華岡青洲の「虚構」と「史実」


著者 松木明知
ISBN 978-4-7719-0589-4
発行年 2024年
判型 B5
ページ数 438ページ
本体価格 10,000円(税抜き)
電子版 なし


華岡青洲の研究書は多々あるが、その生涯は依然未知である。本書は、これまでの研究の虚構と史実の混在をひとつひとつ詳らかにし、最新の知見を提供するものである。

はじめに/ iii
目  次/ ix
謝  辞/ xiii
凡  例/ xv

Ⅰ 青洲の「虚構」と「史実」/ 1
1  青洲の「虚構」と「史実」/ 4
2  妻「加恵」は失明したのか/ 9
3  呉 秀三はなぜ『乳巖治験録』を改竄し,その合成写真を作ったのか/ 19
4  伝記の著者たちは青洲の著述の原典を読んだのか/ 31
5  最初に開発したのは「散薬」か「煎薬」か/ 48
6  青洲が行ったのは「乳房切除術」か「腫瘍摘出術」か/ 49
7  青洲の手術は絶妙だったのか/ 50
8  青洲の自筆写本は『乳巖治験録』と『臨床記録』だけか/ 51
9  「史実」はいかに変容して伝えられるか/ 52
10 青洲は「陰謀家」だったのか/ 54

Ⅱ 青洲の医説と東洞の思想/ 571  青洲の『丸散便覧』と東洞の『東洞先生家塾方』/ 60
2  青洲の「奇方」研究と東洞の「方無古今」/ 73
3  青洲と東洞の「人事を尽くして天命を待つ」/ 81
4  青洲の「理」と東洞の「理」/ 92
5  『華岡青洲墓誌銘』と「内外合一」/ 102
6  仁井田好古の「内外合一」と浅田宗伯の「内外一理」/ 113
7  青洲の「活物窮理」と『青洲医談』/ 119

Ⅲ 青洲の医術の限界/ 131
1  麻酔法の限界/ 134
2  外科手術の限界/ 142
3  医学思想の限界/ 151

Ⅳ 青洲の学統/ 163
1  教養の学統/ 166
2  内科の学統/ 174
3  外科の学統/ 180

Ⅴ 青洲の自筆写本『丸散便覧』(天明本)/ 197
1  青洲の自筆本の先行研究/ 199
2  自筆鑑定の条件/ 201
3  筆跡の二面性/ 201
4  青洲の自筆史料の分類/ 203
5  「免状」と「丸散便覧序」(天明本)の筆跡の比較/ 203
6  「免状」と「丸散便覧序」の筆跡の比較/ 206
7  署名「華岡」の比較/ 209
8  年代の離れた史料は比較できるか/ 211
9  『丸散便覧』(天明本)は青洲自筆の稿本/ 212
10 『丸散便覧』(天明本)の意義/ 213

Ⅵ 青洲の著述/ 215
1  『険証百問』/ 218
2  『傷寒論講義』/ 229
3  『瘍科辨畧』/ 240
4  『瘍科記聞』(『外科記聞』)/ 244
5  『瘍科要訣』/ 247
6  『瘍科口訣』/ 251
7  『玄渓先生口授』と『玄渓先生乳岩夜話』/ 256

Ⅶ『春林軒二十一種』と青洲華岡先生遺教本/ 261
1  青洲研究史における『春林軒二十一種』/ 264
2  『春林軒二十一種』と『華岡氏遺書目録』/ 266
3  現存する『春林軒二十一種』関連の写本/ 267
4  杏雨本の書誌/ 269
5  『瘍科神書』の杏雨本と家蔵本の比較/ 270
6  『瘍科瑣言』の杏雨本と家蔵本の比較/ 274
7  『産科瑣言』の杏雨本と家蔵本の比較/ 277
8  『 痢疾瑣言』の杏雨本と家蔵本の比較/ 279

Ⅸ「麻酔をかける」という表現はいつから用いられたのか/ 313
1  「麻酔」の語史/ 316
2  「かける」の語義について/ 318
3  1849 年以前の史料に現れた「麻酔」などに続く動詞/ 322
4  1850 年の『亞的耳吸法試説』に現れた「麻酔」などに続く動詞/ 327
5  1851 年から 1868 年の史料に現れた「麻酔」などに続く動詞/ 328
6  1869 年以降の史料に現れた「麻酔」などに続く動詞/ 330

Ⅹ「麻」を冠する「麻酔」関連の熟語の語史学的考察/ 333
1  華佗と「麻沸散」/ 338
2  漢字の「麻」に「しびれる」という意味が生まれたのはいつか/ 339
3  7 世紀以降の中国の医書に見られる「麻痺」「麻木」などの熟語/ 340
4  竇  材の『扁鵲心書』と「睡聖散」/ 344
5  李 仲南の『永類鈐方』と「麻痺」/ 345
6  危 亦林の『世医得效方』と「麻倒」「麻薬」/ 346
7  王 肯堂の『証治準縄』と「整骨麻薬」/ 348
8  陳 実功の『外科正宗』と「麻」関連の熟語/ 349
9  孫 文胤の『丹台玉案』と「麻木」/ 350
10 高志鳳翼の『難波骨継重宝記』と「正骨麻薬」「草烏散」/ 351
11 中川修亭の『麻薬考』と「麻薬」/ 352
12 青洲の『乳巖治験録』と野村 鄂の『記青洲先生療乳嵓』/ 354
13 二宮彦可の『正骨範』と各務文献の『整骨新書』/ 356
14 杉田立卿の『療乳嵓記』と「麻睡之剤」/ 358
15 宇田川榕庵の『植学啓原』と「麻酔昏瞶」/ 359
16 堀内素堂の『幼幼精義』と「麻酔」/ 360
17 杉田成卿の『亞的耳吸法試説』と「麻酔」/ 361
18 合  信(Benjamin Hobson)の『西医略論』と「酣酔」/ 363
19 石黒忠悳の『外科通術』と「全身麻酔」「局所麻酔」/ 364
20 Meyer Saklad の講義と「麻酔学」「麻酔科」の誕生/ 365
21 著者による「麻酔科学」「日本麻酔科学会」の提唱/ 367

XI Seishu Hanaoka: His Achievement and Philosophy/ 369

初出一覧/ 391
参考文献/ 393
おわりに/ 409
索  引/ 413