一歩進んだ麻酔管理:常識は常に真実か?
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〜在院日数を延ばす可能性があるのですね〜(Halabi WJ, et al. JAMA Surg 2014 ; 149 : 130─6/Halabi WJ, et al. J Gastrointest Surg 2013 ; 17 : 1130─7)106硬膜外麻酔は、非常に強力な鎮痛方法であり、術後患者の早期離床、入院日数の短縮に大きく貢献する優れた鎮痛方法であると考えられてきました。術後の早期回復とコスト削減をエビデンスに基づいて複合的にアプローチする術後回復力強化(enhanced recov-ery after surgery : ERAS®)プロトコール2005においても、胸部硬膜外麻酔は質の高い鎮痛と腸管機能回復促進を提供する要因として推奨されてきました。しかし、最近のエビデンスにおいて、下腹部手術においては、総合的なアウトカムにおいて否定的な知見が出てきています。2017年に発表されたERAS®レビュー1)では、胸部硬膜外麻酔を腹腔鏡下大腸切除術に対してルーチンに施行することは推奨されなくなりました。Halabiら2)は、2002─2010年の腹腔鏡下大腸切除術患者191,576名を後方視的に検討し、硬膜外麻酔が施行された患者はわずか2.14%であり、在院日数が0.6日延長したことを報告しました。さらに、硬膜外麻酔群で入院中の医療費が平均3,732 USドル上昇し、尿路感染症発生率も上昇〔オッズ比(odds ratio : OR)1.18〕することを指摘しています。呼吸不全、肺炎、吻合部リーク、イレウス、尿閉の発生率については有意差を認めませんでした。Guay Jら3)が発表したシステマティックレビューでも腹腔鏡下大腸切除術患者において、硬膜外麻酔施行患者群では術後1日および2日目まで安静時痛・歩行時痛が有意に低下し、腸管 運動回復が早いことが認められたものの、PCA(patient-controlled analgesia)群と比較して在院日数が0.9日延長することが明らかになりました。術後の悪心・嘔吐、尿閉、尿路感染症、術後創部感染症、吻合部リーク、イレウスなどの発生率には有意差は認めませんでしたが、全体としての合併症発生頻度が高いことや、硬膜外麻酔に伴うまれではあるが重大な合併症、例えば硬膜外膿瘍、硬膜外血腫、永続的な神経障害、心停止、カテーテル破断・遺残など(それぞれ0.1─0.014%の発生率)のリスクを加味したうえで硬膜外麻酔に対して否定的な立場を取っています(表1)。さらに、腹腔鏡下手術のみならず、開腹手術でも硬膜外麻酔の優位性が否定されています。Halabiら4)が2013年に発表した開腹での大腸切除術888,135名の後方視的解析において、硬膜外麻酔施行率は4.4%であり、尿路感染症、尿閉、吻合部リーク、死亡率などには有意差は認めないものの在院日数が0.16日延長し、入院中の医療費が4,340 USドル低下し、イレウス発生率が上昇(OR 1.17)していることが明らかとなりました。ただし、直腸手術症例に限定して解析すると、在院日数の延長や、イレウス発生率の上昇を認めず、術式・手術部位による影響を考慮する必要性が示されています。下腹部消化管手術以外における硬膜外麻酔硬膜外麻酔出血・感染がなければ、良いはず?34

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