手術室の運用論文④ 小坂 康晴女性医学生数の増加にもかかわらず,外科系領域の医師構成は男性に偏っている.著者らは,一般的な外科的処置を施行する患者の術後のアウトカムに,外科医の性別が関与するかについて調査した.レトロスペクティブ・コホート研究であり,2007年1月1日から2015年12月31日までの期間にカナダ・オンタリオ州で治療された患者を対象とした.女性外科医による25の外科的処置(冠動脈バイパス術,大腿膝窩動脈バイパス術,大動脈瘤修復術,虫垂切除術,胆囊摘出術,胃バイパス術,結腸切除術,肝臓切除術,子宮摘出術,前方または後方脊髄減圧術,前方または後方脊髄固定術,開頭脳腫瘍摘出術,TKA,THA,大腿骨頸部骨折または大腿骨骨幹部骨折,全甲状腺摘出術,頸部分割術,肺切除術,根治的膀胱切除術,根治的前立腺摘出術,経尿道的前立腺摘出術,手根管開放術,乳腺摘出術)のうち,一つを施行した患者を同定し,調査した.主要評価項目を術後30日の死亡,再入院,合併症の複合とし,副次評価項目を個々の主要評価項目と入院期間とした.外科医年齢,訓練期間,手術量,外科的専門,患者性別,既往症などの背景が,女性外科医および男性外科医によって治療された研究参加患者間で異なっていたため,マッチング解析を行い評価した.104,630名の患者が3,314名の外科医(女性774名,男性2,540名)に治療された.マッチング前,女性医師により治療された患者は女性が多く,若い傾向があったが,マッチング後には両群は同程度に調整された.手術後30日以内の死亡,合併症発症,再入院の複合である主要評価項目は,女性外科医に治療された群(5,810/52,315名,11.1%)は,男性外科医により治療された群(6,046/52,315名,11.6%)に比べて有意に少なかった(オッズ比0.96,95%信頼区間0.92─0.99,P=0.02).副次評価項目として,女性外科医より治療された患者の術後30日以内の死亡が有意に少なかった224 ■背景 ■方法 ■結果Comparison of postoperative outcomes among patients treated by male and female surgeons : A population based matched cohort study.Wallis CJ, et al. BMJ 2017 ; 359 : j4366. doi: 10.1136/bmj.j4366.女性外科医による治療のほうが,男性外科医による 治療より術後のアウトカムがいい!19
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