CA2CA1CA3DG大脳嗅脳海馬■桃体錐体細胞海馬放線状層(Rad)図2 ■桃体海馬スライスの作製 麻酔下にラットから大脳を摘出し,ブレグマ(矢状縫合と冠状縫合の交点)から尾側4.8 mmにおいて短軸方向にスライスした(図上段)。大脳皮質および基底核を除去し,■桃体海馬スライスを作製した(図下段)。小脳脳幹海馬白板(Alv)■桃体■桃体海馬野(AH)にきれいな対数カーブを描いて回復しているはず・・である。しかしながら,臨床の麻酔で“患者さんの意識がきれいな対数カーブを描いて回復した”と感じることは少ないであろう。むしろ“TCI(target controlled infusion)から見て,そろそろ醒めていいはずなのに,さっぱり醒めない”とか,“BIS (bispectral index)値は低いから,まだ醒めないと思って油断していたら,突然覚醒して大暴れした”という経験をお持ちの読者もおられるであろう。頭の中のニューロンは,対数カーブできわめてロジックに回復しているのに,患者の意識は計■桃体と海馬は解剖学的にはきわめて近接しており,両者は双方向性の神経結合を有する。実際に,ラット脳において■桃体を高頻度刺激すると,海馬における記憶・学習のメカニズムである長期増強(LTP)が修飾される1)。そこで,われわれはラットの脳を用い,■桃体と海馬の複合体スライスの作製を試みた。■桃体のニューロンは海馬のようなラメラ構造(金太郎飴のような構造)をとらないので,CA1から■桃体神経核までの神経結合を1枚のスライスに収めるのは困難であったが,試行錯誤の結果,放線状層(CA3錐体細胞の軸索:Rad)〜海馬CA1〜海馬白板(CA1錐体細胞の軸索:Alv)〜■桃体海馬野(■桃体と海馬の中継点:AH)までを含んだスライス,すなわちRad─CA1─Alv─AHの神経回路を作製することに成功した(図2)。Rad─CA1経路は,グルタミン酸を神経伝達物質とする単シナプス結合である。AH─Alv─CA1経路を活性化することにより■桃体からの入力をシミュレートできる。算どおりに覚醒しない。この乖離はどう理解したらよいのであろうか。本節では“麻酔からの美しい覚醒”を脳科学的に考察してみたい。まず最初に,本節にしばしば登場する大脳辺縁系,とくに海馬と■桃体について述べておきたい。海馬の生理学的機能は短期の記憶と学習である。コンピュータにたとえれば,海馬は一時的にデータを蓄えるメモリーである。データを長期的に保存するためには,ハードディスクに記憶させ15第2節 鎮 静コラム1扁桃体海馬スライス B 恐怖体験は一生忘れない
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