B血管診療技師(CVT)の育成と医療チームづくり19APGのパラメータが治療方針の決定に大変有用となる。わが国では,閉塞性動脈硬化症,下肢静脈瘤,リンパ浮腫などの脈管疾患の診断から治療まで,ほとんどすべてを医師自らが担ってきた。しかし,最近の検査機器のめざましい進歩に伴う検査業務の増加,それに伴う新しい技術の習得も必要となり,日常診療と並行して医師自らがすべての血管検査を行うことが困難になってきている。さらに欧米型の生活様式や高齢化が進む中で,糖尿病関連血管疾患,動脈硬化性疾患,下肢静脈瘤,その他脈管疾患をもつ患者数も急激に増加している。増え続ける脈管疾患患者に対して迅速かつ的確に治療法を選択するには,診断の質的向上と効率化が求められている。このような背景の中,さまざまな無侵襲血管検査を専門的に行う血管診療技師(clinical vascular technologist:以下,CVT)を育成し,血管関係の一連の無侵襲的検査をまとめて行う血管生理検査室(バスキュラーラボ)を立ち上げる施設が増加してきている。1バスキュラーラボ(Vascularlab.)バスキュラーラボは,米国ではすでに30年以上の歴史をもつ概念で,動脈,静脈,リンパ管などの心臓以外の脈管疾患を対象とした無侵襲的検査をすべて1カ所に集約させ,全身の脈管を系統的かつ効率的に検査し,データ管理を行う脈管専門総合診断施設の総称である。バスキュラーラボで行われる検査は各施設での必要性によって異なるが,通常,四肢血圧脈波測定,デュプレックススキャン,近赤外線分光法,経皮酸素分圧法,レーザードップラー法,APG,トレッドミル,サーモグラフィーなどが含まれる。その役割として,岩井ら14)は①スクリーニング検査,②侵襲的検査前の診断的検査,機能的評価,最終判断の補助,③経過観察と個人情報の管理,再手術・リビジョン手術のプラン作成の3つを大切な要素として挙げている。バスキュラーラボはあくまでも治療に則した施設であり,その結果は中立で十分信頼されるものでなくてはならず,実際に治療を行う医師のニーズを汲んだ素早い連携が必要である。2CVT●CVTとは2005年10月,「コメディカルとして,無侵襲診断を中心に脈管領域の診療に従事するに必要な,専門知識・技術をもった者を専門家として認定する」という
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