日めくり麻酔科エビデンスアップデート
~1日1つ,3カ月で100の知見を得る~
監修 | 山蔭道明 |
---|---|
編集 | 新山幸俊 |
ISBN | 978-4-7719-0481-1 |
発行年 | 2017年 |
判型 | A5 |
ページ数 | 254ページ |
本体価格 | 5,700円(税抜き) |
電子版 | あり |
M2Plus<電子版>
どんなに多忙な麻酔科医の方でも,コーヒータイムに1つの項目を読み解くことで,無理なく新しい知見を得ることができます!
本書のコンセプトは,臨床麻酔はもちろん,救急医療,集中治療,ペインクリニック,無痛分娩,緩和医療など麻酔科医が関わるすべての領域において,有意義と思われる最新の知見を示した論文のエッセンスを,理解しやすい形式で解説・紹介するというものです.各領域でピックアップされた論文には,臨床だけでなく,基礎研究も含まれています.レイアウトは見開き2ページで,最初に論文の結論を簡潔に示したトピックスとイラストを掲載しました.さらに,執筆してくださった先生方が,ご自分が読んでインパクトを感じたポイントを分かりやすくコメントしてくれています。偏っていても構わないという前提で,あえて主観を入れていただくことで,非常に魅力ある内容になりました.大いに偏見に満ちた,示唆に富むコメントをぜひ堪能していただきたいと思います.(『序文』より抜粋)
1 麻酔の作用機序(廣田弘毅)
1 視床内側核への電位依存性カリウムチャネル抗体の微量注入は,全身麻酔作用を拮抗する
2 視床皮質路の非特殊感覚経路は,プロポフォールによる意識消失作用に関わっている
3 イソフルランとデスフルランは,Aβペプチドの重合を促進し,アルツハイマー病を増悪させる
4 新生児期の全身麻酔薬曝露は神経発達障害を生じるか?:国際的多施設ランダム化前向き試験
5 海馬のセルアセンブリに対する光遺伝学的刺激により,記憶はよみがえる
2 吸入麻酔(上山博史)
1 MACの概念は誤りである
2 イソフルラン麻酔では侵害刺激を完全には抑制できない
3 麻酔中の脳波変化とその生理学的な基礎を理解する
4 イソフルラン麻酔では潜在性記憶を抑制できていない可能性がある
5 脳波を使って計測した前頭葉と頭頂葉間の接続(connectivity)変化により,麻酔薬による意識消失をとらえることができる
3 静脈麻酔(新山幸俊)
1 プロポフォールの呼気終末濃度を測定することで,血中濃度のリアルタイムモニタリングができる
2 プロポフォールには鎮痛および痛覚過敏抑制作用がある
3 プロポフォール投与時の血管痛の発生機序にはTRPA1受容体が関与している
4 筋弛緩薬はBIS値を低下させる
5 デクスメデトミジンは老齢マウスにおける術後認知機能障害を予防する
4 筋弛緩薬(北島 治)
1 非脱分極性筋弛緩薬に対するネオスチグミンの拮抗は,酸素化を改善せず,術後無気肺の発生を増加させる
2 後腹膜腹腔鏡手術において深い筋弛緩状態は,外科医に手術をやりやすくさせている
3 calabadion:筋弛緩薬に対する新たな拮抗薬
4 皺眉筋モニタリング下での中等度筋弛緩の完全な回復に必要なスガマデクス量は4mg/kg
5 スガマデクスは術後残存筋弛緩の発生を回避する:ランダム化比較試験
5 局所麻酔薬・神経ブロック(笹川智貴)
1 末梢神経ブロックに際し,超音波ガイドと神経刺激装置はどちらが有用か?
2 区域麻酔後の神経学的合併症:リスクを見積もる
3 区域麻酔の併用は,がんの再発率を低下させる
4 TKAの術後鎮痛において,リポソームブピバカインを用いた大腿神経ブロックは有用か?
5 抗血小板療法・抗凝固療法中の患者に対するペインクリニック領域の神経ブロック(共著者:井尻えり子)
6 補液・輸血(小山 薫)
1 手術中の大量出血に対する第2世代HESによる大量輸液療法は,術後腎機能に影響しない
2 集中治療における輸液療法:第3世代HESは有害か?
3 ICUにおける重症循環血液量減少性ショック症例に対する膠質液の使用は死亡率を低下させる
4 ICUにおける非敗血症症例に対してHESは有用である:メタ解析
5 高リスク症例に対する制限的輸血は,予後を増悪させる
7 呼吸管理(鈴木昭広)
1 PROSEVA study:腹臥位療法は重症ARDS患者の予後を改善する
2 IMPROVE study:術中肺保護戦略換気は転帰を改善し,医療コストを減少させる
3 腹臥位脊椎手術において,従圧式換気は出血量を減少させる
4 多施設共同研究:ビデオ喉頭鏡は困難気道対策に有用である
5 初心者が最も確実に緊急外科的気道確保ができる方法は,外科的切開である
8 循環管理(平田直之)
1 非心臓手術において,術中平均血圧55mmHg未満が継続すると術後アウトカムが悪化する
2 術中収縮期血圧が,術前よりも50%低下した状態が5分以上継続すると心筋傷害を生じやすい
3 術後心筋傷害は1年後の生存率を低下させるが,その死因は心臓以外が原因であることが多い
4 非心臓手術における術中血圧変動は,予後を悪化させない
5 術中の血圧不安定性は,30日生存率と関連する
9 麻酔合併症(田村貴彦/河野 崇)
1 非心臓手術患者に対する周術期アスピリン投与は死亡率に影響しないが,術後大出血の危険性を高める
2 小児の非心臓手術患者での予期しない術後挿管の頻度は成人と同等であり,30日死亡率の増加と関連している
3 術後合併症は,その発生率や重症度だけでなく,持続時間も生存率に関連している
4 肺炎と代替気道器具の使用は,気管挿管後歯牙損傷の新たな危険因子である
5 心臓手術後の─時的心外膜ペースメーカワイヤー抜去に関連する因子の検討
10 脳外科手術(後藤安宣)
1 awake craniotomyの適切な麻酔管理法に関するレビュー:結論には至らず
2 脳神経外科術中および脳卒中の脳保護に関するレビュー:どの薬剤も神経保護効果を示せず
3 TIVAと併用したデクスメデトミジンは,誘発電位に影響を与えない
4 神経疾患患者における適切な輸液とは?:等張液を用いてeuvolemiaを目指す
5 テント上占拠性病変を有する患者に対する鎮静は,薬剤特異性に神経学的機能を悪化させる
11 心臓手術(坪川恒久)
1 麻酔科医が交代して麻酔を引き継ぐ際,十分な申し送りがなければ,心臓手術患者の死亡率および合併症発生率は上昇する
2 心臓手術の麻酔には静脈麻酔薬よりも吸入麻酔薬を選択するべきである.術後の肺合併症が減少し,死亡率も低下する
3 ウサギの大動脈遮断モデルにおいて,ミノサイクリンは用量依存性に対麻痺の発生を抑制する:古い薬剤の新たな活用法
4 人工心肺からの離脱時に低血圧に悩まされることは多い.病態を理解してバソプレシン,メチレンブルーなど積極的に使用して早期に血圧を回復させるべきである
5 心房細動に対して抗凝固薬を服用している患者では,周術期にヘパリンブリッジングを行っているが,血栓塞栓症の予防効果は認められず,術後出血量が増加する
12 整形外科手術(山内正憲/外山裕章)
1 若年者の脊椎手術においてデクスメデトミジンがSSEPとMEPに与える影響は小さい
2 wide-awake surgeryに対して,超音波ガイド下選択的知覚神経ブロックは有用である
3 斜角筋間ブロックでは,局所麻酔薬の投与量が少ないと余計な広がりが少ない
4 デキサメタゾンは投与経路にかかわらず,斜角筋間ブロックの鎮痛効果を延長する
5 “PSH:周術期管理システム”による術前・術後ケアは,THAとTKA患者の予後を改善する
13 呼吸器外科手術(中山禎人)
1 気管支内圧を考えると,─側肺換気中には従圧式換気が望ましいか?
2 ─側肺換気において,PCV─VGモードは有用である
3 ─側肺換気中における低換気量での呼吸管理は適切か?
4 COPD症例の─側肺換気中において,PEEPの付加は適切か?
5 胸部外科症例において全身麻酔薬は何を選択すべきか?
14 その他の手術(紙谷義孝)
1 亜酸化窒素は,術後痛の遷延化を抑制する
2 非ステロイド性抗炎症薬の単回使用は,乳がんの再発を減少させる
3 TIVAでの麻酔管理は,がん手術後の再発率を低下させる
4 オピオイドは,非小細胞がんを活性化させる
5 術前のprehabilitationは,術後認知障害の発症を抑制する
15 小児麻酔(齊藤和智/川名 信)
1 麻酔薬による中枢神経毒性に関する基礎研究は多様であるため,現時点でヒトへの臨床に反映させることはできない
2 小児扁桃摘出術の有害事象を予防するために,閉塞性睡眠時無呼吸のリスクを見逃さない
3 小児における新たな気道管理ガイドライン:予期せぬ困難に常に備える
4 小児の気道断面は楕円形であるため,小児患者にもカフ付きチューブの使用が 推奨される
5 小児の人工呼吸管理では,気管チューブ内に圧減衰が生じる.細いチューブを用い,リークがある場合には有効な換気が得られていない可能性がある
16 産科麻酔・無痛分娩(松田祐典)
1 塩化カルシウムは子宮収縮を増強することで,オキシトシンによる低血圧を予防できるか?
2 帝王切開の術後鎮痛におけるくも膜下モルヒネの至適投与量は100μgである
3 Fibtem 5分値振幅は,分娩後出血時の出血量予測に対して有用である
4 自動間歇的硬膜外注入法は,持続硬膜外注入法より優れているか?
5 デクスメデトミジンは,妊娠中の母体と胎児にどのような影響を及ぼすのか?
17 救急医療(山田淑恵/林 寛之)
1 敗血症患者において,過剰輸液は死亡リスクを増加させる?
2 Shock indexは本当に有用か?
3 PROPPR試験─重症外傷の輸血の“血漿:血小板:赤血球”の比は1:1:1と1:1:2のどちらがよい?
4 外傷患者はカルシウムが足りない!
5 肺塞栓症の重症度を12誘導心電図から読み解く
18 集中治療(吉田真─郎)
1 ARDSの新しい定義:Berlin定義
2 急性腎障害を合併した重症患者に対し,腎代替療法はいつ導入すべきか?
3 重症患者における栄養経路として,経腸栄養は本当に有用か?
4 敗血症および敗血症性ショックの新しい定義
5 PAMPsとDAMPsは,DICの診断マーカーおよび治療ターゲットとなりうるか?
19 ペインクリニック(河野達郎)
1 慢性内臓痛モデルマウスでは,前帯状回皮質のAMPA型グルタミン酸受容体の可塑性変化が痛みに関与している(共著者:佐々木美佳)
2 モルヒネによる痛覚過敏の原因は,ミクログリアを介した神経細胞内Cl-の変化にある(共著者:佐々木美佳)
3 慢性痛の小児に対して,心理的治療は有効か?(共著者:田中萌生)
4 術後慢性痛は予防できるか?:関連因子の考察(共著者:田中萌生)
5 群発頭痛は脳における痛みネットワークの異常である(共著者:田中萌生)
20 緩和医療とオピオイド(栗山俊之/川股知之)
1 転移が認められた非小細胞肺がん患者に対する緩和ケアの早期導入は,QOLと気分を改善し,生存期間を延長させる
2 デキサメタゾンは,進行がん患者のがんに伴う倦怠感を改善する
3 通常の制吐療法にオランザピンを併用することで,化学療法誘発悪心・嘔吐は抑制される
4 OPRM1 A118G遺伝子の変異は,術後鎮痛に必要なオピオイドの量を増加させる
5 切除不能な進行膵がんによる痛みは,腹腔神経叢ブロックで軽減する