❹ 筋弛緩薬論文②筋弛緩薬のルーチン投与は,良好な術野(手術視野,ワーキングスペースの確保など)を術者に提供する.特に後腹膜腹腔鏡などの一部の外科手術において,深い筋弛緩状態は,中等度の筋弛緩状態に比べて,術野を改善する可能性がある.著者らは,深い筋弛緩状態が術野に及ぼす影響を評価した.待機的に前立腺切除術または腎摘出術を腹腔鏡手術で受ける24人の患者をアトラクリウム/ミバクリウム投与下で中等度の筋弛緩状態(TOFカウント1─2)を維持した群,または,高用量ロクロニウムで深い筋弛緩状態〔post-tetanic count(PTC)1─2〕に維持した群の2群に無作為に振り分けた.手術終了後,中等度筋弛緩状態はネオスチグミンで,深い筋弛緩状態はスガマデクスで回復させた.全手術を通して,同じ外科医が手術を行い,術状態評価スケール(surgical rating scale:SRS)と呼ばれる,1(きわめて不良),2(不良),3(まあまあ),4(良好)から5(最適状態)の5段階で手術状態の質をスコア化した.また,無作為に選んだ手術中の腹腔鏡下のビデオ画像を12人の麻酔科医が同様のスケールで評価した.SRSの平均値(標準偏差)は中等度筋弛緩状態で4.0(0.4),深い筋弛緩状態では4.7(0.4)であった(P<0.001).中等度筋弛緩状態では,18%がSRSのスケール下位(スコア1─3),深い筋弛緩状態では99%がスケールの上位(スコア4─5)であった.術中・術後の呼吸・循環動態は両グループ間に有意な差は認められなかった.また,麻酔科医と外科医の間で,ビデオ画像に対する評価は一致しなかった.Evaluation of surgical conditions during laparoscopic surgery in patients with moderate vs deep neuromuscular blockMartini CH, et al. Br J Anaesth 2014 ; 112 : 498─505北島 治■背景■方法■結果40 後腹膜腹腔鏡手術において深い筋弛緩状態は, 外科医に手術をやりやすくさせている
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