麻酔からの美しい覚醒と抜管
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“筋弛緩(不動化)”は全身麻酔を構成する3要素第Ⅰ章 麻酔の3要素+αを検証する第3節残存の原因となりうる。のひとつであり,術中の予測不能な体動を回避することで,患者の安全を保つとともに,外科医に良好な術野を提供する。近年,普及している腹腔鏡手術では,筋弛緩モニタリングpost-tetanic count (PTC)1─2の深い筋弛緩状態を保つことで良好な視野が得られ,手術が容易になるだけでなく,低い気腹圧で手術が可能なため,患者への侵襲を軽減できることが報告されている1)。この結果については,同じ研究者らによって発表されたレビュー2)で自身の報告のエビデンスレベルを疑問視する見解も示されてはいるが,気腹中に十分な筋弛緩状態を得ることの有用性は誤っていないと考えられる。筋弛緩が必要な術式では,モニタリング下に十分な筋弛緩を得るべきである。筋弛緩が不要と考えられる場合についても解説しておく。体表の手術や末梢神経ブロックを併用した四肢の手術では,積極的な筋弛緩は不要であろう。また,術中に運動誘発電位(motor evoked 28第Ⅰ章 麻酔の3要素+αを検証するポイント❶ 筋弛緩モニタリングは,麻酔導入から覚醒まで必須である。❷ スガマデクスの安易な投与は,覚醒時の不要な咳嗽や体動,退室後の筋弛緩全身麻酔からの覚醒・抜管の場面では,ときに激しい咳嗽や体動が生じることがある。術前合併症がない症例では,問題にならないかもしれないが,重篤な合併症を有している安全域の狭い症例では,咳嗽や体動に伴う頻脈や高血圧が,もともとの合併症を悪化させる可能性がある。また,脳神経外科や心臓血管外科の手術では,咳嗽や体動に伴うバイタルサインの変動が手術結果を損なうものになりうる。もちろん覚醒・抜管を安全に行うことこそがもっとも重要であり,咳嗽や体動が生じないことに主眼が置かれてはならない。しかし,われわれは安全性を維持しながら,さらなる高みを目指した覚醒・抜管を目指すべきである。本節では,そのコンセプトに準じて,“美しい覚醒と抜管”のための筋弛緩の維持と拮抗について解説する。 A 覚醒・抜管時の咳嗽や体動が,それほど大きな問題なのか? B 術中の筋弛緩の必要性1 腹腔鏡手術中には十分な筋弛緩が必要2 筋弛緩が不要なケースとその対応筋弛緩

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