局所皮弁 第3巻
下肢・足

局所皮弁 第3巻

編集 工藤俊哉
ISBN 978-4-7719-0515-3
発行年 2019年
判型 B5
ページ数 216ページ
本体価格 11,000円(税抜き)
電子版 なし
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■総論(工藤俊哉)
■各論
第1章 鼠径部
鼠径部の血管解剖と再建法(山下晴義)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 鼠径皮弁 特徴/血行/適応(山下晴義)
鼠径皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 外側広筋弁 特徴/血行/適応(山下晴義)
外側広筋弁
デザインのポイント/手術手技
3 大腿筋膜張筋皮弁 特徴/血行/適応(山下晴義)
大腿筋膜張筋皮弁
デザインのポイント/手術手技

第2章 大腿部
大腿部の血管解剖と再建法(前川尚宜)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 前外側大腿皮弁・外側広筋弁 特徴/血行/適応(前川尚宜)
前外側大腿皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 薄筋弁・大腿直筋弁 特徴/血行/適応(工藤俊哉)
薄筋弁
デザインのポイント/手術手技

第3章 膝部
膝部の血管解剖と再建法(畑下 智,川上亮一)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 膝蓋部:腓腹筋弁 特徴/血行/適応(畑下 智,川上亮一)
腓腹筋弁
デザインのポイント/手術手技
2 膝窩部:局所皮弁・有茎穿通枝皮弁 特徴/血行/適応(小野真平,小川 令)
1 局所皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 有茎穿通枝皮弁(上外側膝動脈穿通枝皮弁)
デザインのポイント/手術手技

第4章 下腿部
下腿部の血管解剖と再建法(工藤俊哉)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 下腿中央前面近位~遠位部:遠位茎腓腹皮弁(Distally based superficial sural artery flap) 特徴/血行/適応(工藤俊哉,青木浩平)
遠位茎腓腹皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 下腿内側近位~中央部:ヒラメ筋弁 特徴/血行/適応(小林由香)
順行性ヒラメ筋弁
デザインのポイント/手術手技
3 下腿内側遠位部:後脛骨動脈穿通枝皮弁 特徴/血行/適応(芝山浩樹,森井北斗)
後脛骨穿通枝皮弁
デザインのポイント/手術手技
4 下腿外側遠位部:腓骨動脈皮弁 特徴/血行/適応(前川尚宜)
腓骨動脈皮弁
デザインのポイント/手術手技

第5章 足部
足部の血管解剖と再建法(辻 英樹)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 足関節周囲:内側足底皮弁 特徴/血行/適応(辻 英樹)
内側足底皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 踵~足底荷重部:内側足底皮弁・遠位茎腓腹皮弁(Distally based superficial sural artery flap) 特徴/血行/適応(工藤俊哉,青木浩平)
1 内側足底皮弁
デザインのポイント/手術手技
2 遠位茎腓腹皮弁
デザインのポイント/手術手技
3 踵非荷重部~アキレス腱部:Turnover flap 特徴/血行/適応(宮本英明,黒住健人)
Turnover Flap
デザインのポイント/手術手技
4 足背部:短趾伸筋弁 特徴/血行/適応(山内大輔)
1 Turnover(横翻転)型短趾伸筋弁
デザインのポイント/手術手技
2 逆行性短趾伸筋弁
デザインのポイント/手術手技
3 背側中足動脈型逆行性筋弁
デザインのポイント/手術手技
第6章 先天異常症
先天異常症の再建法(岸 陽子)
基本的な考え方/解剖/選択できる皮弁とその特徴
1 多趾・巨趾で合趾がない場合の趾間形成(岸 陽子)
1 母趾多趾症/4 複雑な多合趾の場合
2 第2趾多趾症/5 巨趾症
3 小趾列多趾症/6 裂足症で足趾欠損がない場合
2 多趾・巨趾で合趾がある場合の趾間形成(岸 陽子)
1 合趾症・多合趾症/4 裂足症における合趾
2 巨趾症に伴う合趾/5 絞扼輪症候群における合趾
3 症候群における合趾/6 趾列欠損のある場合の合趾

下肢の存在意義は,大腿~足部に至るまでの総体で「荷重を支え,体を移動させる」ことです。下肢の構造をシンプルに考えると,「荷重伝達路である骨格組織」「筋・神経血管束などの機能組織」「これらを保護する被覆組織(皮膚)」ということになりますが,これらのうちどれが欠けても,下肢としての機能は損なわれます。
下肢組織再建が必要な病態は、外傷や腫瘍切除後欠損が多くを占めます。そして,骨折や骨軟部腫瘍切除後には,荷重耐久性のための大きな内固定インプラントや靭帯再建などが必要となることもあり,これらも血行組織で被覆しなければなりません。
したがって「より機能良く,感染を生じさせず,耐久性のある下肢を再建する」には,形成外科的な軟部再建に対しての知識だけではなく,骨・関節・靭帯/ 腱・インプラントに対する整形外科的理解も必要となります。その結果,「最適解」は,従来の一般的に予想されるReconstruction Ladder よりも一段上であるかも知れません(例えば,単純に軟部欠損を閉鎖するだけならNPWT を使用した後に植皮で閉鎖はできても,骨折などのインプラント固定を考慮すると局所筋弁が適正である場合や,使用できる血管茎の制約からは遊離皮弁のほうがより好ましい場合などです)。重症度・機能的治療・患者の全身状態・治療の進行状況を加味し,柔軟にLadderを自在に選択・変更できるバランス感覚を大切にしたい,それが第3 巻の趣旨です。
「動く」ことは,われわれ人間の根源的な欲求の一つです。患者の幸福のためには,移動の際に苦痛となるような疼痛や,すぐに皮膚潰瘍を起こすような脆弱さがあってはならず,また,面倒な消毒などが不要でメンテナンスフリーであるべきでしょう。 こうした「日常」を取り戻すため,日夜奮闘する下肢再建外科医達が行っている治療のエッセンスをお伝えできれば幸いです。

第3 巻 責任編集
順天堂大学医学部整形外科准教授
順天堂大学浦安病院外傷再建センター長
工藤 俊哉