Ⅲ章 腰痛・腰下肢痛を来す代表疾患L1/2L1/2L2/3L2/3L3/4L3/4L4/5L4/5L5/SL5/S(a)矢状面に対しては、下位関節ほど、より背・外側に開いてくる。(b) 横断像(脊髄造影CT画像を流用):外側凸の関節面を持つ(矢頭は背側の関節開口部)。(c) 骨モデル(側面):頭・腹側から尾・背側に傾斜する(⬅➡)。[橋爪圭司.腰部椎間関節ブロック《含:後枝ブロック》.森本昌宏ほか編.“痛み”のX線透視下インターベンショナル治療〜日常診療手技から最新の低侵襲手術まで〜《Web動画付き》.東京:克誠堂出版;2020. p.159─68より転載]L3/4(b)L1/2L2/3L3/4L4/5L5/S(c)図3 腰椎椎間関節の解剖(a) 骨モデル(背側):上位下関節突起が下位の上関節突起のソケットにはまり込んだ形である。は複数の神経支配を受けるので、一つの椎間関節を除神経するために複数の神経ブロックが必要になる。たとえばL3/4椎間関節の知覚神経をブロックするには、少なくともL2とL3の後枝内側枝ブロックが必要になる。あるいは、L2後枝内側枝ブロックを行うと、L2/3、L3/4、そしておそらくL4/5の椎間関節が部分的にブロックされる。 椎間関節に由来する痛みの概念“facet syn-drome”は、古く1933年Ghormley4)に始まり、1976年Mooneyら5)が腰下肢痛の重要な原因として注目した。 若年者ないし急性期にはあまり骨変化はなく、過剰な体動や外傷を契機とする椎間関節包や滑膜の炎症、挫傷、絞扼などの機能障害が痛みの原因と考えられる。いわゆる“ぎっくり腰”には、急性椎間関節症が少なからず含まれると考えられる。 高齢者ないし慢性期には、脊椎の退行性変化と同期して椎間関節自体に関節症変化が生じ、関節軟骨の摩耗や関節裂■の狭小化・不適合、関節周囲の骨棘形成などを基盤にしたうえに、なんらかの発症契機が加わって痛みが発生すると考えられている。腰椎すべり症、腰椎分離症、椎体骨折、悪性腫瘍の腰椎転移なども、椎間関節の関節症変化や関節炎を促進しうる。また、腰椎手術後に隣接椎間に生じる椎間関節症も考えられる。関節症変化が進行すると関節包が破綻し、造影すると硬膜外腔や神経根への、腰椎分離症では分離部への漏出が見られることがある。118 腰椎椎間関節症の概念
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