スレッドリフトのセオリー
PINCH解剖学とテクニック
誰にでも正しく治療ができるよう導いてくれる、スレッドリフトの初の体系書が本邦上陸!体系化された知識と経験を用いた、科学としての美容医療がここにある。
1章 なぜ固定テクニックが重要なのか?
2章 スレッドリフト施術のための顔面解剖学
3章 なぜpinch anatomyが必要なのか?
4章 溶けるスレッドについての理解
5章 基本施術テクニック
6章 種類別テクニック
7章 部位別施術
8章 施術効果の評価
9章 副作用と対策
評者:佐藤 英明(CLINICA BellaForma院長) 形成外科65巻9号
「解剖と経験に基づいたスレッドリフトの必携書」
顔面のスレッドリフトは,約20年前に報告されて以来,顕著に進歩している。当初の「引き上げて治療する」という目的のみならず,タイトニング効果や,皮下脂肪を正常位置に戻すなど,さまざまな目的で使用されている。しかし顔面の解剖学構造に精通していない術者により,安易に行われているのが現実である。国内で承認を受けた製品は存在しないため,きちんとしたトレーニングを受ける機会もなく,独自の方法で行っている医師が多い。
このため,重篤な有害事象を防止するためには,「顔面解剖学」や「安全な手技」に精通することが不可欠である。残念なことに,本邦ではスレッドリフトに関して理論的に書かれた書籍が存在しておらず,術者の経験に基づいた内容が中心であった。
スレッドリフトを牽引してきたのは韓国の医師たちであり,その中でも中心的な存在である3人が執筆したのが本書である。2017年に韓国語版が出版され,その2年後に英訳版が出版された。英語版に引き続き,鈴木・飯尾両先生の監訳により日本語版が発刊された。
本書は,原題にある「The Art and Science of Thread Lifting」のとおり,スレッドリフトの原理から,組織をつまんだ時のPinch anatomyという解剖学的構造の変化など,実践的な解剖学に基づいた治療方法に関して,詳しいイラストや写真を用いて構成されている。Pinch anatomyを理解することにより,血管や神経損傷のリスクも軽減させることが可能となり,均一な層への刺入が行うことができる。
一方で,写真を多用するのは良いのだが,動画も用いると,さらに充実した内容となったはずだ。また,スレッドリフトの際に,治療をリピートする場合の麻酔による疼痛の問題もある。ブロック麻酔や静脈麻酔の併用などに言及してもらえると,さらに素晴らしい本になったと思う。
スレッドリフトは年々新しい種類が出ているため,購入者向けにアップデートされた内容を随時提供していただけると,スレッドリフトの「スタンダード本」として,長く愛されることになるのではないか。
とはいえ,今後スレッドリフトを始める初心者のみならず,経験者にも本書を強く勧めたい。基礎知識がしっかりと書かれているため,初心者にとって重要である。また,最先端の情報や知識を提供しているため,経験者にとっても大きなプラスになる。
本書は,スレッドリフトを行う医師にとって必携の1冊である。