癌の薬剤耐性とその克服―基礎と臨床―
要 旨
本書は,最新の参考文献を数多く引用し,抗癌剤耐性のメカニズムに関して最新の知見を紹介するとともに,臨床的にも注目に値する薬剤耐性克服へのアプロー チを,専門の研究者のみならず,広く癌の臨床に携わる医師,抗癌剤耐性に興味を持つ初学者,学生にも理解し易く解説することを目指して企画・執筆されまし た。この研究分野においては一流と自負できる書籍です。
第一線の研究者,臨床医にとって実用的な手引書となり,また医学や生物学,自然科学を志す学生にとっても将来の研究の道標になることと確信しています。各教育機関(医学部,薬学部)でも待ち望まれていた内容です。
2006年春
諏訪邦夫
尾崎 眞
序 文
大沼尚夫,竹村 譲
I.抗癌剤の種類と作用機序
小川一誠(愛知県がんセンター 総長)
II.癌の薬剤耐性実験系
1.In vitro実験系
井上勝一(北海道大環境情報医学 助教授)
2.In vivo実験系
鬼島 宏(東海大病理 講師),他
3.癌細胞の抗癌剤感受性試験
久保田哲朗(慶應義塾大外科 講師)
III.癌の薬剤耐性機構
1.抗癌剤耐性形質の細胞薬理学的・生化学的機構
竹村 譲(防衛医大検査部 講師)
2.薬剤耐性の分子薬理機構
松村保広(国立がんセンター内科 医長)
3.多剤耐性形質とその分子薬理機構
(1)多剤耐性 序論
大沼尚夫(マウントサイナイ医大内科 教授)
(2)MDR1遺伝子を介した多剤耐性
植田和光(京都大応用生命科学 助教授)
(3)MRP,LRP,その他
中村雅登(東海大病理診断学 助教授),他
(4)トポイソメラーゼIIを介した多剤耐性 芥川 茂(国立がんセンター薬効試験部),他 (5)DNA修復機構と抗癌剤感受性
前原喜彦(九州大消化器・総合外科学 助教授),他
(6)p53の変異による多剤耐性,チュブリン蛋白変異による多剤耐性,その他
古川雄祐(自治医大分子病態治療 助教授),他
4.アポトーシスと抗癌剤耐性
井上勝一(北海道大環境情報医学 助教授)
5.生体内薬物動態に関係した薬剤耐性
宮地勇人(東海大臨床検査医学 助教授),他
IV.抗癌剤耐性克服へのアプローチ
1.サイトカイン/造血幹細胞移植を用いた強化化学療法
田野崎隆二(国立がんセンター輸血管理室 医長)
2.多剤併用療法
甲能直幸(防衛医大耳鼻咽喉科学 助教授)
3.抗腫瘍効果増強剤の使用による耐性克服
中村 貴(国立がんセンター薬効試験部),他
4.薬剤耐性癌に対する免疫療法
河上 裕(慶應義塾大先端医科学研 教授),他
5.MDRモジュレーターによる多剤耐性克服
宮地勇人(東海大臨床検査医学 助教授),他
6.分子レベルでの薬剤耐性克服の試み
小林広幸(東海大薬理学 講師),他
V.各薬剤に特異的な耐性機構とその克服
1.葉酸代謝拮抗剤
竹村 譲(防衛医大検査部 講師)
2.フッ化ピリミジン系薬剤およびプリン代謝拮抗剤
相羽惠介(癌研附属病院化学療法科 副部長)
3.Cytosine arabinosideとその誘導体
上田孝典(福井医大第一内科 教授)
4.アルキル化剤
持田 泰(九州大生化学 医化学),他
5.プラチナ化合物
菊池義公(防衛医大産婦人科 助教授),他
6.ブレオマイシン,ペプロマイシン
犬山征夫(北海道大耳鼻咽喉科 教授)
7.アンソラサイクリン系抗腫瘍剤
横山康宏(岐阜大病院中央手術部 助教授)
8.マイトマイシン
西山正彦(広島大原医研分子情報 教授),他
9.チュブリン阻害性抗腫瘍薬
古川雄祐(自治医大分子病態治療 助教授),他
10.トポイソメラーゼ阻害剤
芥川 茂(国立がんセンター薬効試験部),他
11.レチノイン酸耐性
木崎昌弘(慶應義塾大内科 講師)
12.ホルモン療法剤に対する耐性
飯野佑一(群馬大救急医学 教授),他
VI.薬剤耐性形質の臨床的な検出検査法
1.P-糖蛋白/MDR1検出検査
小林広幸(東海大薬理学 講師),他
2.その他の薬剤耐性の遺伝子診断
宮地勇人(東海大臨床検査医学 助教授),他
3.フローサイトメトリーの耐性診断への応用
井上勝一(北海道大環境情報医学 助教授)
VII.癌の薬剤耐性機序の研究,耐性克服の方法
開発の今後の展望 大沼尚夫(マウントサイナイ医大内科 教授)