転載するときに必要な許諾
他著から転載するときには、原著者と発行元の両方の許諾が必要となります。つまり、計2カ所に許諾申請書を提出しなければなりません。この手続きを怠ると、著作権法違反となるおそれがあり、最悪の場合発行差し止め等の法的措置を受けることがあります。
弊社克誠堂出版(株)では、原則として執筆者ご本人に上記の申請をお願いしております。ただし、発行元によっては出版社同士の契約を希望されることもあります。お困りの際には編集部担当者にお問い合わせください。
なお、原著者が執筆者ご本人である場合には、発行元への申請のみが必要ということになります。
弊社では転載許諾申請のフォーマットをご用意しています。以下のリンク先からダウンロードいただき、ご自由にお使いください。
発行元宛のフォーマットは、弊社宛・他社様宛の両方にお使いいただけます。
フォーマット配布ページへのリンク
文字数が少ない場合には、「引用」と呼ばれ、学術目的であれば許諾は不要とされています。引用と転載の違いについては、次のページをご参照ください。
日本医書出版協会(JMPA)「引用と転載について」(外部サイト)
詳しく読む
なぜ2カ所に申請が必要なの?
上に書いたように、転載するには原著者と発行元から許諾を得る必要があります。
しかし、どうして2カ所に申請しなければならないのでしょうか? 著作権法の仕組みに理由があります。
いわゆる「著作権」=著作権(財産権)+著作者人格権
普段私たちが「著作権」と呼んでいるものには、次の2つの権利が含まれています。
著作権(財産権) |
複製権、公衆送信権など:出版に関わる |
著作者人格権 |
同一性保持権など:原著者の意に反する使い方がされることを防ぐ |
出版物の場合、著作権(財産権)は一般的に発行元が保有し、著作者人格権は原著者が保有しています。転載するときにはこの両方の権利者から許諾を得ておく必要があるため、申請先は2カ所となるのです。
転載許諾申請とは、二次利用に関して権利者と契約を交わすことにほかなりません。
なぜ執筆者自ら申請しなければならないの?:著作権について、もう少し詳しく
著作権(財産権)は、権利者の財産的な利益を保護します。
著作者人格権は、権利者の人格的な利益を保護します。
それぞれの役割と、著者・出版社の関わり方について、もう少し詳しく見てみることにします。
■著作権(財産権):著作権法第21~28条
著作権(財産権)は、その内容によって権利がさらに細かく分かれます。以下には著者と出版社に関わるものを列記しました。
複製権 |
印刷、録画等によって再製する権利 |
翻訳権 |
著作物を翻訳・翻案することによって二次的著作物を創作する権利 |
上映権 |
著作物を上映する権利 |
公衆送信権 |
著作物を無線・有線放送によって公に送信する権利 |
これらの権利は、もともとは原著者が保有していますが、著作物が出版される際には一般的に発行元へと譲渡されることになります(単行本の場合は出版契約書の締結時。雑誌掲載の論文の場合は原稿投稿時に了承いただく形になります)。譲渡していただかないと、本の形に複製することに支障が出てしまうからです。
■著作者人格権:著作権法第18~20条
著作物の一部が転載されたとき、それが適切に利用されないと、内容が原著者の意図とはまったく異なったものになってしまうかもしれません。もし悪意ある利用者によって、しかも勝手に改変などされてしまったときには、主張は180度曲げられてしまうかもしれません。このような事態は、原著者としては絶対に避けたいことでしょう。
これを未然に防ぎ、あるいは無断転載されていた場合には出版差し止め請求ができるようにしているのが、著作者人格権なのです。
原著者の意図にきちんと沿っているのかどうかは、原著者にしか判断できないことです。その性質ゆえに、著作者人格権は他人に譲渡することができないとされています。
こうして、いわゆる「著作権」は、発行元と原著者の2カ所に分散して存在することになるのです。
執筆者が自ら申請しなければならないワケ
この理由は、主に著作者人格権に拠っています。
とりわけ学術的な出版物の場合、その内容が専門的であるがために、出版社が代理で許諾申請することが難しくなります。つまり、「どういう意図で転載・改変したのか」「仮に原著者から意図に反すると言われた場合、どのように意見を交わしていくのか」について、出版社では説明することができないからです。
また、このようなやり取りは、研究活動にとって非常に有益である可能性もあります。意見交換をするうちに、お互いの誤解に気付き、新知見に結びつくかもしれません。あるいは、先輩研究者に接する機会を得られるだけでも、大きな収穫といえるでしょう。
これらの側面があるために、弊社は研究者間に割り入ることを控えようと考えています。ですので、執筆者の方に自ら許諾申請を行っていただくようにしています。
まとめ:具体的にどのように申請するか?
■発行元宛:著作権(財産権)の許諾
弊社が配布しているフォーマットをご利用いただくのが最も簡便かと思います。
必要事項をご記入のうえ、(郵送での申請の場合には2部プリントアウトし)発行元へとお送りください。
■原著者宛:著作者人格権の許諾
○執筆者が原著者本人の場合
ご本人の場合には申請は不要です(ただし、共著者の同意は必要です)。発行元への申請のみ行ってください。
○執筆者が原著者ではない場合
原著者に著作物から転載したい旨をご連絡ください。弊社のフォーマットを利用いただくのが望ましいですが、原著者と親しい間柄であれば、メールでも構いません。あるいは、学会場でお会いしたときに直接許諾を得るのでも構わないと考えます。口頭であっても契約は交わされたとみなされます。
▼参考文献
1)著作権情報センター.著作者にはどんな権利がある? 著作権情報センターホームページより.URL:http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime2.html(2018年3月9日最終閲覧)
2)日本医書出版協会.引用と転載について.日本医書出版協会ホームページより.URL:http://www.medbooks.or.jp/copyright/forauthor/quot.php(2018年3月9日最終閲覧)
3)宮田昇.学術論文のための著作権Q&A:著作権法に則った「論文作法」.秦野:東海大学出版会,2005.
作成日:2018年3月9日
公開日:2018年11月13日