとの必要濃度を上回るように薬物を投与する
III.静脈麻酔薬の薬理:各論
1.鎮静薬(櫛方哲也、廣田和美)
バルビタール
チオペンタール/チアミラール
ベンゾジアゼピン
ジアゼパム/ミダゾラム
プロポフォール
薬理学的特徴/一般的投与量/副作用/
投与にあたり注意すべき病態と事項
デクスメデトミジン
薬理学的特徴/一般的投与量/副作用/
投与にあたり注意すべき病態
ケタミン
薬理学的特徴/一般的投与量/
投与にあたり注意すべき病態
エトミデート
2.鎮痛薬(福田和彦)
オピオイド
オピオイド受容体とオピオイド作用の分子機構/
オピオイドの薬理作用/オピオイドの薬物動態/
オピオイドを用いる麻酔法/麻薬拮抗性鎮痛薬/
非麻薬性鎮痛薬/オピオイド拮抗薬/
オピオイドの薬物相互作用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
作用機構/薬物動態/周術期における有用性
3.筋弛緩薬(佐藤健治、中塚秀輝)
筋弛緩薬
筋弛緩薬の歴史/
神経筋接合部の生理と脱分極性筋弛緩薬と非脱分極性筋弛緩薬
脱分極性筋弛緩薬
薬理作用/副作用/臨床使用
非脱分極性筋弛緩薬
分類/種類/薬理作用/代謝および排泄/
非脱分極性筋弛緩薬の薬理作用に影響する因子/副作用
臨床使用(気管挿管量、追加投与量と持続投与法)
筋弛緩拮抗薬(ネオスチグミン、スガマデクス)
抗コリンエステラーゼ薬による筋弛緩薬の拮抗/スガマデクス
IV.薬物投与法
1.マニュアルによる方法(菅原亜美、国沢卓之)
投与法
単回投与/持続投与/単回投与+持続投与
投与量決定の指標
プロポフォール/フェンタニル、レミフェンタニル/
デクスメデトミジン
各種薬物の投与の実際
プロポフォール/フェンタニル、レミフェンタニル/
デクスメデトミジン
2.目標制御注入(TCI)(菅原亜美、国沢卓之)
TCIの基本原理
TCIの功罪
利点/欠点
標的器官
血漿TCI/効果部位TCI
薬物動態パラメータ
TCIに利用される装置
制御装置―シリンジ一体型/ソフトウエア/
シリンジポンプ
各種薬物の投与の実際
プロポフォール/フェンタニル/レミフェンタニル/
デクスメデトミジン
実際にTCIを行ううえでの留意点
商用シリンジポンプ(DiprifusorTM)/
OrchestraTM Base Premia/STANPUMP
V.モニタリング(萩平 哲)
循環モニタリング/呼吸モニタリング/
脳波モニタリング/
神経・筋モニタリング〔感覚誘発電位(SEP)、運動誘発電位(MEP)〕/
体温モニタリング/麻酔薬濃度モニタリング
VI.静脈麻酔法の実際
1.麻酔・鎮静導入(中尾正和)
準備
確実な静脈路/全身麻酔の導入法/入眠
気管挿管
気管挿管刺激による循環変動を抑制するレミフェンタニル濃度/
実際の導入プロトコル/ハイリスク患者
危機管理
導入時の低血圧、徐脈/筋硬直の対策/急速導入法/
導入時の血管痛予防/ロクロニウムの血管痛/
ポンプの動作特性も知ろう/溶解忘れの防止ルール/
導入時のアクシデントへの対応
2.麻酔・鎮静維持(中尾正和)
鎮痛薬と鎮静薬の相互関係
調整はどうする?
ストレス別の必要とされる鎮痛薬濃度は/調整の目安は/
術中の評価/
ストレスレスポンスと硬膜外麻酔や高用量レミフェンタニルについて
より良い麻酔管理のために
投与量設定さじ加減のポイント/速やかな調整のテクニック/
術中の体動に対する考え方
3.麻酔・鎮静からの覚醒(中尾正和)
くすりの中止タイミング
プロポフォールとレミフェンタニルどちらを先に中止するのか?/
どのくらいのプロポフォール濃度で目覚めるのであろうか?
覚醒のポイントは?
術後鎮痛/覚醒時に望まれるフェンタニル濃度は?/
麻薬のボーラス投与による呼吸抑制/硬膜外麻酔の併用/
シバリング対策
スムーズな抜管にあたって
麻薬の拮抗
VII.各科の静脈麻酔法
1.脳神経・脊椎手術の麻酔(内藤祐介、川口昌彦)
脳神経疾患の基礎
脳循環の生理学/麻酔薬の脳循環代謝に与える影響/
脳脊髄モニタリングと麻酔
脳神経疾患の麻酔法
頭蓋内圧亢進患者/虚血性脳疾患/覚醒下開頭術/
開頭手術での神経モニタリング
脊椎手術での麻酔法
脊椎手術/脊椎手術での神経モニタリング
2.頭頸部外科(眼科を含む)手術の麻酔(位田みつる、川口昌彦)
頸動脈内膜剥離術(CEA)
麻酔管理/麻酔中のモニター/合併症と対策
耳鼻科
耳手術と麻酔
眼科手術
眼圧/眼科手術と静脈麻酔薬
気道確保
レミフェンタニル/デクスメデトミジン
3.胸部外科手術の麻酔(坪川恒久)
分離肺換気には静脈麻酔と吸入麻酔のどちらが適しているか
低酸素性肺血管収縮(HPV)に関する比較/
臓器保護作用に関する比較/悪性腫瘍の伸展抑制に関する比較/
静脈麻酔薬と吸入麻酔薬の比較のまとめ/
静脈麻酔が適している胸部外科手術
鎮痛方法について
鎮痛方法が悪性腫瘍の伸展に与える影響/術後早期の痛み/
慢性痛への移行
実際の麻酔方法について
入室から硬膜外麻酔まで/麻酔導入/術中の管理/
術中から術後の鎮痛について/覚醒時から術後の管理
4.心臓・大血管手術の麻酔(坪川恒久)
静脈麻酔法は心臓・大血管の麻酔に適しているか
吸入麻酔法を支持する研究/静脈麻酔法を支持する研究/
吸入麻酔法と静脈麻酔法の比較/静脈麻酔薬と吸入麻酔薬の併用/
手術侵襲と予後
人工心肺と静脈麻酔
希釈による薬物濃度の低下/タンパク結合率の変化/
併用薬物の影響/血流のシフト/代謝酵素の活性低下/
薬力学的な変化/そのほかの影響:人工心肺回路への吸着
実際の麻酔方法
導入時/導入から人工心肺開始前まで/人工心肺時/
人工心肺からの離脱後/手術終了時
5.腹部外科(骨盤内を含む)手術の麻酔(坂本成司、稲垣喜三)
腹部手術の特徴
腹部手術における静脈麻酔法の長所と短所
静脈麻酔の特徴/神経ブロックを必要としないメリット/
麻酔の覚醒について/麻薬との相乗作用/
術後痛について/内分泌反応について/
悪心・嘔吐が少ない/レミフェンタニルによる痛覚過敏/
認知機能について/尿量について/
シバリングについて/腸間膜牽引症候群について/
肺機能について/コストについて
静脈麻酔による管理が有用な腹部手術にはどのようなものがあるか
手術別の麻酔法
静脈麻酔による腹部手術の麻酔管理上のポイント
静脈麻酔のみで行う場合/硬膜外麻酔を併用する場合
6.整形外科・形成外科手術の麻酔(稲垣喜三)
整形外科の麻酔
脊椎手術/四肢・関節手術
形成外科の麻酔
7.妊婦および帝王切開の麻酔(細川幸希、奥富俊之、加藤里絵)
妊娠中の薬物動態
分布/代謝/排泄/
胎盤通過性と胎児への蓄積
胎児・新生児への影響(催奇形性など)
各論
鎮静薬/オピオイド/筋弛緩薬/筋弛緩拮抗薬
母乳への移行
鎮静薬/オピオイド/筋弛緩薬と拮抗薬
妊娠中の全身麻酔
静脈麻酔法による妊娠中の麻酔/
静脈麻酔法による帝王切開の麻酔
8.小児手術の麻酔(橘 一也、木内恵子)
小児患者への静脈麻酔
小児における吸入麻酔と静脈麻酔の利点と欠点
覚醒時興奮/術後嘔吐/
静脈麻酔が推奨される疾患、病態/
麻酔導入により上気道閉塞が予想される症例/
小児静脈麻酔の欠点
小児静脈麻酔各論
プロポフォール/レミフェンタニル
術後の小児集中治療室(PICU)における鎮静・鎮痛
VIII.特殊な病態や状態下での麻酔・鎮静
1.肝機能・腎機能障害を有する患者の麻酔(公平順子、尾崎 眞)
肝機能障害を有する症例の麻酔
術前評価/予後予測/
肝障害による術中の問題点と対策
腎機能障害を有する症例の麻酔
術前評価/予後予測/
腎障害による術中の問題点と対策
肝機能・腎機能障害における静脈麻酔薬使用のポイント
肝臓における薬物代謝の機序/腎臓における薬物排泄の機序/
各薬物で注意すべきポイント
2.移植術のレシピエントの麻酔(公平順子、尾崎 眞)
肝移植術レシピエントの麻酔
術前評価/麻酔薬の選択と術中管理
腎移植術レシピエントの麻酔
術前評価/麻酔薬の選択と術中管理
移植術中に注意すべき点と対処法
輸血/低・高カリウム血症/低ナトリウム血症
3.大量出血を伴う手術や長時間手術の麻酔(増井健一)
大量出血時の静脈麻酔薬の薬物動態力学と麻酔管理
大量出血時の薬物動態を考えてみる/
出血時の薬物動態力学に関する研究/
大量出血時の麻酔管理の考え方
長時間手術における静脈麻酔薬の薬物動態力学と麻酔管理
薬物動態モデルは長時間の予測をきちんと行えるか/
長時間投与後に薬物濃度を十分に下げられるか/
長時間手術時に薬効は変化しないのか/
長時間手術時の麻酔管理の考え方
4.脂質代謝異常を伴う患者の麻酔(稲垣喜三)
脂質異常症(dyslipidemia)
脂質異常症と静脈麻酔薬
肥満と静脈麻酔薬
5.手術室外での麻酔と鎮静(佐々木英昭、山蔭道明)
麻酔と鎮静
静脈麻酔と吸入麻酔
安全な麻酔・鎮静のために
手術室外で麻酔や鎮静を行う際の手順と留意点
依頼内容を確認する/患者の評価・問診/
周辺環境の確認/麻酔や鎮静法の決定と準備/
バイタルサインの確認および静脈路確保/酸素投与/
鎮静・鎮痛薬投与/モニタリング/
麻酔や鎮静終了後の観察
手術室外での麻酔や鎮静の例
電気的除細動や脱臼整復など/閉所恐怖症患者の放射線検査など/
意思の疎通が図れない患者の放射線検査など/
ペースメーカ挿入や中心静脈ポート留置など/
脳血管内手術や大動脈ステント留置など/
投与薬物に制限がある場合/特別なケース
磁気共鳴画像(MRI)検査の特殊性
手押し/シリンジポンプ/シリンジェクタ
6.集中治療部での鎮静(佐々木英昭、山蔭道明)
集中治療室での鎮静の目的
興奮・不穏状態(agitation)
集中治療室での鎮静・鎮痛の手順
非薬物療法/集中治療室での興奮・不安の評価
集中治療室で鎮静・鎮痛に使用される代表的薬物
鎮静薬/鎮痛薬/筋弛緩薬
集中治療室における鎮静の実際
鎮静の合併症
過剰鎮静/過小鎮静
IX.術後鎮痛法
1.持続静脈内投与法(福田陽子、橋口さおり)
術後痛管理の変遷
術後痛について
痛みの評価/鎮痛薬の選択/投与経路の選択
オピオイドの持続静脈内鎮痛法について
使用薬物
オピオイド/鎮痛補助薬
2.患者自己調節鎮痛法(IV―PCA)(小杉志都子、橋口さおり)
PCAの基本概念
概念/PCA機器
IV-PCA
使用薬物/併用薬物/患者因子による影響/
副作用と対策
PCA管理
患者教育/ローディングとPCA開始/術後回診
索 引