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● Fontan手術とは■ Fontan手術は先天性心疾患のうち,解剖学的もしくは機能的単心室の疾患群の姑息的外科治療にお■ Fontan手術は三尖弁閉鎖に対して1971年に初めて施行されて以来,適応疾患を拡大し,術式も時代とともに変化し現在に至っている。初期に行われていた術式はAPC(atriopulmonary connec-tion)と呼ばれるものであり,右心房(右心耳)を肺動脈に吻合するものであった。APCでは心房収縮が肺血流の駆動に有利に働くと考えられていたようだが,長期的に著明な心房拡大を呈し,心房内血栓や心房性不整脈を高率に合併することから現在では行われていない。■ その後心房を介さず上下大静脈を肺動脈に吻合するTCPC(total cavopulmonary connection)法が登場し,下大静脈から肺動脈までの流路の違いからlateral tunnel法,intra—atrial rerouting法,extra—cardiac rerouting法と呼ばれている。lateral tunnel法はbaffle leakによるチアノーゼの増悪や,静脈路となる心房壁の一部が伸展されることによる不整脈基質の形成といった問題があるため,現在では心外導管によるTCPCが主流となっている。■ Fontan手術に到達するまでに第一段階の姑息術として肺動脈絞扼術,modified BT shunt,Nor-wood手術,Starnes手術などが行われる。この時点では体循環と肺循環を流れる血流は独立しており,単心室が双方の拍出を賄う必要があるため心室には容量負荷がかかった状態となる(並列循環)。■ 第二段階として両方向性Glenn手術が行われ,直列循環へと変換され心室の容量負荷は是正される。■ 肺血流は受動的と表現されるが,このエネルギーも単心室が供給しているため,同じ心拍出量で比較■ 正常左室の形態と適切なtorsionの存在下では心筋線維の短縮に対し心室容積は最大限に変化することが可能となる。これに対し機能的単心室では右室型・左室型に関わらずtorsionが低下する。tor-sionが低下すると心室容積を変化させるためにより大きな心筋線維の短縮が必要となる。心筋線維の短縮はエネルギー消費と直結するため,単心室では心拍出におけるエネルギー効率が低下する。■ 心室の心拍出量は前負荷(心房圧),後負荷(体血管抵抗),心筋の収縮性で決定される。正常二心室の循環の場合,左心拍出量(体血流)=右心拍出量(肺血流)となるが,Fontan循環の場合,単心室の拍出量(体血流)=受動的に流れる肺血流となる。このためFontan循環で心拍出量を増加させると206ける最終段階の手術である。HLHS,unbalanced AVSD,heterotaxy,一部のEbstein奇形などがある。ただし下大静脈血は肺を通過せず心房に還流するためチアノーゼは残存する。高く,この圧較差により肺に血液が流れる。すると単心室の仕事量は二心室循環における左室の仕事量より多くなる。47 ● Fontan手術までの経過について■ Fontan手術の適応疾患には,tricuspid atresia,PA/IVS,double inlet left ventricle(DILV), ● Fontan循環について■ 心室から駆出された血液は体循環を経由し上下大静脈から肺動脈に到達する。肺動脈圧は心房圧よりFontan手術

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