雑誌『麻酔』のMEDLINE収載の中断について
弊誌『麻酔』は、1965年より米国国立医学図書館(以下、NLM)が所有する電子データベースMEDLINE(通称、PubMed)に収載されておりましたが、雑誌数の急増を背景としたNLMの方針転換により登録方法の変更(納本された雑誌をもとにNLMが収載する方法から、書誌情報の電子データを出版社が登録する方法への転換)があり、システム要件を満たさない雑誌については収載が一時的に取り止められることとなりました。また、この登録システム変更に付随する形で、1988年以前に収載が決定した雑誌については再審査されることとなりました。私どもはこの突然の転換を不服とし、2017年末に再審査を申し入れましたが、以前の収載開始からは出版状況の大きな変動があり、残念ながら収載中断の決定は覆りませんでした。NLMからは、詳細な調査に基づく公平な視点から、様々な問題点を指摘いただいております。
いただいた指摘の中には、正直な感想を申し上げますと、欧米と日本の医療・出版事情の違いをご理解いただけていないと感じるものもございました。例えば、「雑誌に掲載されている論文数が少ない」ことや、「アクセプト率が高すぎる」ことなどです。前者は、欧米では一部の読者(政府、図書館など)に非常に高額な費用を負担してもらう文化が定着しておりますが、日本ではすべての読者から少額の購読料をいただくことによって安価に雑誌を提供するよう努めており、この事情から誌面の幅に制約がかかっているものです。後者は、日本では論文投稿が学会の資格更新の際の単位認定と密接に結びついており、同時に医師不足が深刻化しているという社会背景が存在することから、一定以上の医師を供給し続けるためにも雑誌に教育的な側面が付与されたことによるものです。日本の文化・社会に根差したこれらの問題を盲目的に解決してしまいますと、購読者ならびに論文投稿者に多大なる損失を生じさせる恐れがあり、慎重な検討が必要です。
一方で、非常にクリティカルな指摘と感じたものもございました。例えば、「投稿から掲載までに時間がかかりすぎている」ことなどです。この問題も、上記の誌面の制約や編集作業の文化的違いからきているのですが、情報伝達技術の向上によって短い期間での掲載が一般的になってきており、また多くのご意見もいただいておりますことから、私どももすでに改善に向けて検討を始めているところのものでした。可及的かつ抜本的な改革を目指す所存です。
今回の再申請ではMEDLINEの収載中断が決まってしまいましたが、その一方で、雑誌としての質は極めて高いとの評価をいただいてもおります。今回の結果に私どもは臆することなく、よりよい誌面づくりに努め、しかるべき時期が来ましたら改めて収載への再々申請を行う予定です。
購読者・投稿者の皆様方には、今回の収載中断や、今後の改革によって、何かとご不便をおかけするかと思います。深くお詫び申し上げるとともに、今後とも変わらぬご愛顧とご指導ご鞭撻をいただきたく、お願い申し上げます。
2019/7/2
克誠堂出版『麻酔』編集部
『麻酔』編集委員会